新潟県観光協会が手がける「新潟ガストロノミー」磨き上げ事業をご紹介
去る2024年2月、公益社団法人新潟県観光協会では、域内の「新潟ガストロノミーアワード」受賞コンテンツと「新潟プレミアムダイニング」コンテンツを組み合わせた2泊3日のFAMツアーを実施しました。
これに加えて、地域で磨き上げた観光コンテンツを各国の旅行会社に紹介するための動画も制作し、並行して公式の多言語サイトなどで発信するなど、海外からの新たな観光需要の拡大をめざしていきます。
1.地域の現状から抽出した、観光における課題
新潟のガストロノミーツーリズム振興を図るにあたり、新潟県観光協会では現状の観光における3つの課題を抽出しました。
①生産者やシェフなどの人的ネットワークと、各地の観光資源を面的に組み合わせた高単価旅行商品がない。
②観光消費額の向上と域内の横展開に向けて、フラッグシップとなり得る取り組みが確立されていない。
③ガストロノミーとツーリズムを連動させた訪日販路の確保がいまだ不十分。
2.これらの課題解決に向けて、新たなインバウンドコンテンツを造成
これらの課題の解決を目的に造成されたのが、今回ご紹介する2泊3日のインバウンド向け体験FAMツアーです。
ツアーには新潟ならではの歴史や地域文化、食の魅力などを満喫できる様々な体験コンテンツの数々が盛り込まれました。
①リゾート観光列車『雪月花』による、インバウンド向け特別運行商品の造成
新潟ガストロノミーアワードを受賞したリゾート列車『雪月花』を活用し、通常の提供メニューに加えて新たに列車通過エリアの飲食店のシェフ達が自ら料理を提供。
また途中下車をはさんで、アワード特産部門大賞の「かんずり雪さらし体験」や「酒造見学」などのコンテンツを盛り込み、新潟ならではの「食」と「体験」を堪能できる、新たなインバウンド向けガストロノミー観光列車に仕立てる。
②『ガストロノミー特化型宿泊プラン』&体験新造成
新潟ガストロノミーアワード受賞ホテルにて、地元の「食」資源を使ったインバウンド向けのガストロノミー特化型宿泊プランを新たに開発。
③縄文から承継される豪雪の食文化:SNOW RICH Tourism(日本遺産認定)商品を造成
新ツアー内には、雪国でしか出会うことのできない独特の食文化や暮らし体験、着物織体験、いなか料理づくりなどの体験を盛り込む。
④海外の中間~富裕層に強いランドオペレーターの招聘
海外の観光市場に影響力を持つランドオペレーターを招聘し、造成された新ツアー企画を体験してもらい、販路の確保とともにブラッシュアップのための課題抽出を図る。
また体験と同時に動画も撮影し、新コンテンツを紹介するPR素材としても活用する。
3.ガストロノミーコンテンツを組み込んだ体験ツアーの内容をご紹介
①ツアー概要
「ガストロノミーコンテンツを組み合わせた2泊3日のインバウンド向け体験ツアー」は下記の日程で開催されました。
●実施日:2024年2月1日(木)・2日(金)・3日(土)
②参加者紹介
九州ごころ
アジア・ヨーロッパに旅行会社とネットワークを持つランドオペレーター「九州ごころ」。ベトナム人の小グループを新潟へ手配した実績や、佐渡島へのファム参加経験などがあります。
JTA
アジア・オセアニアにネットワークを持つインバウンドとアウトバウンド両方に取り組んでいる会社「JTA」。今回はタイ支店で長く活躍していたスタッフが参加しました。
WAWO
日本最大級の通訳案内士手配会社のTureJapanToursを独立したメンバーが立ち上げたインバウンド専門の旅行会社「WAWO」。精力的に全国の商品造成案件に参加をして販売をしている会社です。
Inside Japan Beth
「Inside Japan Beth」は、特に欧米豪に強いグローバル旅行会社で、年間に数千組単位の訪日旅行を取り扱っている実績があります。主に1組50-100万円の予算の旅行者が多いことが特徴で、今回の企画内容が「自社で発信したいローカル性の強いツアー」という狙いにぴったりとフィットすることから参加が決定しました。
これらランドオペレーターの皆さんに、初日の「雪月花」のみを体験する一般外国人モニターを加えての実施となりました。
<ツアーのご紹介>
●2月1日(1日目)
リゾート列車『雪月花』に乗車し、新潟自慢の食と日本酒を堪能
糸魚川駅よりリゾート列車「雪月花」に乗車。
窓外の風景と雪月花の車中を楽しみながら、ガストロノミーアワード飲食店部門 女性Chef賞 受賞の十日町 会席ゆげ 弓削朋子氏によるオリジナルのお弁当と、ガストロノミーアワード 旅館・ホテル部門 審査員長賞を受賞した松之山温泉 酒の宿玉城屋 山岸裕一氏による日本酒とのペアリングを堪能。
途中、「かんずり雪さらし体験」や「君の井酒造見学」を楽しんだ後、宿泊先のロッテアライリゾートへ。
