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「新潟から世界へ」をコンセプトに、日本酒の文化と魅力を発信する国際交流プロジェクト「Niigata SAKE Lovers」

トップランナー Vol.28

Niigata SAKE Lovers 代表 デュケット智美さん

『新潟地酒を愛でる会』という名称で2013年にスタートした、日本酒文化国際交流プロジェクト「​Niigata SAKE Lovers」。
新潟の地酒と酒文化について学び、それらを『愛でる』という思想に共感したメンバーが国を越えて集まり、日本酒文化の育成や啓発、また海外への情報発信など幅広い活動に取り組んでいます。

このNiigata SAKE Loversの代表を務めるのが、豊富な海外経験によるインターナショナルな視点を持ったデュケット智美さん。
日本酒をカギとした地域発の観光振興策の推進・サポート活動を展開し、日本酒と日本文化の魅力を海外に発信するアンバサダーである「2024 Mrs SAKE JAPAN グランプリ」も受賞されています。




1.Niigata SAKE Loversの活動を始めたきっかけは?


私は新潟出身で、若い頃からオランダやイギリス、カナダなどを始め多くの国で働いてきたのですが、その長い海外経験の中で、日本にいた時の自分の常識というものがいかに狭い枠の中のものだったのかということに気づかされたんです。

その後日本に戻ってエンジニア系企業の業務翻訳を担当していたのですが、ある時、海外の取引先の皆さんを地元の酒蔵にご案内したことがあったんです。
杜氏の方に日本酒の作り方や魅力などを説明していただき、それを通訳したのですが、当時はお酒づくりについての専門用語をまったく知らなかったため、説明していただいた内容をしっかりと伝えることができなかったんです。

通訳はただ言葉を翻訳すればいいのではなく、案内することの意味や背景などまでをしっかり理解していないと、内容を十分に伝えることができません。
酒どころの新潟出身でありながら、自分が地元の宝についてほとんど知らないことを実感させられたこの体験をきっかけに、もっと日本酒について知りたいと学び始めたことが、Niigata SAKE Loversの出発点になりました。


2.隠された「地元の宝」を、広く世界にお披露目したい


そんなNiigata SAKE Loversでさまざまな活動を展開するうちに、少しずつ日本の観光について「いわゆるゴールデンルートにない場所でこそ、日本人の本当の営みや深みを体感してもらえるのではないか?」という想いが強くなっていきました。

しかし観光に関わる方や地域の酒蔵の方々は英語でのコミュニケートを不得手としていて、海外に向けて地域の情報を発信したり、来日観光客を現地でもてなすことに慣れておらず、本当に価値のあるものが「隠された宝」になってしまっている。それが本当にもったいないと感じたんです。

そこで日本酒の文化と魅力を、英語で世界に発信し、また現地で多くの方とコミュニケートすることこそが、私の役目ではないかと思い至ったわけです。


3.観光客側が魅力を感じるかどうかが、インバウンドの最大のポイント


海外の観光客を受け入れることを一括りにインバウンドと呼び習わしますが、実はそれぞれの国によって観光客の感性も志向も、また常識さえも大きく異なっていることはあまり知られていません。
より観光的な視点で言うなら、国によって、人によって「面白いと感じるもの」がまったく違うのだということを知っておくことが大事です。

日本の観光産業では多くの場合「売りたいもの」ありきでコトが進んでしまいます。しかしそのツアーや商品を買うのはお客様ですから、「買いたいと思われるもの」をベースにビジネスを考えるのは当然のことです。
逆に言えば従来のように「売りたいもの」発想ではなく、「買ってもらえるもの」発想をすることができれば、観光商品はもっともっと簡単に売ることができるはずなんです。

私たちが観光コンテンツを考える時にいちばん大切にしているのは、「それが誰に向けたコンテンツなのか」ということ。

どの国から来るどんな年代の方か、どんな志向を持った方なのか。対象となる方のペルソナをしっかりと固めた上で、その人がどんなことに興味や魅力を感じるだろうか?という外国人観光客側の目線で企画を立てることを基本としています。

皆さんも観光ツアーや商品企画を立案する際にも、「その企画は観光客のニーズにマッチしているか?」をぜひチェックしてみてください。


4.日本酒には、それぞれの地域の風土や食、文化の魅力が凝縮している


私たちが活動の主軸に据えている日本酒は、それぞれの土地の風土や文化、人々の営みの、そのすべてが結晶したもの。
いわば日本酒は、海外の観光客が求める「日本の魅力」がぎっしりと詰め込まれたシンボルです。

例えばNiigata SAKE Loversの活動の一つに、私たちが酒蔵ナビゲーターとなって海外の日本酒愛好家の皆さんを新潟の酒蔵にご案内し、酒造りの現場を見ていただいたり、作り手の想いを感じていただきながら「飲む日本文化」を堪能していただくというツアーがあります。

この酒蔵めぐりを単なるイベントではなく「日本の魅力をより深く味わえる体験ツアー」へと昇華させるためには、酒蔵のある土地ごとの「食」の特徴や、地域の文化・歴史、温泉、人の営みなど、あらゆる要素についてのより幅広い知識を持っておくことが理想的。

