伊勢志摩から、「ナンバーワン&オンリーワン」の体験を発信したい

伊勢志摩から、「ナンバーワン&オンリーワン」の体験を発信したい

 

Vol.16 有限会社幸洋荘 代表取締役 上村 領佑さん

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大学卒業後、証券会社および人材関連企業を経て、家業である幸洋荘を継ぎ、現代の個人旅行マーケットを見据えた高質な露天風呂付きの宿「季さら別邸 刻(とき)」の企画開発を主導。

その後も新たなグランピングヴィラの開発や、ECサイトの運営などの多彩な企画展開を通じて、これからの新たな旅館像を積極的に打ち出している若手経営者の上村さんにお話をうかがいました。

 

旅館以外の仕事で培った経験はどのように役立っていますか

旅館以外の企業で学んだことはとても多いですが、特に役立っているのは仕事の進め方や数字の読み方、取引先を始めとする人々との関係づくりなどですね。

また、こうした個々の要素以外に、業界外の企業の姿そのものを体感していることも大きいと思います。こうした経験を通じて得たもの、中でも旅館の仕事に有用に生かせる部分は、できるかぎり自社の社員にも伝えていきたいと思っています。

正直なところ自分としては、特に目の付け所が変わっているとは思っていないのですが、ひとつだけ言えることとしては、観光業や旅館特有のやり方や慣習を客観的に捉えられるという点が挙げられます。

旅館ならではの手法や慣習が伝統として良い効果につながっているのならいいのですが、今の観光業・旅館業にとっては不具合に働いていることも多々あるんですね。こうした点に気づき、また改善していくことは今後の旅館の繁栄のためにも重要なことだと思っています。

 

人材経営の観点でもやはり改善ポイントは多いのでしょうか

はい。特に人事関係の仕事を経験したことで、旅館の労務や採用を俯瞰して見ることができるのは大きいですね。

ご宿泊するお客様に長時間のサービスを提供する旅館には、一般企業のように朝出社して夕方退勤するというシフトではなく、中抜けという独自の勤務形態があります。

しかし人手不足や高齢化が進む中で、旅館が新しい人材を確保するには他業種との人材獲得競争が避けては通れないのですが、こういった競合環境の中では旅館特有の勤務シフトは大きな弱点になってしまっています。

これが改善されて他業種の企業と同じ採用ステージに上がることができれば、採用が今よりもうまく行き、それに伴ってさまざまな業務もスムーズに回り出すという好ループが形成できるはずです。

そのためにも業務そのものの考え方を大きく変え、これまでのようにひとつの業務のスペシャリストを育成するだけではなく、マルチタスクができる人材を育成して、通し作業へとシフトしていくなどの工夫が必要になります。

現在私どもではまさにこうした工夫を現場に落とし込みながら、勤務時間や休暇など、労務面の改革を進めているところです。

 

手がけられた「季さら別邸・刻」がめざすものは

2019年にオープンした「季さら別邸 刻」は、上質なくつろぎの時をテーマに、ゆとりある空間に10室のみの露天風呂付き高質客室を備えた宿で、おかげさまでお客様からも高い評価をいただき順調に稼働させていただいています。

これまでの旅館とはイメージを異にする滞在時間の過ごし方や料理などを提供したいという想いから、開発企画コンセプトからサービスやオペレーションなどのコーディネイトまで、立ち上げには全面的に私の考えを盛り込んだものとなっています。

とは言え旅館としては何らかの形で、伊勢志摩という地域性を表現する必要があります。そこで地元のクリエイターと組んで制作したオリジナル作品をインテリアとして配し、「季さら別邸 刻」ならではの独自の地域性を創り上げました。

これまで旅館という世界にどっぷりと浸かっていなかったクリエイターが描き出す斬新でユニークな世界観によって、宿という空間を舞台に私が思い浮かべていたイメージをうまく映し出すことができ、とても面白い展開ができたのではないかと確かな手応えを感じています。

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刻のオリジナルコーヒー

 

伊勢志摩という地域と、その活性化に対する思いは?

