宿に併設する「温泉喫茶 si no no me」を新規オープン!老舗旅館・西浦温泉 旬景浪漫銀波荘の新たな挑戦
西浦温泉 旬景浪漫銀波荘は、創業68年の歴史を持つ老舗の温泉旅館。
たった4室から始まったこの宿はこれまで、三河湾の絶景を誇る美肌の湯や地域の山海の美味を満喫できる宿として団体客を中心に高い人気を誇ってきました。
そんな銀波荘が近年、団体客から個人客志向へと運営ビジョンを大きくシフト。
多彩な取り組みを通して、「今」のニーズにマッチした個人客向け高質旅館へと生まれ変わってきています。
1.コロナ禍によってさらに加速した、旅行シーンの個人化傾向に柔軟に対応
蒲郡・西浦地区の「おもてなしの宿」として高い評価を誇っている銀波荘ですが、以前から徐々に団体向けから個人客向け旅館へのシフトを念頭に、団体旅館の名残のパブリックである二次会処・クラブなどをクローズし、新たに個人向けの専用食事処を設けるなど、選ばれたお客様に向けた高品質な施設・空間などをご提供できるよう、きめ細やかな施策を着実に積み重ねていました。
そんな矢先に巻き起こったのが先のコロナ禍。
全国の旅館ホテルの例にもれず、銀波荘でも団体客が消滅するだけでなく、2ヶ月にもわたる休業を強いられたことから、これを契機に団体向けから個人向けへのシフトを本格的に前倒しすることとなりました。
具体的には客室数を大幅に絞り込むとともに、サービスの向上による高付加価値化を積極的に遂行。現在は全47室の宿へと変貌を遂げ、高単価の個人客を主要ターゲットとした新たな経営戦略を推進しています。
また多くの宿がこうした高付加価値化に向かう中、銀波荘では旅館ながらも最上階にプレミアムラウンジを持つという施設の優位性を生かして、「プレミアムラウンジ(フリードリンク・フード)つきプラン」などを提供。
施設と商品プランを効果的に組み合わせることで、他旅館との大きな差別化ポイントとしています。
これらのさまざまな戦略が奏功し、現在の予約チャネルとして大きな割合を占めるOTA経由のお客様に対しても想定した客単価を落とすことなく、「客数を絞り込みながらも売上を減少させない」という経営目標を達成しています。
しかしその一方で、地域に根づいた長い歴史を持つがゆえに、かつての団体客向けの宿のイメージが今も残っているのも事実。
こうしたイメージを持つ古くからのファンの方々に向けて、刷新した新たな銀波荘の姿をどのように発信し、また浸透させていくか。
この点を次なる課題のひとつに掲げています。
2.そんな中で、今年新規オープンした「温泉喫茶 si no no me」が大きな話題に!
個人客向け旅館へのシフトを最もシンボリックに物語るのが、敷地内に新たにオープンした「温泉喫茶 si no no me」
団体客が減少傾向にある中で、コロナによってエネルギー関連の費用が高騰したことを受けて、2ヶ所あった大浴場のうち古くから利用されてきた浴場をクローズして、新たに生まれたのがこの施設です。
高付加価値補助金を活用して建設されたこのカフェは、以前から喫茶店を併設したいという経営陣の想いを叶えたもの。
眼前に大海原を一望できるこの場所を、誰もが気軽に立ち寄れるカフェという形態で蘇らせたのには「西浦温泉の素晴らしさをもっと知ってほしい」という経営陣の想いもありました。
これまでは宿泊する人以外に立ち寄りの観光客が少なかった蒲郡・西浦エリア。
しかしコロナ禍で「密回避」がキーワードになった頃、そんな西浦のビーチに訪れる人が一気に増加し、この地を初めて訪れた多くの人々が口々に「いい場所だ!」と言う姿を目の当たりにしたことで、「この素晴らしい景観をそのまま放置したらもったいない。ぜひ日帰りでも来てくれるようにしたい」という想いをより強くしたのだそうです。
