4人の女将が力を合わせて開発した旅館オリジナル商品の草分け「なにわの女将の牛すじカレー」とは

4人の女将が力を合わせて開発した旅館オリジナル商品の草分け「なにわの女将の牛すじカレー」とは

皆さんは大阪の旅館4館の女将さんによって商品開発された「なにわの女将の牛すじカレー」をご存じでしょうか。

不死王閣、南天苑、大和屋本店、不動口館という、大阪でいずれも名のある旅館の4人の女将が開発したこのレトルトカレーは、2014年の発売。

今でこそ旅館の独自開発商品や各旅館による協業なども一般的になってきましたが、まだまだそうした動きが珍しかった当時、旅館の女将グループによる新たな取り組みとして大きな注目を集め、大小数々のメディアでも積極的に紹介されました。

その結果も寄与してこのカレーは発売からの7年間を通じて総計販売数11万5千食を超える大ヒット商品となり、今もたくさんの旅行客からの絶大な支持を得ています。

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【CONTENTS(目次)】 
1.女将4人の出逢いのランチ会から始まった、かけがえのない交流
2.大和屋本店の話題をもとに、4館合同でのカレー開発が始動!
3.女性ならではの視点で決まった、「お母さん想い」の価格設定
4.「ちょっと儲かる旅館の広告」として、そして新たな売上げの柱として
5.広く全国に波及した、女将による協業の輪

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1.女将4人の出逢いのランチ会から始まった、かけがえのない交流

そんな商品が誕生したきっかけは、4人の女将の出逢いからでした。

それぞれ個々では知り合いだったもののまだ全員が一堂に会したことのなかった4人が「一度ランチでも」と集まったところから今日までつづく深い交流が始まりました。

全員が外部から旅館に嫁いだ女将さんだったこと。皆が同年代だったこと。さらには4人ともに同じ年頃のお子さんを持つ母親だったことなど共通点が多いことから、その場ですぐに意気投合。

旅館の女将としてのさまざまな悩みや子育ての相談などプライベートな悩みを打ち明け合い、アドバイスしあうことのできる貴重な友人関係になったのだそうです。

「旅館の女将には、同じ悩みを共有・共感しあえる友人というのが少ないので、この4人の友人関係はとても貴重で、本当にありがたい存在でした」と、不動口館の女将・河原さんはそう語ります。

 

2.大和屋本店の話題をもとに、4館合同でのカレー開発が始動!

そんなある日、大和屋本店の女将さんからひとつの話題が出ます。それは自館でオリジナルカレーを作ろうと思っているものの、商品開発やロットの問題などからなかなか計画が実現化しないという悩みでした。

「ロットが多いなら4館合同で販売すればクリアできるのでは?」「商品開発も、4人それぞれが地元の食材を持ち寄って相談すればきっといい大阪名物になる!」と、その場ですぐに活発な意見が飛び交い、すんなりと4館共同開発の話が決まりました。

「どうせ作るなら自慢できるものを!」「大阪はホテルが有名だけど、ここで旅館の力も見せつけよう!」と、全員の熱意がガッチリとひとつにまとまったのです。

 

3.女性ならではの視点で決まった、「お母さん想い」の価格設定

商品の枠組みとしてまず4人の意見が一致を見たのは、価格設定でした。全員が主婦の立場でもあることから、女性目線で納得のいく価格として4人家族で2,000円という設定がスムーズに決まったのだと言います。

「想定したのは、旅館から帰宅した日の夕食です」と河原さん。旅から自宅に帰ったその日にお母さんが夕食を作らなくて済むように…。一家4人の夕食として成り立つ予算内に収めよう!それがこのカレーの販売戦略のコンセプトとなりました。

そして次はいよいよ味づくり。最初に手をつけたのは素材さがしです。大阪名物の牛すじ肉を始め、4館の女将がそれぞれ仕入れ先や知り合いの農家さんのツテを辿って泉州たまねぎや河内ワインなど地元自慢の食材候補を見つけては持ち寄り、4人が顔をつきあわせての相談が繰り広げられました。

そしてこの味づくりの段階に至って、順風満帆だった計画の課題が浮き彫りになります。

味の好みは千差万別。もちろん4人の女将さんもそれは同様でした。辛口から少し甘めまで「どんなカレーに仕上げるか」をテーマに、味の方向性を固めるべく半年をかけて何度も何度も相談や議論が重ねられます。

もちろん使う素材の選定や販売価格とのバランスなども深くこれに関わってきます。「この素材を入れると全体の味わいが変わってしまう」「この素材をもっと入れたいけど予定価格をオーバーしてしまう…」など、数え切れないほどの試作と試食を繰り返し、時には先の光明が見えない中での産みの苦しみの時期が続きました。

 

4.「ちょっと儲かる旅館の広告」として、そして新たな売上げの柱として

そんな苦労の数々を乗り越えて、ようやく4人全員が「これぞ大阪ならでは!」と胸を張れる旨みたっぷりのカレーが完成。

各館での販売を開始するやいなや周囲に大評判を巻き起こし、わずか2週間で初回販売分の2,700食が完売という大成功に。もちろんすぐに増産となり、以後これまでに30数回もの増産を重ねているのだそうです。

販売ルートは当初は開発元の4館のみ。4つの旅館の位置関係が大阪府内でもちょうどよく分散していたこともあって、互いに潰しあうという危惧もなく順調な販売を背景に、それぞれの女将がご自身のおつきあいネットワークを通じて自館周辺のお土産やJAのお店、サービスエリアなどにも草の根的に販売ネットワークを広げ、販売チャネルを一歩一歩拡大しながら現在に至っています。

河原さんはこの共同事業について、さまざまなメディアに取り上げられた結果それぞれの旅館の知名度もアップし、またご来館されたお客様との会話のきっかけにもなるなど売上げ以上の大きな価値をもたらしてくれたと振り返ります。

「通常はお金を払うのが広告ですが、このカレーは『ちょっと儲かる広告』としてとても活躍してくれましたし、また宿泊以外の新たな売上げの柱として自館の経営にも大きく貢献してくれているんです」。

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5.広く全国に波及した、女将による協業の輪

画期的でユニークなこの取り組みとその成功は、言うまでもなく観光業界・旅館業界においても大きな注目を集めることとなりました。

全旅連女性経営者の会などで知り合った各地の女将さんたちから「この企画、私たちの地元でも真似させてもらえないですか」と声をかけられることも多く、そんな中から岡山県の美作や、福島県でフラ活動をしている女将さんたちによって地元の魅力を活かした独自のカレーが開発されるなど、そのムーブメントは広く全国の舞台へと波及していくこととなりました。

なにわの女将4人の関係はその後も年を重ねてますます深まっていき、今般のコロナ禍の中にあって日頃の悩みを共有できる大切な仲間として、LINEなどを通じて日々親密なコミュニケーションを図っています。

もちろん「何かあればまた4人で相談して新しいことをやろう」という気運は今もますます熱く息づいているそうです。

この経験を通じて「自分の旅館だけでなく視野を広げて周囲の人と協力すれば、地域にももっと大きな力が生まれる」ことに気づいたという河原さん。現在は地域のDMOなどへの参加を通して、地域のさらなる活性化や振興にも積極的に取り組んでいます。

自館だけでなく志を同じくする仲間と力を合わせることで、地域全体の魅力を向上させること。今の旅館・ホテル経営のテーマともいえる「地域共創」に、7年も前に積極的にトライした女将さんたちの歩みの中には、次代の旅館経営へのたくさんのヒントが隠されていそうです。

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