月岡温泉ホテルひさご荘の事例に学ぶ 「事業再構築補助金」採択への道筋

月岡温泉ホテルひさご荘の事例に学ぶ 「事業再構築補助金」採択への道筋

 

新潟県月岡温泉にある、思い出づくりの宿ホテルひさご荘。

硫黄含有量全国2位を誇り美人の湯としても知られる温泉を、露天風呂を始めとする多彩なお風呂で楽しめる宿で、その立地と交通アクセスの良さから観光からビジネスユースまで、幅広いニーズに応えています。

そんなひさご荘が、このほど国の「事業再構築補助金」に事業計画を申請し、採択されました。

本補助金は3月28日より第6回の公募がスタートしていますので、申請をご検討されている方は、採択に至るポイントをぜひ参考にしてみてください。

【CONTENTS(目次)】
1.新たな販路の開発を通して、地域との共生をめざす
2.コロナ禍の中で模索、決断した「次代へのチャレンジ」
3.もっとも苦労したのは、申請内容と審査基準とのマッチング
4.信頼できるパートナーの存在が、スムーズな申請・採択のカギ
5.採択への道を、より確かなものにするために

 

1.新たな販路の開発を通して、地域との共生をめざす

中小企業庁事業の「事業再構築補助金」とは、ポストコロナの社会の変化に対応するために、新分野展開や業種・業態の転換、事業再編などに取り組む意欲ある挑戦を支援するものです。

今回ひさご荘が申請・採択されたのは「地域との共生へ、温泉ワーケーション、客室高付加価値化、サブスクリプションによる新たな販路を構築」と名づけられた事業計画。

「温泉」を売りとした新たなワーケーション市場への進出、サブスクによる新しい販路の構築、さらに需要の高い露天風呂付客室の新設などを主な柱とした高付加価値型経営への業態転換が事業の骨子となり、またこれによって雇用の維持と賃金増給、およびマイクロツーリズムによる地域との共生を目指しています。

 

2.コロナ禍の中で模索、決断した「次代へのチャレンジ」

数年前からひさご荘では自館の今後の主要課題として、団体グループ客への依存度を少しずつ下げていくこと、またそれに伴って個人客の満足度と宿泊単価をより向上させていくことを挙げていました。

そのためには客室などの施設リニューアルが必須となることから、これまでにバリアフリー補助金などを活用した食事処のリニューアルや、既存客室へのベッド導入など上質な和モダン化への転換を着実に進めてきました。

そんなさなかに巻き起こったのが新型コロナ禍。通常営業を行うことが困難になり、入り込みにも大きな影響がある中でひさご荘が注目したのが、今回の「事業再構築」という新しい補助金でした。

現状の資金繰りへの不安。そしてコロナ後を見据えた高付加価値化と個人客の満足度向上。この双方を見据える中での決断を後押ししたのは、採択されればこれまでにない高額の補助が期待できるという大きなメリット。

ここから、ひさご荘の新たなチャレンジがスタートしました。

▶ひさご荘の過去のリノベーション記事はこちら

 

3.もっとも苦労したのは申請内容と審査基準とのマッチング

実はひさご荘がこの補助金を申請したのは、都合3度におよびます。

事業計画書の審査に当たっては予め定められた「審査項目」があり、当然のことながら、採択されるためにはこの項目に合わせてしっかりとポイントを押さえた事業計画書を提出する必要があります。

初回の申請時にも自信はあったというひさご荘。「新補助金の1回目申請受付は、きっとハードルも低いだろう」との予測もあったそうですが、残念ながら不採択という結果に。

不採択の理由として審査側からのコメントが出るのですが、このコメントによって採択に至るための具体的な改善ポイントに気づくことができます。

ひさご荘の場合は、事業計画と審査内容がしっかりとマッチングしているかどうかがポイントだと気づかされたそう。さらに計画の内容そのものに加えて、「わかりやすさ」や「国が想定するフォーマットに沿った提示方法」など審査側が判断しやすい計画書に仕上げることも重要だと痛感したそうです。

言ってみれば「国の事業目的に合致しているかどうか」「そのマッチングがわかりやすく提示されているか」といった、採択のされやすさについての視点が必要だったのです。

これを受けての2度目の申請では前回以上のわかりやすさに配慮するとともに、指摘事項に対する細かな改善を行って事業計画そのものの内容をより緻密に仕上げ、またワーケーションを始めとする新たな販売チャネルの創造や、その具体的な取組方法などを追加。

