他人事ではない!地方インバウンドにおける課題や備え
2024年、インバウンド旅行市場は急速な回復を遂げ、訪日観光客数と消費額が2019年を超える勢いで増加。この成長は、日本全国に大きな経済効果をもたらし、地方の観光地にも新たなチャンスが広がっています。
特に、リピーターの増加により、これまでのゴールデンルートから外れた地方への旅行が増えつつあり、地域経済に大きな恩恵をもたらす可能性があります。
しかし、急速に変化するこの状況に対応するためには、地方を盛り上げようとしている方が今から準備を始めることが重要です。
具体的には、インバウンド向けの情報発信や、DXツールを活用した受け入れ態勢の整備が必要不可欠です。
この記事では、地方におけるインバウンドの課題を押さえつつ、地方の観光業がこのインバウンド需要を最大限に活用するための具体的なステップと、環境の変化に適応するための方法を詳しくご紹介します。
地方におけるインバウンドの課題は多岐にわたります。主な課題を以下に網羅的に説明します。
課題と対策①_インフラ整備
インフラ整備は時間がかかるものの、今後のリピート率・口コミなどに影響するトピックです。自治体や企業などとうまく連携して、改善を進めましょう。
1.公共交通機関
地方の公共交通機関は都市部に比べて本数が少なく、利便性が低いことが挙げられます。
特に地方の観光地では、空港や主要駅から目的地までの二次交通が不十分な場合が多くあります。具体的な問題点としては以下の通りです。
最近では、電動自転車や電動キックボードのレンタルするシェアリングサービスの実証実験も各地方で進んでいます。ドライバーの高齢化や人手不足の問題もありますが、仕組みやサービスの導入でうまく切り抜ける方法もあります。
2.Wi-Fi環境
無料Wi-Fiの提供は外国人観光客にとって必須ですが、地方ではWi-Fi環境が整っていない場所も多く存在します。これにより、観光客の情報収集やコミュニケーションに支障をきたすかもしれません。
もちろん電気通信事業者は各地で電波環境を改善し続けているものの、どうしても人口が少ない地方まで対応しきれない部分もあります。企業や自治体、電気通信事業者が協力してインターネット環境を整備するなど、地道な対応が求められます。
3.キャッシュレス決済
日本ではまだまだ現金支払いが根強いものの、キャッシュレス決済の普及は外国人観光客の利便性を高める重要な要素です。地方ではキャッシュレス対応が遅れている場合が多く、これが課題となっています。
例えば、中国発の決済であるアリペイは、まさに中国人によく使われるキャッシュレス決済です。クレジットカード決済はもちろんのこと、各国で用いられている決済方法をご自身の地域で導入することで、訪日観光客の利便性を向上させられます。
課題と対策②_観光資源の活用と開発
持続可能な観光開発と地域の特性を活かした取り組みが、今後の地方インバウンド観光の鍵となるでしょう。
1.地方の観光資源の未活用
日本の主要観光地に観光客が集中し、地方の観光資源が十分に活用されていない状況があります。地方の魅力的な観光資源を発掘し、活用することが課題となっています。
地方の里山資源にフォーカスした、飛騨高山の事例は非常に有用です。サイクリングや周遊ツアーを通じて、古民家や里山、農村風景を味わえます。地方の人にとってはなんて事のない日常風景も、海外の人にしてみれば非日常に映ります。
2.持続可能な観光開発
インバウンドを成功させるには、観光地のバランスの取れた開発が必要です。環境への負荷や文化の保護を考慮しつつ、地域の特産品や伝統文化を活かした観光プログラムの充実やエコツーリズムの推進が求められています。
訪日外国人旅行者の増加により、地域の資源や文化が過度に利用されることで、環境や住民の負担が増大する可能性があります。特に、ゴミ問題や騒音問題は深刻な課題です。ゴミ箱の設置や、地域住民とのエリアには営業時間を制限するなど、環境整備が必要です。
課題と対策③_受け入れ態勢の整備
外国人を呼び込み、満足して帰ってもらう(そしてまた来てもらう)には、戦略と人員が不可欠です。継続的な集客・リピート施策が実行できるよう、受け入れ体制を整えましょう。
