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世界に先駆けて、10年以上も前から環境保全活動を実践。地域の自然保護と省エネ、地域産業の振興を推進する「サン浦島ホールディングス(株)」

トップランナー Vol.29
サン浦島ホールディングス(株) CEO 吉川勝也さん


二千年もの歴史を誇る伊勢神宮に加えて、優美な自然景観を有する伊勢志摩・鳥羽国立公園。
つねに多くの観光客を集めるこのエリアで、「サン浦島 悠季の里」を中心とした幅広い事業を展開しているのがサン浦島ホールディングスです。
 
今回のトップランナーは、サン浦島とサン・サービスの二つの会社を持つサン浦島ホールディングスの代表を務め上げ、また三重県の第三セクター企業「紀伊長島レクリエーション都市開発(株)」にも携わるなど、50年以上の長きに渡って地域の観光振興に取り組まれているサン浦島ホールディングス(株) CEO 吉川勝也さんにお話をお聞きしました。




1.サン浦島ホールディングスの歴史の中で、会長が初めて手掛けたのはどんな取り組みだったのでしょうか?


サン浦島悠季の里(ロビー) 


私は23歳で宿泊業界に入り、振り返ればそれ以来約50年間にわたって事業を展開してきました。
当初は父から受け継いだ11部屋の小さな宿からスタートし、昭和56年に部屋数を52室に増設したのが、初めての大規模な投資でした。

これは「家業」からの脱却・発展を含めて、事業としての将来を考えたものです、新たな従業員を確保し業務の分担・効率化を図るという経営判断と、一人の子供を持つ親として家族と共に過ごす時間を大切にしたいという想いを共に叶えるものでした。

後継者の一人として、旅館業に専念し、受け継いだ暖簾をリスク無く守っていく事が本来のあり方なのだと思います、敢えて挑戦する急激な拡張にはつねにリスクが伴います。

周囲にも成長していく宿もあれば、一方では淘汰されていく宿もあるというのが現実です。
大きな投資を行う上では「可能な限りのリスクマネージメント」が最重要ポイントと考えます。

ただし、宿泊業には、大きな投資が伴うぶん、地域への経済的影響も大きなものが期待できます。
反面、投資は、自らの企業へのリスクはもちろん、取引先並びに地域への影響も大きいので、自社の責任をしっかりと受け止めた上での経営判断を行うことが大切かと思います。

これまでの私どもの歩みは、成長優先だけでは無くリスクとそれに伴う地域への影響をどうすれば回避できるかということをつねに念頭に置いてきた50年だったと言えるのかもしれません。
 

2.困難な地域の再開発に挑戦するその想いとは
 

Villa お伽話(温泉露天風呂付Villa)


この地域にて「明かりを灯す運動 」を私は長年に渡って積極的に取り組んできました、その最大のモチベーションは「地域ににぎわいを創る」その事により最寄りに存在する我々の宿も元気になっていくことです。

ただ地元経営者の中には、地域のことよりもまず自分の宿をどう守って行くかが喫緊の課題でありそれどころではない事も一部では事実です。
しかし皆が皆こうした考えになってしまうと、地域経済全体が低迷してしまうという危機感もありました。

そこで個だけの視点ではなく広く全体も視野に入れ考えることで、回り回って地域と自分の店との、双方の発展をめざしていく取り組みを行うべきだと考えるに至ったわけです。

「地域に明かりを灯す運動」というのはそういう活動なのですが、現実には「ないない尽くし」の困難な状況・環境も現実です。

しかしこうした困難な状況に直面してこそ学べるもの、経験できることは確かにあります。
私もスタッフもこの取り組みを続けてきたことによって、他では得られない大きな自信を持つことに繋がりました。
 
 

3.地域貢献という意味では、世界に先駆けて環境保全活動にも取り組まれていますね


御宿 The Earth(全景)


「持続可能な社会づくり」を掲げたSDGsの取り組みが世界的に始まったのが2015年のことだったかと思うのですが、私どものグループ姉妹館の「御宿 The Earth」では先駆けて、2008年から既にこの問題に取り組んできました。

2008年オープンの「御宿 The Earth」は、これからの宿の理想像として環境との共生を第一に捉えコンセプトに掲げてきました

旅館としては画期的な
1. オール電化(厨房にも)によりco2低減を図る
2. 生活排水の地下浸透化により脱海洋投棄
3. 生ゴミの完全処理並びに100%堆肥化利用
4. 緑地保全を敷地の(54.000坪)90%以上
5. 地元海女との黒鮑稚貝放流事業による資源保護

環境保護に向けた多岐にわたる数々の取り組みを実践して来ています。

先にもふれましたが、まだ「SDGs」という言葉すら存在していない頃からのことですので、こうした先進的な環境保護の取り組みは、業界でも話題になりました。

今や世界的に環境意識が高まっています。21世紀の今こそ、これから創っていく宿にはこうした取り組みが必須項目になって行けば良いと思います。

環境保護に積極的に取り組む企業は地域からも大歓迎されると思っています。
 

4.サン浦島ホールディングス(株)が、今後めざすものは何でしょう


ねぼーや志摩別邸(全景パース)


これから日本の経済を引っ張っていくのはどういった業種なのだろうか?と考えますと、旅館や観光業界に対しての期待感は、昭和・平成の時代以上に大きくなってきています。

そんな中、日本の旅館を後世に引き継ぐと当時に、世界の人々からも「日本には旅館と言う素晴らしい文化ある」と認めてもらう努力が必要かと考えます。

旅館はその多くが地方に有り、地域経済にとっての大切な役割を果たしています、より幅広い視野でその将来性を見出していただけるように、私たち自身が関係者に向けて働きかけると共に、他の産業との連携も模索して行くことが大切だと思います。

日本の旅館軒数は減少の一途であり寂しい限りですが、一軒一軒の宿にはそこでしか味わえない料理があり、アイデンティティがあります。

これからの日本にも、地方にも、旅館は必要です。
旅館の未来につながるような動きになってほしいものです。

そのためには個々の旅館も自助努力を重ね、そこに国や地方行政、業界団体が一つになり、最後の後押しをしてくれるというのが理想と考えています。

こうしたチャレンジを通して、次代を担う若者が旅館というものに明るい未来を描けるようになることが、日本の旅館業の今後の成長・発展のカギになるのではないでしょうか。
 
 
 
 
●プロフィール
サン浦島ホールディングス(株)
CEO 吉川勝也さん
 
伊勢志摩エリアで温泉涌出に成功するなど、革新的な旅館経営を通じて伊勢志摩・鳥羽地域のにぎわいづくりに貢献。
旅館・ホテル経営から、リゾート施設運営、水産加工品の開発・販売、貿易などの多彩な事業を展開するサン浦島ホールディングス(株)代表として、現在も活躍中。
 



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