さらに初回申請時の「新分野展開」としての申請に対して、審査側から「既存客の利用も前提とした事業計画のため、新分野展開には適さない」旨の指摘があったことを受けて、改めて「業態転換」という括りへと変更して再チャレンジを行いました。

ところが今度は提出資料の一部不備というまさかの事態で、2度目の申請も不採択という結果となってしまいます。

そして満を持して取り組んだのが今回の3回目申請。これまでの不採択事由を今一度精査するとともに、過去の他施設の採択事業をひとつひとつ洗い出すことで、事業計画のタイトルもよりわかりやすいものへと一新。

見せ方やフォーマットなどの細部にもきめ細かなブラッシュアップを重ねて、無事採択に至ることができました。

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▲平面プランやパースも作成

この採択事業計画の中で特に注目したいのが、ひさご荘が提示した「温泉でのワーケーション」というコンセプト。

ワーケーションというと自然を満喫しながら仕事をするというイメージが一般的でしたが、逆に言えばそれ以外のアイディアはほとんど提示されていない状況でした。

ひさご荘が今回提示した「温泉+ワーケーション」は、ひさご荘の個性を活かした館内での過ごし方や、地域資源を上手に活用した滞在の仕方までを含めた、独自性のある総合商品としての提案という点で画期的なものであり、これによって高付加価値化による消費単価アップへの高い説得力を持たせることができたことが、採択の際の評価に結びつきました。

また経営面でも、この採択によって「自社の強みを生かしたニッチな市場開拓が、将来の収益性に期待できる」と銀行からのお墨付きをも得られたことはひさご荘にとっての大きな自信となりました。

m_ひさご荘05.png以前、別の補助金で改装した客室

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▲2022年1月に改装オープンしたコワーキングスペース

 

4.信頼できるパートナーの存在が、スムーズな申請・採択のカギ

「事業再構築補助金」では主な要件のひとつとして「事業計画を認定経営革新等支援機関や金融機関と策定し、一体となって事業再構築に取り組むこと」が定められています。今回、認定支援機関である金融機関との橋渡しを行う相談役として白羽の矢を立てたのが株式会社エイエイピーでした。

ひさご荘が事業主として設定した計画の基本コンセプトや全体俯瞰をもとに、マーケティングリサーチや「勝ち筋」へのプランニング、投資計画、このプロモーション計画を繋ぎ合わせるロジックづくりや提出書類の整備にいたるまで、具体的な事業計画のほとんどをひさご荘とエイエイピーとが協力して練り上げました。

ひさご荘では、エイエイピーとともに事業計画を策定することについて特に不安を感じることはなかったと言います。その理由は「初めて顔を合わせる相手なら不安を感じたかもしれないが、エイエイピーとはこれまでの長い付き合いの中で自館の施設や経営状態、様々な補助金などについて幅広く情報交換や検討を繰り返しており、課題認識を共有できていたから」。

仮に初めてのコンサルとタッグを組むことを想定すると、まずは自館の過去・現在・未来展望までをゼロから情報共有するステップが必要になります。

各種の補助金はいずれも公募から申請までの時間が限られているため、ここから計画をスタートして、タイムリミットまでに採択に値するクオリティの事業計画を練り上げることは、現実的には非常に困難です。

また随時発表される補助金情報の中から自館に「使える」ものを見つけ出し、すぐに検討に移るためにも、信頼できる協力者の存在は必要不可欠。

「日頃から自館の情報や課題を共有できているパートナーの存在こそが、採択の成否を左右する」。それが今回の採択を経ての実感なのだそうです。

 

5.採択への道を、より確かなものにするために

もう一つ、「この計画によって本当に利益を出せるのか」も採択の大きな基準の一つだとの貴重な助言をいただきました。

幸いコロナ前までは、苦労こそありながらも安定経営が行えていたひさご荘。その信頼と評価を背景として、取引金融機関が収支計画策定を積極的に支援してくれたため、緻密かつ説得力のある固い数字を出すことができたと言います。

申請時の収支計画ですから当然大まかなものにならざるを得ませんが、事業計画の見込み期待値に十分な信頼度を持たせることができれば、採択の可能性はより高まります。

最も大切なのは、数字、論理構築、文章などを必要以上に説明するのではなく、「どれだけ事業熱意が伝わる、説得力のある申請ができるかだと思う」とここまでの歩みを振り返るひさご荘。

補助金の採択に至る道とは、説得力を高めるための努力を重ねたその先にあるのかもしれません。

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■月岡温泉ホテルひさご荘
〒959-2338 新潟県新発田市月岡温泉 552-16
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