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施設の課題を解決し、多様化するWEB集客を最適化―集客効果を高める仕組み作りの正攻法とは
Vol.6 株式会社宿泊予約経営研究所 営業推進室統括マネージャー 北薗勇人
1990年後半から、家庭への普及が一気に進んだパソコン。インターネットの登場はそれまでの生活様式を一変させ、旅館の予約スタイルも大きな変革期を迎えました。
その中で2004年に創業した株式会社宿泊予約経営研究所は、独自のサービスを構築し、インターネットを介した新たなノウハウを確立。創立16年を迎えた現在では累計約5,000軒の施設が同社のサービスを利用するまでに成長し、今夏のコロナ禍においても、主要OTAの売上ランキングで全国1位を獲得するなど成果を残し続けています。
施設運営において今後もますます重要性が高まるWEB集客への対応と、同社が取り組む地域一体のプロモーション戦略などを営業推進室統括マネージャーの北薗勇人氏にお聞きしました。
施設の課題を解決し、高レベルのWEB集客を実現
―株式会社宿泊予約経営研究所はどんなことをしている会社ですか
私どもの事業内容については、WEB展開への実務作業、選ばれる施設になるためのプランを立案して実行するコンサルティング業務、施設のオーナー様や従業員の方と一緒になって施設をプロデュースするブランディング業務になります。
一言で言えば、私たちの強みはWEB集客の最適化です。例えば「WEB集客に満足していますか」と経営者の方にお聞きすると、満足しているとお答えいただくのは100人の内の1人か2人です。
そこにはホームページやOTAの課題、お越しいただくお客様のマーケティングなど、施設様によって様々な課題があると思いますが、すべてを自社だけで最適化していくというのはなかなか難しいことです。
そこで、第3者機関である私たちは施設様と一緒になってさまざまな施策を提案・実行して、経営者様も満足される高いレベルのWEB集客を実現するお手伝いをしています。
―創業時と比べて施設からの要望の変化を感じますか
WEB集客を実行しながら体制を構築するという宿泊予約経営研究所へのニーズは昔から変わりありません。
ただ、大きく違っているのは環境です。今はどこの施設様もWEBからの予約が集客の柱の1つになり、積極的にWEBを活用して集客に取り組むのが当たり前の時代になりました。
創業当初のころを振り返ってみると、施設様のご要望というのはWEBで販売できる体制を整えることでした。それが今では競合施設の中でいかに自施設を売っていくかという流れに変わってきていると感じます。
我々へのご相談も10年ほど前からは、自社がどのようにWEBを活用していけばいいかアドバイスを求める、コンサルティング要素がメインになっています。自社にはどんな強みがあって、ここにくれば何が得られるのかという部分ですね。
このWEBにおけるブランディングを中長期で構築していくというのが、多くの施設様が抱えている現在の課題だと思います。
ターゲットを絞り、自社に合うお客様に満足してもらうのがブランディングの正攻法
―そうした施設の課題解決に向けて重要になるのは何ですか
施設様が持つ魅力をその情報を求めるたくさんのお客様にお届けし、宿泊していただくこと。さらにはリピートしていただくことが重要だと考えています。
そのためには、例えばグループでも女性グループに強いのか、男性グループに強いのか、あるいはカップルに強いのかなど、施設様の強みからある程度メインとなるターゲットを絞って、そのお客様にチェックインからチェックアウトまでどんなサービスをしたら喜ばれるのかを考えていくのが効果的です。
長期的な視点でブランディングを考えても、自社に合うお客様に宿泊していただき、満足してもらう仕組み作りが最も正攻法だと思います。
―満足してもらう仕組み作りに向けてのブランディングとは
ブランディングには様々な考え方があって統一された見解はないのですが、私自身はいらっしゃる時にお客様が思っていたイメージと帰られる時のイメージが一緒、もしくはちょっと上回るということが成功だと思っています。
例えば、カニがたくさん食べられるというのが強みの宿に、腹一杯カニを食べたいと思ってきていただいたお客様が、腹一杯カニを食べて帰れる。もうこれでブランディングとしては成功です。
お客様の期待値をどこにおいて、何に期待してもらうのか。そして、そのサービスを期待通りに楽しめる体験をどう構築するのか。これを、ターゲットを絞って展開していくというのが、ブランディングの1番の王道だと思います。