地域活性化というのはとても大きな課題で、取り組み方にも幅広いアプローチ方法があります。

例えば遠地から来訪される観光客によって地域への人口流入を支え、また活発な交流を生み出すなど多方面への波及効果がある宿泊業は、いわばその存在そのものが地域経済の柱となっていますから、それぞれの旅館がしっかりと運営されていること自体がすでに地域活性化に大きく貢献しているとも言えます。

私自身も旅館の経営者として自らの施設の運営をきちんと行うことをまず前提として考えています。

これに加えて、一個人の立場としても地域活性化のため若手経営者の集まりなどに参加し、地域振興の課題の掘り下げや活性化のための取り組み、イベントなどの計画立案なども行っています。

 

異業種交流も盛んに行われていますね

旅館経営者には同じ立場にいる仲間だからこそ共有できる悩みや課題などもありますから、同業の方々との交流や情報交換などはもちろん積極的に行っていますし、こうした交流の中で先輩方の豊富な経験やアドバイスから数多くのことを学ばせてもらっています。

ただそれだけではなく、いわば車輪の両軸のように、旅館について客観的に見ることのできる外側の視点も重要だと考えています。

先にもふれたように他業種との比較視点を持つことは、これからの旅館を考える上での大きなポイントだと思うんです。そんな考えから異業種の方々との接点や交流を持つことには、特に意識的に取り組んでいます。

それぞれの専門分野を持つ方は、お一人おひとりが各分野での優れた知見を持っていますから、こうしたノウハウや知識を借りることはとても重要ですね。

 

新たにオープンしたグランピングヴィラはどんな施設ですか

新たに立ち上げた「季さら-グランピングヴィラ」は、非接触でのサービスを重視していることが大きな特徴です。

これはコロナに対する配慮や労務面の改善という面ももちろんありますが、大きくは時代の潮流を意識した結果です。今のお客様は従来のように必要以上に過剰なサービスを求めるのではなく、「自分がゆっくりできること」を第一に希求するようになっています。

こうしたニーズに合わせて、それぞれのお客様が思い思いに楽しめるよう、フルサービスでない自由な宿泊時間とそのための「場」を提供することで、いわば別荘感覚で使っていただける施設としています。

また現代の企業の責任として、SDGsも強く意識しています。県内産の木を使ったCLT木材(集成材)をフロアやテーブルに使用しているほか、竹などの自然素材も多用。

さらに羽毛布団もリサイクルによるグリーンダウンを使用したり、ユニークなところでは海洋プラスチックをアーティスティックに活用したランプシェードを導入するなど、環境保全に十全の配慮を施したサステナブルな施設でありたいと願っています。

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客室では地元の木材を使用した家具を配置

 

「ナンバーワンかつオンリーワン」の体験を提供

今後めざしていきたいのは、既存の施設をさらにブラッシュアップし、グループとしての力を盤石なものにしていくこと。そしてグループを支える新たな柱として、次の宿泊施設を立ち上げたいという考えもあります。

そのためにはお客様がより快適に楽しんでいただけるサービスの拡充と、それぞれのクオリティアップを進めていくことが課題です。

そんな考えに基づいて当施設ならではの自慢の料理をさらに磨き上げるために、飲食専門店の開発にも取り組んでいて、すでに滋賀県にオープン済みの隠れ家カフェダイニング「季さら cafe&Bar both」に続く、新たな飲食店の立ち上げも現在構想中です。

具体的には「食」に特化した施設できめ細かなサービスのクオリティを向上させるとともに、客前で食事を作る体験を積むことで料理スタッフが貴重な経験を積むことが主な目的です。

ここで得たノウハウを今度は宿泊施設にフィードバックすることで、従来私どもが提供していた「その時その場でしか味わえないもの」を、さらにワンランク上の品質で提供していくことができると考えています。

いずれにしても、ビジネスでは「チャンスを逃さない」ことが何よりも大事。

お客様に幅広いサービスを通して「ナンバーワンかつオンリーワン」の体験をおとどけするとともに、その一つひとつの取り組みがさらに多方面に影響を及ぼしていくような、波及効果の高い施策を展開していきたいと考えています。

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■プロフィール 
有限会社幸洋荘 代表取締役 上村 領佑(うえむら りょうすけ)
2018年に有限会社幸洋荘に入社し、高質な露天風呂付きの宿「季さら別邸 刻(とき)」の企画開発を主導。
2020年に代表取締役に就任し、外部経験を活かしたマクロな視点で旅館経営を捉えて、今の時代にフィットする企業像や地域振興策の確立に精力的に取り組んでいる。

▶季さらグループ公式サイト


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