新春インタビュー  組織管理のリ・モデルで「マンパワーを最大化する」

新春インタビュー 組織管理のリ・モデルで「マンパワーを最大化する」

 

株式会社リョケン 本部長 大西ますみ

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必要を感じてはいても、なかなか改革のメスを入れにくい組織改革。だからこそ今この時を逃さずに、組織管理の見直しで「真に強い旅館」へと生まれ変わりましょう。

Q1.コロナへの対策で、イレギュラーな組織運営を強いられている今、旅館に求められる組織のリ・モデルとはどのようなものなのでしょう?

2020年はコロナ禍の中で、否応なしに組織のあり方を見直さざるを得ない年になってしまいました。組織の問題というのはついつい根本的な改革が棚上げにされがちなのですが、組織の力を高めることが必要な今こそ、真正面から取り組むべき重要な課題です。

働く環境や条件、働きがいからキャリアデザインへの想いまで、人の営みのすべてを視野に入れた組織のリ・モデルとは、つまり「マンパワーを最大化・最有効化する」取り組みだと言うことができるでしょう。

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【Contents】
Q2.組織管理のリ・モデルを実行する上でのポイントを教えていただけますか?
Q3.全社員と「自分たちがどんな存在であるべきか」の価値観を共有することで、不安を希望へと転化していくわけですね。
Q4. 組織を考える上で、採用計画がうまく行かないとか、採用後の定着率が低いなど人事的な悩みがネックになっている旅館も多いと思いますが。
Q5.人事ひとつを取っても、その業務はより専門化・多様化しているわけですね。

 

Q2.組織管理のリ・モデルを実行する上でのポイントを教えていただけますか?

組織のリ・モデルに取り組むにあたって、まずは改めて「経営ビジョン」に目を向ける必要があります。漠然とした危機感や混沌とした空気、先行きの不透明感など、ありとあらゆる不安が、経営者のみならず働くすべての人々を覆っている今、「私たちの会社はどうなってしまうのか?」という不安を「私たちの会社はこんな風に変わっていく!」という希望に変えなくてはなりません。

誤解しないでいただきたいのですが、これは「方針転換をしよう」ということではありません。岐路に立った私たちの進む道はこれまで進んできた道の先に続いていますから、これまで培ってきた経営資源を活かす道を進むことです。

環境の変化に対応する方法で資源を活かし、お客様から選ばれる会社であり続けるためにはどうすればよいのか。その答えを発信することで、組織の希望が見え、働く人々の心に火をつけることになります。

今は商品の目新しさや相対的な価格の高さだけが求められる時代ではありません。「社会での存在意義を語ることができるもの」 を持つことは、お客様にも働く人々にも新しい時代の魅力を感じさせます。これはかねてよりリョケンが提唱している「独自価値」に通ずるものでもあります。

 

Q3.全社員と「自分たちがどんな存在であるべきか」の価値観を共有することで、不安を希望へと転化していくわけですね。

そうです。未来に向かう道筋を示すことこそが経営の務めです。この道筋によって組織の進む方向が定まり、一人ひとりが惑うことなく前を向いて歩むようになるはずです。

特に今のような落ち着かない日々の中で組織改革を実行し、未来に向かうには、経営ビジョンへの共鳴とそこから生まれる熱意、そして一体感がいつにも増して重要になるのです。

私たちの会社は、お客様にとって、また私たちにとって、どのような存在であるべきか。その答えをぜひ今一度、経営ビジョンの中に折り込みましょう。

<組織管理のリ・モデルのポイント>
●経営ビジョンの再考・再提示
「私たちはどんな存在であるべきなのか」を経営ビジョンの中に折り込んで社員と価値観を共有し、不安感を一掃する

●労務環境と人事評価のリ・モデル
他分野と同列に比較できる良好な労務条件を実現し、「努力が正当に報われる」評価とあわせて「働きたくなる業界」をめざす

●人事業務のリ・モデル
「人」を企業の資産と考え、人事部門をより専門化・積極化した「人材活用のコントロールセンター」へと進化させる

 