「温泉喫茶 si no no me」では温泉に関わる配管などは旧施設の内風呂で使用していた設備・施設を再活用していますが、長期間使用していなかった設備機器がきちんと稼働できるか、また工期がスケジュール通り進行するかなど、着手当時は正直なところ若干の不安もあったそうです。
また施工に関しては地元の建設会社が担当し、デザインは東京のデザイン専門チームが企画開発を行いました。
斬新な存在感をデザインで表現したいとの想いもあったことから、従来の建設では用いられなかった企図や手法も多かったため、実際の施工にあたっては数々の苦労もあったとのことですが、そんな経過を経たおかげで、当初想定していたイメージ以上に満足のいく仕上がりとなりました。
全体が淡いピンク色のトーンで仕上がったくつろぎの空間は、お客様からの反応も上々。
特に女性客からの高い評価を得られているとのことです。
そしてこの「温泉喫茶 si no no me」のオープン告知に関して特徴的なのが、「銀波荘」という名前をあえて出さなかったこと。
「海の前の素敵なカフェ」としてだけ打ち出して、その魅力を感じて立ち寄ったお客様が、自然に銀波荘の敷地内にあることに気づいてくれるというストーリーを描いたのです。
銀波荘ではこの温泉喫茶に加えて、ワーケーションやミーティングなど多用途に活用できるスペースや、350冊の選書を揃えたミニライブラリーなども備え、これまで以上に個々の幅広いニーズにマッチした多様なくつろぎ、多彩な過ごし方を提案できる宿としてのスタンスを打ち出しています。
宿が持つ既存の施設と空間を「今」にマッチングさせられるこの「温泉喫茶」というスタイル。
日本旅館の新たな事業展開の一例として、業界に大きなヒントを与えるものだと言えそうです。
3.蒲郡・西浦エリアの素晴らしさを、もっと多くの人へ
昨今、国内の主要観光地においてオーバーツーリズムが社会的な話題として取り上げられるほどに、日本のインバウンド状勢は隆盛の一途を辿ってます。
しかし地域によっては、未だこのインバウンドの恩恵をあまり受けていない地域が多々あることも確かです。
銀波荘の位置する蒲郡・西浦地域もそんなエリアの一つ。
地元でも、もちろんインバウンド誘客に向けた様々な取り組みを行ってはいるものの、その成果が出るにはまだ時間がかかりそうです。
そんな中、地域の多くの人々が自発的に「地域全体を盛り上げよう!」という声を上げ始めています。
地域の宿泊産業を牽引する宿のひとつでもある銀波荘でも、従来のままの「1泊2食」の宿泊スタイルでこれからの観光需要に応えられるのか?日帰り客も楽しめるような多彩な要素を増やしたほうがいいのでは?とさまざまな問いかけを行っています。
地域振興を図る上で特に大きな要素となるのが、エリア全体を俯瞰した上での観光要素・魅力の整備。
特に西浦地区にマイカーや交通機関で訪れる観光客を、どのようにしてエリア全体に周遊してもらうかは喫緊の課題です。
蒲郡・西浦エリアでは、近年、若年層をターゲットとした目新しいショップなど、新たな観光施設が続々と誕生してきています。
さらに、この地に移住してきた方々などは特に地域振興に対する意欲が高く、実行力の面でも大きな期待が寄せられるパワーを持っています。
また例えば、蒲郡では例年5月頃に「森、道、市場」という一大イベントが開催されていますが、このイベントは例年数万人もの集客を誇り、蒲郡の知名度向上にすでに大きな役割を果たしています。
蒲郡・西浦エリアを観光する「きっかけづくり」をテーマにおけば、この地域内にこうした明るい要素はまだまだたくさん見つかるはず。
旅館単体ではできることも限られることから、銀波荘では、同じ志を持つ人々との積極的なネットワーク形成や、他業種との連携、さらには行政とのリンクも重視しながら「この地ならではの魅力形成」に向けた働きかけを続けています。
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