【連載】旅館の経営に対する10の問い-第1回

昨今、多くの旅館で人手不足が深刻な問題になっていますが、そればかりではなく、旅館によっては業績の低迷や施設の劣化による慢性的な苦情、資金繰りなど、さまざまな問題を「同時多発的」に抱えているところも少なくありません。
それらの問題の解決策は一つ一つに向き合うことが基本ですが、旅館経営においては問題の根っこが相互に絡み合っている場合が多く、一筋縄ではいきません。しかし、根っこが絡み合っているということは一つの問題に取り組むことで、他の問題にも良い効果を及ぼすことがあります。


ここでは、旅館経営それぞれの問題を解決するヒントを紹介します。思い当たる問題に対して、それを手掛かりに問題の打開を図りましょう。


【その1】

利益が出ない―その要因、分析してみませんか?

「お客様も入っているし、それなりに忙しいのにどういうわけか利益が出ない、状況が改善されない」そのような問題を抱えている旅館は、あらためて“損益分析”をやってみることをお勧めします。

 

数字を分析的に見てみましょう

毎月の試算表や年に一度の決算書の数字を見るとき、売上の増減にばかり着目し、費用に対しては「こんなもんだろう」と疎かになっていませんか?その数字、もう一度よく確認してみてください。もしかしたら、収益性を阻害する大きな問題が見過ごされているかもしれません。

 

「損益分析」を再チェック

「損益分析」を行なう上で、利益の出ない要因を探る3つの数字に着目します。


1.「前期比」と「売上比」の確認

この分析は、勘定科目ごとに2つの尺度で行ないます。「前期比」は伸び率と金額の両方から増減を見て、異常な変化があればその原因、内訳などを確認。ここで問題にしたいのは、「売上比(=売上に対して何%を占めるか)」です。


「売上比」との比較は以下の2つから行ないます。

  • 自社の過去の実績

前月比や前年同月比を見て、比率が高まる傾向にある費目がないかチェックします。

  • 「標準指標」との比較

全国200軒余の旅館と約20軒のホテルの平均値が示されている(一社)日本旅館協会発行の「営業状況等統計調査」と比較。自社の損益体質の特徴をあぶり出します。


2.着目すべき主な「費目」

「売上原価」「人件費」「送客手数料」「広告宣伝費」「水道光熱費」「営業外費用(うち支払利息)」これらから自社の収益性の足を引っ張っている要因がないか、分析します。
コストのかけ方は旅館それぞれで、「こうでなければならない」ということはありませんが、経営方針と照らし合わせて適切であるか検討しましょう。

・特に「売上原価」「水道光熱費」は要チェック

必要とされる商品力や快適性以上に無駄が生じている場合があります。また、政策的に重要な費用項目があるとしても、「かければよい」というものではありません。利益と比較し、政策自体を見直すことも重要です。

まとめ

損益分析を行なっても特に目立って高比率の項目がない場合は、全体的に少しずつ削減を考えますが、この場合も金額の多い費用項目から取り組むのが効果的です。ただし、そもそもの売上の絶対額が不足しているということも考えられます。旅館業は固定費の高い商売なので、それを賄うに足る売上が必要なことは言うまでもありません。

(株式会社リョケン 代表取締役社長 佐野洋一)

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