
地元を観光地化!成功・失敗の分かれ目とは?具体的な方法や例を紹介
「自分の街に観光地はない、活かせる観光資源はない」
「多少の観光資源はあるが、インバウンド観光客を呼べるほどの魅力はない」
上記のように、諦めていませんか。
地域の魅力を最大限に引き出し、観光地として注目を集めることは、地域活性化の重要な戦略です。全国各地で成功を収めている事例から、効果的な方法や具体的なアプローチを学べます。
本記事では、地域の特色を活かした観光地化の手法や、実際に成功を収めた取り組みを紹介します。地域の行政関係者の方、観光協会職員や民間事業者の方は必見です。
自然、文化、歴史、そして地域の人々の力を結集させ、魅力的な観光地を創出する方法をご覧ください。
① 観光地化とは
観光地化。それは、地域の魅力を引き出し、多くの人を呼び込む取り組みです。地域の活性化や経済効果が期待できます。観光地化には地域資源を活かし、インフラを整備。そして、効果的なプロモーションを展開します。
例えば、「古い町並みを保存し、観光客向けの施設をつくる」「地元の名物料理をPRする」などが挙げられます。
一方で、課題も。オーバーツーリズムや地域文化の変容にも注意が必要です。バランスを取りながら、持続可能な観光地づくりを目指す。それが、観光地化の本質です。
② 観光地化で失敗するケース
観光地化。夢の切り札のはずが、思わぬ落とし穴に陥ることがあります。
観光地化には綿密な計画と地域との調和が不可欠。持続可能な観光地づくりには、地域の本質的な魅力を理解し、慎重に進めることが重要です。
ここでは、複数の理由・ケースを紹介します。
1・過剰投資による失敗|青森市
青森市の大型商業施設「アウガ」は、約185億円を投じて開業しましたが、初年度の売上は目標の半分以下にとどまりました。過大な投資が地域に重荷となった典型例です。
2001年に約185億円を投じて開業しましたが、初年度の売上は計画を大きく下回る約23億円にとどまり、約2億5,000万円の最終赤字を計上。その後も経営不振が続き、2015年度には売上高が約14億円まで減少し、約27億円の最終赤字を計上するに至りました。
主な失敗要因
● ノウハウ不足:行政による不慣れな商業施設運営
● 不適切な経営:第三セクターによる補助金頼みの不明朗な経営
● 需要予測の誤り:人口減少や郊外店との競争を見誤り
第三セクター方式とは、行政や民間企業とは別で団体を設定して運営を行う手法です。行政と民間の良いとこどりの運営形態といわれていますが、不正の温床になってしまうケースも多くあります。
結果として、2017年に商業テナントを閉鎖し、青森市は約17億円の債権放棄を行いました。この事例は、地域の実情を十分に考慮せずに大規模投資を行うことの危険性を示しています。
出典:青森県本部/一般社団法人青森県地方自治研究センター・理事・青森市議会議員 藤田誠
2・地域との不調和|山梨県南アルプス市
山梨県南アルプス市の観光農園は、開業からわずか3か月で経営危機に陥りました。地域のニーズや特性を十分に考慮せずに事業を展開したことが原因と考えられます。
主な失敗要因
● 需要予測の誤り:ありふれた内容のため、客足が伸びず
● 経営計画の甘さ:開業当初から赤字が続き、3カ月で経営破綻の危機に直面
● 行政主導の限界:第三セクター方式による運営で、ビジネスノウハウの不足が露呈
● 地域との連携不足:地元生産者との連携が不十分
2015年6月に約8億円を投じてオープンしましたが、結果、わずか7か月後の2016年1月に営業を断念しました。
後日談ですが、同市は2024年にコストコの誘致に成功し、地域活性化の新たな取り組みを開始しています。
出典:東洋経済オンライン
3・オーバーツーリズムの問題|京都市
京都市のオーバーツーリズムは、深刻な都市問題として顕在化しています。特に春の桜シーズンと秋の紅葉時期には、観光客が急激に増加し、市民生活に大きな影響を及ぼしています。
たとえば祇園や清水寺周辺では、観光客の急増により、地元住民の日常生活が著しく阻害されています。バスや電車の混雑、狭い路地での歩行困難、騒音問題、そして私有地への無断侵入など、さまざまな課題が山積み。
また、伝統文化の尊厳も脅かされています。舞妓さんや芸妓さんへの無断撮影、マナーを無視した行動が後を絶ちません。地域の文化的価値が、観光客の無秩序な行動によって損なわれつつあります。