Q4. 組織を考える上で、採用計画がうまく行かないとか、採用後の定着率が低いなど人事的な悩みがネックになっている旅館も多いと思いますが。

それらを根本的に解消するために行うべきなのが、組織改革の2つめのポイントである「労務環境と人事評価のリ・モデル」です。

今や少数精鋭は当たり前の時代になりました。生産性を高めようという意識は、経営者だけでなく現場の隅々までそれなりには伝わっているはずです。

ただ問題は、この生産性を高める努力が、一人ひとりの生活の向上に確かにつながっていると実感できているかどうかです。言いかえれば「努力が報われる希望」が持てているかどうかが問われているということです。

企業に必要なのは会社の方向性に共感し、高い気力と能力を持つ人材です。そして気力を高めるためには「労働時間・休日」や「賃金」などの課題は捨て置けません。

例えば、生産性の低い日を減らすことで全体の生産性を高めていくという考え方を反映して休館日を設定することも一つの方法でしょう。

また勤務形態にも一考の余地があります。旅館には「中抜け」勤務など業界固有の勤務形態がありますが、これらを可能な限り縮小するなど、他の分野と同列に比較できるだけの良好な労務条件を実現することが大切です。

併せて評価においても「努力が正当に報われる」ことを正当な賃金として明示することが、「働きたくなる業界」実現への指針となります。

人材という貴重な資源を最大限に生かすためには、他業界では当たり前となっている「キャリアデザイン」の考え方も重要となります。

旅館ではこれまで、一人のスタッフが複数の業務を行えるように育成する「マルチタスク」の考え方が一般的でした。これはあくまでも「職能」をベースとした考え方ですが、そこをもう一歩踏み込んで、「人」を主体とした能力開発として捉え直そうというのがキャリアデザインの考え方です。

何年後にどのような人材に育っていて欲しいか。また本人が育ちたいと思っているかを目標として、それに合わせて着実にステップを踏みながら人材を育成していくことが肝心です。

人材は、高い技能と広い視野を持って部署のリーダーとして活躍できる人ばかりではありません。中には専門業務に特に優れているけれど人の上に立つのは苦手という人もいるでしょう。

旅館側が求める理想の人材像を一律に押しつけるのではなく、それぞれの人の個性や志向も加味しながら、旅館と本人の双方が納得のいく人材育成カリキュラムを組み、これと同時に、できる限り柔軟性のある評価軸を据えることが、正当な人事評価を行うための大きなポイントだと言えるでしょう。

 

Q5.人事ひとつを取っても、その業務はより専門化・多様化しているわけですね。

これまで人事は、経営者の意向や各部門長の要望で動くような、受け身の活動をしていたところが多かったと思います。ところが今はそれでは間に合わなくなってきました。人事の世界も情報を早くキャッチしたもの勝ち、勘を働かせて動いていなければ、採用のチャンスも組織の問題を未然に防ぐチャンスも見逃しかねない時代になっています。

経営ビジョンの実現に向けて歩みを進めるためには、組織を動かす人事の役割を見直すためにも、組織改革の3つ目のポイントである「人事業務のリ・モデル」は欠かすことのできないファクターです。

労務管理も人事評価も、大企業などにおいては「人事部門」の業務ですが、中小企業では人事が部門として独立していることはまれで、多くの場合、総務や管理部門の役割の中に人事的活動が含まれているようです。

しかしここ数年は、求人・採用・教育・人材配置などの業務も例年通りとは行かない状況になっています。現在の人事には、従来のような「人員の補充」ではなく「人材の確保」への意識の切り替えや、専門的なノウハウを駆使した積極的な対応が求められてきていると言えるでしょう。

経営環境の変化を受けて立つには、組織そのものがしなやかでなければなりません。

求人・採用・教育・人材配置など、企業の資産である「人」そのものに携わる人事部門を、より専門化・積極化した「人材活用のコントロールセンター」へと進化させていきましょう。

 

今年取り組むべきこととして、「組織管理のリ・モデル」に向き合う心づもりをしていただけたでしょうか。また自館で取り組みたいことは見つけられましたでしょうか。

実行するのも成果を上げるのも、人生の日々を自館のために費やしてくれている従業員のみなさんです。組織とは、そのみなさんが働くことによって充実した毎日を過ごし、また幸せを感じるためのものです。

幸せを感じて働くみなさんこそが、自然にお客様を幸せにし、また会社を幸せにするために力を発揮してくれるものと私たちは確信しています。


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