心理学で考える旅館ビジネス

心理学で考える旅館ビジネス

 

「人」を相手にする仕事をする以上、相手の受け止める印象や心理の働き方を知ることは、効果的に仕事を進めるための重要なポイントです。日常的に商談やプレゼンテーションなど行う営業職では、相手の心理を洞察し、適切なアクションや言葉を選ぶことはもはや必須のスキルとなっています。

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貴館では「良かれと思ってしたことが思いもかけないクレームに…」、「一生懸命アピールしているのになぜ売れない…」、さらに社内に向けては「なぜみんながついてこない…」というような苦い思いをした経験はないでしょうか。

伝えたい人に対して、自分の想いを誤解なくきちんと伝えるためにも、人の心の動きを知っておくことは大切。旅館ホテルは特に人の印象によって評価や業績が左右されやすい業界ですから、基本的な心理学の素養はぜひ育んでおきたいものです。

今回はそんな旅館ホテルの業務に役立つ、代表的な心理効果をいくつかご紹介しましょう。

【Contents】
1 惜しむ気持ちが、さらなる悪化を招く「サンクコスト効果」
2 より価値の高いものを求める心理「ヴェブレン効果」
3 良い印象を受けると、その好感が全体に波及する「ハロー効果」
4 一般的な投げかけを、自分のこととして受け止める「バーナム効果」

 

惜しむ気持ちが、さらなる悪化を招く「サンクコスト効果」

サンクコスト(Sunk Cost)とは、これまでに費やしてきたものの、もはや取り戻せないお金や労力のことを指し、埋没費用と訳されています。サンクコストが発生していることを承知していながらも、これまでに投入した資金や時間を惜しむばかりに、中断できずに投入を続けてしまう現象を「サンクコスト効果」あるいは「サンクスコストの罠」などと言います。

ひと言で言えば「もったいないと思う心理が、さらなる悪化を招く」行動です。

有名なものにイギリスとフランスの共同開発による超音速旅客機コンコルドの事例があります。コンコルドは開発の途中で採算がとれないことが判明したにも関わらず、すでに膨大なお金と時間を投資していたため、計画中断の決断ができなかったという話です。この事業が結果的に巨額の損失を残してしまったことから、別名「コンコルド効果」とも言われます。

さて旅館ビジネスを考える時に、同じようにサンクコスト効果によって悪化を招いていることが少なからずあるはずです。しかしこの2020年は、否応なしに過去を断ち切る決断のタイミングになったと感じる経営者も多いことでしょう。

組織のこと、売り方のこと、売れる商品のこと。貴館ではどれだけのことを変えることができたでしょうか。「やめる」ことは、「始める」こと以上に大きな決断とエネルギーが必要なのかもしれません。

 

より価値の高いものを求める心理「ヴェブレン効果」

ヴェヴレン効果(Veblen effect)は、顕示効果と訳され、価格が高ければ高いほど欲しくなったり、良い物だと思う心理のことです。米国の経済・社会学者ヴェブレンが「有閑階級の理論」(1899)の中で、黄金狂時代の米国の有閑階級(十分な財産があり働かなくても裕福な生活ができる人々)に特徴的だった「見せびらかし」の消費(顕示的消費)について言及したことに由来します。ブランド物を魅力的だと感じる心理の説明としてよく使われています。

富裕層向けに展開されるばかりではなく、心の奥底にある自己顕示の欲求に訴える方法でもあります。

2020年のGo Toトラベルキャンペーンでは、これまでに比べて高価格帯の客室や企画が売れ筋となりましたが、これは価格が高いほうがより高い満足感を得られるに違いないと考える心理=ヴェブレン効果によって、予算の余裕が消費者を動かした結果とも言えます。

夕食時の飲み物でも、他より高いお酒が売れ筋になっていることがよくありますが、商品の特徴だけではなく、価格がより高いことが特別感を感じさせているためでもあります。

この心理をさらに強めるためには、特別感を感じさせる「値付け」に加えて「キャッチフレーズ」の工夫も大切です。

「各フロア1室、贅沢な景色を堪能するコーナー客室」「1日1組限定プラン」「最高賞受賞の地酒」など、高料金の裏付けになるような表現を用いることで、高料金の商品をさらに魅力的に感じさせることができます。

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良い印象を受けると、その好感が全体に波及する「ハロー効果」

「ハロー(halo)」とは後光を意味する言葉。ハロー効果とは、何か大きな特徴に目が向くと、全体の印象もそれに大きく影響を受ける心理のことを指しています。

例えば、採用面接で2人のうち1人を選ぶ場面を想像してみましょう。履歴書で前職を比較した時、1人は全国ランキングでトップランクのホテルのレストランでの経験が記載され、もう1人はとなり街の飲食店での経験が記されていたら、多くの人は前者により強い興味を持ち、また「仕事ができそうだ」と思うのではないでしょうか。本人が仕事ができるかどうか以前に、前職のイメージがその人の印象を左右してしまうわけです。

この効果は、お客様に対してより有効に働かせることができます。そのひとつが身だしなみです。

例えば清掃スタッフが、すれ違ったお客様から「売店が開いているか」を尋ねられたとします。身だしなみの良い清掃スタッフが「確認しますのでお持ちください」とお答えした時は、お客様に「私のためにわざわざ確認してくれた」と感じてもらえるのに対して、その相手がだらしない印象のスタッフだった場合は、「そんなことも知らないのか」と不快に感じられてしまう可能性が高まります。

清掃スタッフが私服でいるよりもスマートな制服の方がよりプロらしい印象を与えるでしょうし、名札も乱れた手書きのものではなく少しハイグレードな印象のものの方が、より仕事への意識の高さを感じさせるでしょう。

この「ハロー効果」を上手に活用すれば、お客様に良い印象を与えることができ、宿の評価全体の引き上げも期待できるというわけです。

 

一般的な投げかけを、自分のこととして受け止める「バーナム効果」

誰にでも当てはまる曖昧な内容にもかかわらず、「自分にだけ」に当てはまっているように感じてしまうのがバーナム効果です。この効果を活用すれば、お客様に「この人は自分のことを理解してくれている」と感じさせ、より信用を高めることにつなげることも可能です。

広告で「どこかへ出かけたいなと思っていませんか?」「○○をお探しになったことはありませんか?」と語りかけるようなキャッチコピーがありますが、これもバーナム効果によって「まさに自分のことだ」という印象を与え、読み進めるにつれて「自分のことをわかってくれている提案だ」という安心感や信頼感を築き上げることを目的としたものです。

例えば、旅館のお食事のメニュー。「今月のおすすめ」と紹介するよりも、「特別な時間をお過ごしのお客様へ」などとすれば「自分へのおすすめだ」とお客様の心が動き、自然に詳しい内容へと読み進んでいただけることでしょう。

曖昧な表現ひとつにもお客様の気持ちや傾向を意識した投げかけを心がければ、今よりももっと多くのお客様の心に響くのではないでしょうか。

普段の何げない言葉や行動の中にもきっと、お客様に対してより効果的に働く「気づき」は数多くあるはずです。今回は旅館ホテルのおもてなしに役立つ4つの心理効果をピックアップしてご紹介しましたが、心理学の入門にぴったりのビジネス書籍なども数多く販売されていますので、もっと知りたいというご興味のある方はぜひこうした書籍などを読んで、ご自身の「人を動かす力」をさらに高めていただければと思います。

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