京都市は、これらの問題に積極的な対策を講じています。
● 観光ルートの分散化
● 特定エリアへの観光客の集中緩和
● 観光税の導入検討
「ただ観光地化する」ではなく、集客の仕組みができた後も、持続可能な観光都市を目指す取り組みが重要です。
③ 観光地化を成功させる方法・事例
観光地化を成功させるには、地域の特色を活かしながら、戦略的なアプローチが必要です。以下に、成功のための重要なポイントをご紹介します。
1・地域資源の活用と魅力の創出
地域固有の資源を最大限に活用することが重要です。
● 富良野市:地域の食文化を活かしたフラノマルシェを整備
● 鳥取県境港市:地元出身の漫画家・水木しげる氏の作品をモチーフにした「水木しげるロード」を整備
食文化やサブカルチャーの聖地化は、非常に有効な手段の一つです。
銀山温泉(山形県尾花沢市)の事例は興味深い内容です。「漫画・アニメで世界的に有名な鬼滅の刃に登場する『刀鍛冶(かたなかじ)の里』の、モデル」というファンの考察から、観光地化しました。

今では、人里離れた旅館に海外観光客が殺到しています。
ロケ地・作者生誕の地など。調べてみると、意外にもファンの間で有名なものもあります。
2・体験型観光の提供
単なる見学だけでなく、体験を通じて地域の魅力を感じてもらうことが効果的です。
● 群馬県甘楽町:空き家をリノベーションして滞在施設とし、農業や生活体験型観光
● 山形県長井市:伝統の獅子舞体験
● 石川県金沢市:能楽衣装の体験
これにより、観光客数の増加だけでなく、移住・定住者の増加にもつながっています。

3・環境に配慮した持続可能な観光
オーバーツーリズムのみならず、自然環境にも配慮している事例です。
● 富山県黒部市:電気バスの導入やエコを意識した温泉施設の整備
● 沖縄県八重山郡:星野リゾートが運営する西表島ホテルでは、90%がジャングルという自然環境を活かしたエコツーリズムを提供。
排気ガスによる汚染問題を解決しつつ、観光客の増加にも成功しています。
特にヨーロッパでは、環境配慮の取り組みなどが顕著。世界基準でのエコツーリズムを提供することが重要です。
4・地域全体での取り組み
観光地化の成功には、地域全体での協力が不可欠です。
● 大分県別府市:温泉プロジェクトとして、市内の温泉を巡る「別府八湯温泉道」を整備
● 岐阜県高山市:官民一体となって地域の伝統文化や自然を体験できるツアー
特に高山市での取り組み「里山資本主義」は参考になるでしょう。
里山資本主義とは、藻谷浩介が提唱した概念で、身近な自然環境である里山を活用し、水や食料、燃料などを持続的に得ることを目指す思想です。
この考え方は、経済成長に依存せず地域内で資源循環を重視することにより、安心安全な生活基盤を構築することを目的としています。
5・空き家・遊休施設の活用
奈良県明日香村では、未活用の空き家を宿泊施設としてリノベーションし、観光客の受け入れ体制を整えました。これにより、地域の課題解決と観光振興を同時に達成しています。
観光地化の成功には、地域の特色を活かしつつ、環境への配慮や地域全体での取り組みが重要です。また、体験型観光の提供や遊休施設の活用など、新しい視点での取り組みも効果的。これらの方法を組み合わせることで、持続可能な観光地づくりが可能です。

④ まとめ
観光地化を成功させるためには、地域が持つ資源や魅力を最大限に活用することが重要です。特に、ゴールデンルートを除くインバウンド観光地の多くは、観光客自身が見つけた資源やアクティビティによって成り立っています。
どんな街でも、古くからの風習やお祭り、伝統食など、資源化できるものは存在します。これらを活かすことで、インバウンド観光客を誘致できるでしょう。
さらに、国内観光客にも目を向けることで、自分たちの街を見直し、経済活性化や活気を創出できます。オーツーリズムへの配慮もうまく行えば、住民の幸せにもつながります。
先日JNTO、観光庁から発表された調査によると、2024年1年間の訪日外国人旅行者数は3686万3,686万9,900人(推計値)で前年比1,000万以上の増加、また、訪日外国人旅行消費額も前年比53.4%増の8兆1,395億円で、過去最高となりました。
国は観光立国を目指し、2030年の目標である訪日客数6000万人、旅行消費額15兆円の達成も視野に入れています。
そのため、さまざまな補助事業や交付金が用意されています。これらを賢く活用することは、自分の街を元気にするための有効な手段です。
地域の事業者や行政職員が自分たちで積極的に動くことで、街が持つ隠れた魅力やパワーを発見でき、その蓄積が必ず財産になります。このようにして地域全体で観光振興に取り組むことが、持続可能な観光地づくりにつながるのではないでしょうか。
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