30分。|観光マーケティングプランナーのちょっと視点を変えた連載コラム024

30分。|観光マーケティングプランナーのちょっと視点を変えた連載コラム024

 

「風通し」という言葉がある。「風通しがいい」「風通しが悪い」と表されている。自社を振り返ってこの会社はどうだろうか?と自問自答してみると、結構いろんな見えないものが見えてくる。

職業柄、いろんな会社に足を運ぶ。玄関を入って受付で訪問の内容とお会いしたい人物の名を告げるときから会社の千差万別が現れる。受付の方が「お待ちしておりました。」と返ってくる場合と、怪しそうに(実際に怪しい風貌なのも問題なのだが)「少々お待ちください・・・。」の大体二つに分かれる。

どちらがどうかとは言えないが、当然前者の方が訪問した側としては心地よい。その心地よさから「この会社はいい会社だなあ。」とつながり、後の商談も軽やかにイケる。(結果はまた別の次元のお話として)

そんな、サイコーのマインドプレゼンが、たった一瞬の仕草で決まる。よく考えてみれば怖い話である。もちろん会社の社員として挨拶応対の訓練は日々絶やさないであろうし、仕事時間の間は神経も研ぎ澄ましているに違いない。

でも、人間、そんなに緊張感を持続するコトなどとても難しい。そのブレイクスポットにたまたま当たった相手からクレームをいただくことも、長い人生のなか数回はあるだろうか。もちろん私は何度もある。

それを助けるのが、「風通し」なのではないか?というお話である。

私は営業職時代から数えて数十年、相当数の会社を訪問している。お伺いするたびに、いつも「なぜこの会社は心地よいのか?」逆に「なぜこの会社はこうも居心地が悪いのか?」を考え、常に観察してきた。

最近、その共通したことに、いまさらながら気が付いた。前者は人の話をよく聞き、後者はあまり聞かない。ということである。どういうことかというと、こちらの話を聞こうとする姿勢が、まず全然違うのだ。

受付の方に、しっかりとこちらの顔を見て話を聞いて頂くと、伝えるこちら側も安心する。逆に、何か手元のものを見ながらやロビーの方にチラチラと目をやりながら話を聞かれると、訪問した側も迷惑がられているのか?と疑念まで生じる。

最初のマインドプレゼンの場が台無しになる。それでは、なぜその違いが生じるのか?さらに観察を続けると、もうひとつの共通項が見えてきた。

しっかりとこちらの話を聞く。ということは、その方のブロック長または経営者の方々にそういう身成があるということである。実際にそのあとにお会いする長の方や経営者の方々がそうであることが大変多い。前もってこちらの訪問時間と訪問内容を受付の社員に伝えて、その時間に自分のいるところを伝えておくというのが習慣になっている様子である。

逆の場合は、こちらが訪問してから「〇〇さん、そちらにいます?」と、内線で探し始め、相当な時間待つこともある。それはそれで仕方のないことだが・・・どちらがよいかと聞かれれば、断然前者であるのは間違いない。

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私は、仕事とはアタマの回転スピードだと自負していた頃があった。湧き出るアイディアをどんどん放出しながら馬車馬のように進んでいた。はたして、その当時、他人のハナシは殆ど耳に入れなかった気がする。

打合せをしていても、人の意見は空耳で、相槌を打ちながら、心中は次に自分が何を言うのかを滾々と考えてばかりいた。それだけ自分を信じ切っていた。そんな人間だったから失敗も多かった、でも、その失敗はいつも他人のせいにしていた。

あるとき、それを見かねた友人から「例えば、家族や他人の言うことを、30分、黙って聞いてみな。」と言われた。やや自暴自棄に陥っていた私は、それを実践してみた。最初はとても歯がゆかった、言いたいことがあふれんばかりに頭の中を駆け巡ったが、なんとか我慢し、黙って耳を傾け続けるよう心掛けた。

するとしばらくすると不思議な化学反応が生まれた。こちらがただ押し黙り、何のマインドプレゼンもしないのに、相手の表情や声のトーンがとても柔らかくなることに気が付いた。

相手を論破することばかり気を取られていた時とは雲泥の差の反応がそこにあった。と、同時に相手の考えていることが、堰を切って自分の心の中に流れ込んできたのである。

・・・その後の結果は言うまでもないだろう。

親子関係でも同じである。親は幼い我子との会話の中で必ず自分の意図を入れてしまう。それがキツイかユルイかは別としても、そうしがちだ。

我子が考えていることよりも、「まだ幼いから。」と自説を優先してしまう。その方が話は早いから。でもそんな毎日が続いたら、結果はどうなるだろう?自分の説を積めば積むほど家族の距離は、どんどん離れていってしまうのではないだろうか?

大手ハウスメーカーの社長が、社員と懇談していた時に自分のハナシにあまりにも素直に頷くので、あるときわざと間違ったことを言ってみたという。ところが、それでも社員は頷いていたそうだ。

逆に、おじさんは女性社員の気持ちが見抜けない。「笑顔がひきつり相槌が上の空でも話題を変える様子さえみせずに話し続ける。作り笑いしながらじっと聞いているコトぐらい辛いことはない。」そうである。

ヒトの一生は788,400時間と言われている。分にすれば47,304,000分。「なんか、このところウチの会社、ほころびが見えるなあ。」と感じたときに。ほんの30分、ちょっと社員の話を何も言わずに聞いてみるのはいかがでしょう?そのほころびを紡いでくれる糸が見えてくるかもしれません。

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