そのためにも、案内する側の通訳の方やガイドの方が地域の方々と深く交流し、酒造りや酒蔵について十分に理解していくことがこれまで以上に大切になってきます。

私たちNiigata SAKE Loversは、地域の方々や、世界から訪れる方々とのより深い交流を通じて、東京では得ることのできない「日本の真の素晴らしさ」を五感で体感していただけるコンテンツを開発していきたいと思っています。

●Niigata SAKE Lovers/株式会社CONNECT JAPAN Inbound solutionsによるコンテンツ制作の一例

「NIIGATA- A HIDDEN GEM」(和訳:新潟市 隠れた宝物)
ポルトガルで開催された国際観光映像祭「ART&TUR」で、アジア部門最優秀賞など3つの賞を受賞


5.英語はあくまでも、コミュニケーションツール


世界の方々を受け入れることを考えると、多くの方は反射的に「でも英語が…」と感じてしまうかと思います。

もちろん英語が重要なのは間違いないのですが、では英語が堪能ならインバウンド施策がうまく行くか?というと必ずしもそうではありません。

なぜなら英語はあくまでもコミュニケーションツールであって、インバウンド観光にとって最も重要なのは「コンテンツの魅力」そのものだからです。

ワインを日常的に楽しむフランスには、「ワインはフランス料理のソース」という言葉があります。これはお酒は酔うために飲むものではなく、料理の味をより引き立てるための存在だという考え方です。

「マリアージュ」や「ペアリング」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、実はこれは日本酒においてもまったく同じことが言えます。

私たちが推進するSakeツーリズムも「食事を美味しく食べるための日本酒」という位置づけで、地域や銘柄ごとの個性の違いはもちろん、その味わいを生み出す背景となった地域の歴史や文化性などまでを五感で体験してもらうことで「地域の魅力そのもの」を最大限に感じ取ってもらえる企画となっています。

Niigata SAKE Loversではその他にも、新潟の数々の酒蔵とのコラボによってオリジナルの日本酒「繋ぐ」を商品化したり、近々に完成する自分たちの酒蔵を舞台に日本酒の仕込み体験などをコンテンツに盛り込んだツアーの立案など、さまざまな計画を着々と進めている最中です。


6.企画を立てる時は、世界の「当たり前」である「サステナビリティ」を重視して


近年、世界的にSDGsを始めとするサステナビリティへの意識が高まり、「持続可能性のない観光」は世界から支持されないという傾向が顕著となっています。

ミシュランでも、2021年からグリーンスターという表彰制度を設けているなど、観光・ガストロノミーの双方において、もはやサステナビリティは避けて通れない重要な課題です。

日本ではまだその意識が一般化しているとは言えませんが、世界の観光客を呼び込むのであれば「サステナブル」は必須のテーマだということをツアー企画の開発時点から重視しておくことが大切です。

7.地域の魅力を発信したいという想いがある方と、もっともっと協業したい

Niigata SAKE Loversとは別に、私は株式会社CONNECT JAPAN Inbound solutionsの代表を努めているのですが、この会社は海外への情報発信に特化したPR会社で、海外各国のネイティブに向けた広告や各種コンテンツ作成、映像制作、海外プロモーション戦略、海外営業代行などを行っています。

このNiigata SAKE LoversとCONNECT JAPAN Inbound solutionsのそれぞれの役割を連携させることで、観光地の海外向けブランディングやコンサルティング、自治体などの広報戦略までが実現可能です。

例えば日本酒ツーリズムを軸とした地域住民の啓発に、国からの補助金や支援を組み合わせた新事業のワク組みを創出する。

またより深く地域の魅力を体験できるツアーコンテンツを開発するとともに、その専門ガイドを育成する。

さらには海外各国と日本を直結させられる現地ツアー会社を始めとする多業種とのコラボレーション企画など、地域のインバウンド観光の拡大に向けた多彩なアイディアやコンテンツをご提供することができます。

地域の魅力は、人の魅力。
旅に出る人は皆、「ふれあい」を求めています。
日本の真の魅力を発信していくためには、まずはその地域の人々とのより深い交流を図り、また志をひとつにすることが大切です。

日本の各地にまだ眠っているそれぞれの地域の魅力を掘り起こすために、私たちは「繋ぐ」というキーワードを掲げています。

訪れる側である海外観光客の視点から発掘した地域の魅力を「新たな観光コンテンツ」に仕立てて、広く海外に向けて発信したいとのお考えをお持ちでしたら、皆さんもぜひ私たちと一緒に始めてみませんか。



●プロフィール
Niigata SAKE Lovers/株式会社CONNECT JAPAN Inbound solutions 
代表 デュケット智美さん

日本酒学講師、栄養士TESOL認定英会話講師の資格を持つ。
オランダ、イギリス、カナダ、香港、中国でのマネージメント経験を経て、現在では輸出入の通訳・翻訳、海外営業代行サービスを行う他、日本酒と様々な食のフードペアリングをプロデュース。
言語の壁を超えて日本食・日本酒学の正しい知識をバイリンガルで国内外へ広めていくサービスを提供している。



株式会社エイエイピーでは、デュケット智美さんとの協業を通じて、地域のインバウンド事業支援した実績もございます。ぜひお気軽にご相談ください。

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