もちろん、これはオーナー様をはじめ、従業員の方も一緒になって話し合うことが大切です。というのも、「自社のブランドってなんですか」と従業員の方一人ずつ聞いていくと、捉え方にも個人差があって意外と一致しないものなのです。
こうしたブレを、たくさんの価値観がある中で、よりたくさんの人が満足できる形で統一して、その情報を我々がWEBで発信する。それによってお客様が期待するところと実際に来て体験されたところが一致できれば、リピートしていただける仕組みに近づけるのではないでしょうか。
―WEBで情報発信される際に注意していることはありますか
物に終始してしまうと、どうしても大きい小さいとか、量が多い少ないというところにお客様の目線はいってしまいます。なので、我々ができるだけ表現したいと考えているのは、そこで得られる体験です。
その施設様ではどんな楽しみ方ができて、どんな満足度を得られるのかをうまく表現していきたいということを特に意識していますね。
施設様もエリアも盛り上がる良いスパイラルを作っていきたい
―施設の魅力を高めるために行っている具体的な施策を教えてください
宿泊施設で働く皆様は「ここは何もないんだよ」とよくお話されます。でもそんなことはなくて、日頃その場所で暮らす方には何もないと感じる土地にも、訪れるお客様にとってはそこでしか体験できないことも多いのです。
私たちは経営理念として「良地良宿」を掲げています。これは良い土地があるから良い宿があるという考え方ですが、そこにある施設様がその土地の魅力をWEBで発信することで、その地域が少しずつ力をつけていく。そんな地域一体のプロモーションもしていきたいと思っています。
ですので、我々のプランニングというのは、施設様はもちろんですがターゲットに定めたお客様が施設周辺でこんな体験ができるという部分もトータルパッケージにして施設様の魅力にしていくことなのです。
これは施設様にとっては専門外でもありますし、地元にいるからこそ見逃してしまうところもあります。そういう部分をうまく私たちが拾い上げていくことで、施設様もエリアも盛り上がる良いスパイラルを作っていきたいですね。
―御社の今後の展望をお聞かせください
これまではパッケージで委託していただかないと、なかなか弊社のサービスをご提供できなかったのですが、今後はオンデマンド対応ができるようにしていこうと思っています。WEB集客といえば一言ですが、その中にはお話ししてきたようにブランディングやターゲティング、それを作るためのマーケティングがあります。
SNS対応など新たな要素も加わり、これからますます多様化してくるWEB集客への対応を各施設様が自社で全部作っていくのはなかなか難しいと思います。そうした自社が苦手とする分野を弊社がこれまで培ってきたノウハウで必要な時に必要な分だけご提供できるような仕組みを作っていきたいと思います。
単にサービスを提供するのではなく、弊社は施設様と一緒になって販売促進をしてきた会社ですので、こういう施設様の場合にはこう対応するというロジックは構築できています。
そういうところでAI化できるところはAI化をしていきながら、ビッグデータを活用する際には大きなパートナーとも連携をして宿泊業界が更に良くなっていく仕組みが作れたらと考えています。
これからも施設様から頼られる会社を目指して、旅行業界がより元気になれるよう共に成長していきたいと思います。
新型コロナウイルスの影響もあって現在は大きく落ち込んでいるインバウンド需要ですが、新型コロナの流行収束後に観光旅行したい国・地域ランキングで上位にランクインするなど、依然として日本は世界から注目されています。そうした現状を踏まえて最後に北薗氏は「各地の施設から日本のいいところを世界に発信していけるような取り組みも機会があれば行っていきたい」とお話ししてくれました。
【プロフィール】
北薗勇人(きたぞの はやと)
1971年生まれ、神奈川県横浜市出身。
神奈川県立金井高等学校卒業後、2004年から営業推進室 統括マネージャー。
創業時から新規営業部門を統括し、これまでに約5000軒の契約施設獲得に携わる。
2018年から開発営業部門を新設し、金融機関との連携や大手グループ企業との
商品開発へと活動の幅を広げている。
【会社情報】
株式会社宿泊予約経営研究所
設立 2004年
資本金 5,000万円
従業員数 151名(パートタイマー含む)
事業内容 WEB集客コンサルティング
URL https://www.yadoken.net/(公式サイト)