1.多言語対応
案内表示や情報提供の多言語化が不十分な地域が多く、外国人観光客の受け入れに支障をきたしています。駅やバス停の案内表示が日本語のみであることや、時刻表や運賃情報が外国語で提供されていないことも問題です。
簡単な例で言うと、外国人用のパンフレットの作成が有効です。最近では、タブレット端末の導入や、アプリ・サイトをご自身のスマホで見てもらう方法などが挙げられます。
2.人材登用・育成
観光産業に携わる人材の育成が不足しています。大都市圏はもちろん、地方でも宿泊施設が不足しており、受け入れ能力の拡大が課題となっています。特に、一度コロナで閉業してしまったツアー会社やホテル、旅館も多く、新たな人材採用・育成が求められます。
3.外国人向けの観光客の集客
地方のインバウンド需要回復には、欧米等からの訪日客を地方に呼び込む、多角的なアプローチが必要です。
インバウンドに限りませんが、ターゲットを明確にし、デジタルマーケティングを活用することがポイントです。多言語対応のSNSやウェブサイトで地域の魅力を発信しましょう。一例としては外国人インフルエンサーを活用すると、現地へ信頼性の高い情報を訴求できます。
地方インバウンドにはシステムの力を有効活用しよう
人材やノウハウが不足している場合は、仕組み、つまりDXで解決すると良いでしょう。実際、人一人雇う費用でDXを導入することで、ノウハウを持った人手不足が解決することもあります。
1.観光MaaSの導入
観光MaaSは、観光客の満足度向上と地域経済の活性化に大きく貢献する可能性を秘めています。観光MaaSは、交通手段と観光サービスを一括で提供するシステムです。観光MaaSの導入で、旅行者の利便性が向上し、地域全体の観光促進につながります。
具体的には、複数の交通手段をシームレスに連携させ、一連の予約・決済をまとめて済ませられます。また、観光客の行動データを収集・分析し、混雑予測や需要予測に活用できます。アプリでバスやエリアの混雑情報が分かれば、観光客の分散化も可能です。
導入にあたっては、地域の特性に合わせたサービス設計や、データセキュリティの確保が重要です。
2.翻訳アプリ・多言語システムの導入
地方インバウンドにおける翻訳アプリ・多言語システムの導入は、外国人観光客とのコミュニケーション円滑化に不可欠です。言語の壁を取り除き、観光客の満足度向上と地域の受入体制強化に貢献します。
外国人観光客が安心して旅行を楽しめるようになり、地域の魅力をより深く理解できるようになるでしょう。
具体的には、多言語対応の案内表示、翻訳機能付きのスマートフォンアプリ、AIを活用した自動翻訳システムなどが導入されています。現地対応が少なく済み、観光案内、緊急時の対応、地域の文化や歴史の説明が容易になります。
3.最新技術(AI・IoT・VR)などを用いたスマートツーリズムの推進
スマートツーリズムとは、最新のデジタル技術を活用して観光客のニーズに対応し、地域の課題解決を図る観光のあり方です。これにより、観光客の利便性向上、地域経済の活性化、オーバーツーリズム対策などが可能です。
具体的には、ビッグデータやIoT、AI、VR/ARなどの活用が挙げられます。例えば、個別化された観光プランの提案、バーチャル観光体験の提供などが可能です。
まとめ
インバウンドは都市圏に限ったことではありません。著者もお盆に長野県の北部にある白馬村に行きました。本来スキーシーズンに大盛況となる白馬村ですが、朝のバスは登山客でバスも満席で補助席に座らないといけないほど大混雑。オフシーズンの白馬でも3〜4割程度が外国人観光客でした。また、WiFiが心なしか遅かったことや、移動時間の長さに疲弊したことも思い出となりました。
今後さらに伸びてくるインバウンド需要。不便さこそ醍醐味とも言えますが、それは都市圏に住む日本人の考えであり、ことインバウンドにおいて交通機関やWiFiの環境整備は必須と言えます。タイトルの通り他人事ではなく、DXの力を借りながら、うまく受け入れ態勢・備えをしておきたいものです。
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