ロッテアライリゾートでは「日本酒・クラフトビール飲み比べ」「屋外テントサウナ」「着物の着付け」などを体験。
●2月2日(2日目)
雪国ならではの暮らしを体験[かんじき・いなか料理・織物]
2日目はKOME HOMEを訪れ、新潟の「いなか暮らし」を体験。
日本の雪国伝統のスノーシュー「かんじき」でふかふかの雪原を歩いたり、地元の女性たちが作る十日町や魚沼地域独特の「ごっつぉ(ごちそう)」を味わいました。
午後は織物の町として知られる十日町の服飾文化を体験するため、織機を使ったオリジナルプレースマット(ランチョンマット)づくりにも挑戦。
宿泊先の「松之山温泉 ひなの宿ちとせ」は、草津、有馬と並ぶ日本三大薬湯として知られる松之山温泉の湯を源泉掛け流しで楽しめる他、地元食材にこだわった郷土の味が自慢の宿。
夜には、歴史を誇る松之山温泉街に新たな楽しみを提案するスポット「湯治BAR」での食前酒体験も体験しました。
●2月3日(最終日)
まつだい雪国農耕文化村センター「農舞台」および「大地の芸術祭」を見学
ツアー最終日は、里山を利用したARTと食と農のプログラムをテーマとしたフィールドミュージアム、まつだい雪国農耕文化村センターへ。
ここは里山の四季の大自然を舞台とした、世界的なアーティストの現代アート作品の魅力が堪能できる施設です。
その拠点施設としてオランダの建築家グループ・MVRDVが設計した「農舞台」で開催される、世界最大級の国際芸術祭「大地の芸術祭」も見学。
アートによる地域づくりの先進事例として国内外から注目を集めている「アートと里山の融合から生まれる新しい旅」を満喫しました。
④アンケート結果、それぞれの体験に対する声と改善へのサジェスト
ツアーの終了後には、各体験の満足度や改善点、また自分が海外からのお客様を招くという視点からのサジェストやアドバイスなど、貴重な意見の数々が寄せられました。そのいくつかを、下記にご紹介します。
<良かった点>
・「雪月花」の車窓から雪景色を見ながらの列車の旅は新鮮で、最高にラグジュアリーな体験でした。
・「雪月花」の運転士とのコラボなど、貸切列車ならではの催しがあってもいい。
・「君の井酒造」は建築様式や雰囲気に歴史が感じられ、杜氏自らが日本酒づくりの歴史背景を語ったのも興味深かった。
・「KOME HOME」で田舎のおばちゃんが作ってくれる料理が美味しく、楽しかった。
・スキーやスノボ以外の雪のコンテンツとして、雪国の生活をベースとした体験コンテンツはどれも満足度が高かった。
・「ひなの宿ちとせ」はご飯がとても美味しく、雪の中の温泉体験も格別だった。
・「まつだい雪国農耕文化村センター」は、家族で遊べるアクティビティが豊富で、地域全体で楽しませてくれる雰囲気が満ちていた。
<改善点>
・車中での食事はより温かいものを提供してほしかった。
・「かんずり」は雪の量のために体験することができず、ビデオを見るだけになってしまったのが残念。
・「君の井酒造」では杜氏と一緒に行える催しがあるとよかった。
・また酒樽が並んだエリアの迫力は圧巻だったので、ここを回遊できるだけでもスケール感が違うと思う。
<海外に発信する立場からの意見>
・海外観光客にとって、列車の車中にはコンセントとWi-Fiが必須。
・「ロッテアライリゾート」はグローバルスタンダードなサービスや食事のチョイスの多さなど様々な国の方を案内するのに申し分ない魅力があるが、その反面、日本的な情緒は感じられなかった。
・「KOME HOME」では日本の情緒を満喫できるが、あぐらをかけない海外の観光客にとってやはり畳はキツいと思う。
・「ひなの宿ちとせ」では早朝にパブリック施設の照明が消灯されていたが、海外観光客は朝から動く人もいるのでこうした点にも要注意。
・松之山温泉は山間にあり、日本の風情を感じながらゆったり過ごせる雰囲気が良かった。団体よりも個人向けの温泉地のように感じる。
・気軽に雪のアクティビティを楽しめる「まつだい雪国農耕文化村センター」は、多くのお客様に喜んでもらえそう。
⑤体験の様子は、地域旅行会社制作vlogでも発信
今回のツアーに参加した新潟市内の訪日観光客向け地域旅行会社が、さまざまな旅先での体験や催しを楽しんでいる様子を発信していますので、ぜひご覧ください。
事業主体|新潟県観光協会:事業企画・設計、連携自治体・事業者調整、事業実施
委託先|(株)エイエイピー:事業企画・設計支援、事業実施支援、FAMtripプロデュース
(株)ソリッドインテリジェンス:ランオペ・旅行会社ディレクション
エイエイピー観光伴走支援業務では、インバウンド事業の企画・設計段階から、事業実施・プロモーション支援、補助金申請支援を行っています。下記リンクよりお気軽にご相談ください。
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