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ユニークな取り組みで新たな地域価値を創り、未来を拓く-オープン以来好調を続ける道の駅たがみの視点とは?-

Vol.26 道の駅たがみ・駅長 馬場大輔さん

新潟市の南東に位置し、のどかな田園風景が広がる新潟県南蒲原郡田上町。
人口1万人あまりのこの小さなまちに2020年10月に誕生したのが「道の駅たがみ」です。

「地域の価値を創り、その誇りを未来へ継承する」ことを願って、単なる観光スポットではなく地域価値向上のための新たな舞台として位置づけたこの道の駅では、これまでに田上町特産の竹を活用した「竹あかり~たがみバンブーブー~」などを始めとするユニークで多彩な交流イベントの数々を積極的に実施し、コロナ禍のさなかにありながらオープン後わずか3年で年間22万人を集客するまでの急成長を遂げています。

地域交流のハブ施設として田上町の活性化に重要な役割を果たしている道の駅たがみが抱く想いと、めざす未来像について、駅長の馬場大輔さんにお話をお聞きしました。



1.オープン以来、順調に業績を伸ばす「道の駅たがみ」の取り組み


令和2年のオープン以降、おかげさまで右肩上がりの状況が続いていますが、令和5年はこれがさらに伸びて、入り込み数は年間で25万人を超え、前年比1割以上のアップとなる見込みです。

田上町は30平方キロほどの面積しかない小さな町ですが、この道の駅は信越本線沿いの国道403号という新潟や燕三条につながるメイン道路沿いにあるため、町そのものへの流入が増えることで休憩客や立ち寄り客が増えるという構造を持っています。

それが私たちがこれまで盛んに地域イベントを開催してきた大きな背景のひとつとなっています。

たがみバンブーブー2023

実際に2022年、2023年と「竹あかり~たがみバンブーブー~」という町内広域での回遊イベントを実施し、おかげさまでこれが大きな話題となって町の観光客の入り込み増加にもつながりましたが、これが初めてのイベント企画というわけではなく、それ以前から今に至るまで「がんばるネギまつり」や「アロハアロハたがみ」など、定期的に数々のイベントを開催してきました。

令和5年の実績は、地域の方々の協力で実施してきたこうした企画の積み重ねがあってのものだと思っています。

たがみバンブーブー2023の会場風景


2.小さな施設ならではの勝ち筋を見出すことが、ユニークな企画のポイント


先ほど話したように、道の駅たがみの成長は田上町という地域の振興と切っても切れない関係にあります。

ですから私たちは道の駅そのものの売上を作ることではなく、地域価値を創ることを最大の目標として据え、町の活性化の度合いが結果として道の駅の売上に反映されるのだという考えを、スタッフ全員の共通意識として浸透させています。

先の「アロハアロハたがみ」を例に挙げると、フラダンスの愛好家というのは全国にも新潟にも想像以上に多く存在します。しかし一般的にはそれがあまり知られていない。
そこでフラをテーマにしたイベントを開催すれば、ダンスの参加者や身内の方はもちろん、ファンが広いエリアから集まってくれるのではないか、という点に可能性を見出したわけです。

アロハアロハたがみ告知(インスタグラムより引用

集客の期待はあるものの、他ではあまりイベントなどが開催されていないニッチな催しにこそ勝ち筋を見出すという方法です。
誰かがやりそうだけどやらないこと。もしくは見落としてしまっていること。

そんなところにこそ、私たちのような小さな施設の生きる道があるのではないかと思っていますし、ビジネス的にもそうした抜け目を見つける視点というのは重要だと思っています。

そもそも私が道の駅の駅長公募に応募したのも「自分が楽しいと感じられる仕事をしたい」というのが大きな理由でしたから、つねに純粋な疑問や興味を抱きながら、フラットにものを見て、地域のために楽しんで仕事ができるようにと心がけています。


3.これまでの方針をふまえた、令和6年の活動展開


道の駅たがみはオープンから3年を経て、ある程度の客数や評価をいただけていますが、それはあくまでも数字という結果にすぎません。

令和6年についても、最大の目的である「まちのファンをつくる・まちをつくる若い人をつくる」ことを目指す方針に変わりはありませんし、これまでと同様にこの考えに沿って具体的な取り組みを展開していけば、結果はついてくるものだと思っています。

梅収穫&梅シロップ作り体験会(インスタグラムより引用

そんな中での新たなトピックの一つとして挙げられるのがオリジナルの梅干し作りです。
去年初めて自前の加工場を持つことができ、JAや町からの協力を得て作ったこの梅干しの提供先を選定している最中で、その他にも地元名産のたけのこでのメンマ作りなども行っています。

こうした活動を通して地域と共に新たな価値を創造し、多くの方に広めていくことが今年の目標です。


『たけのこ掘り』を学ぶ(インスタグラムより引用

また「竹あかり~たがみバンブーブー~」が単発のイベントで終わらず、初年度に続いて2度目を好評のうちに開催できたこともとても大きな成果でした。田上町の未来を考える上で「継続性」というのは最も重要な要素のひとつだと思っているからです。

もちろんこれは催事の開催だけでなく、地元の方々の協力など「人」の問題についても同じです。
これまでの催事や取り組みでは、初回には協力してくれたけど、2度目には参加を見送られた方もいます。また当然のことながら私たちと異なる考えを持つ方や、地域おこしそのものに消極的な方もいらっしゃいます。

地元産の竹の子でメンマづくり

私たちとしては、こうしたあらゆる方々の考えや気持ちを尊重しながら、具体的な取り組みをどう次につなげていけるかをつねに念頭に置いていますが、現状では「ブレることのない明確な目的を大事にすること」がその答えなのではないかと思っています。

道の駅たがみは15名のスタッフで立ち上げてから、これまでの3年間でスタッフが一人も辞めていません。これは道の駅たがみの存在意義を皆が共有し、大切にしてきてくれたことの表れだと思っています。

しかしオープンから3年を経た今、スタッフそれぞれの生活も変わってきていますし、人によっては次のステージを目指す人もいる、そういうタイミングに差し掛かってきています。
志を同じくした当初の仲間が卒業するシーンはいつか必ず訪れるものですが、それをマイナスではなくプラスに捉え、成長のためのステップとして活かせるように心がけています。


4.地域に息づく「想い」を表現できる場として


田上町に暮らす皆さんは、ふるさとに対する深い愛着を持っています。
都市としての規模が大きいわけでも、特に利便性が高いわけでもないのですが、すぐ隣の新潟市ではなくここ田上町で暮らすことを選び、それぞれの方がそれぞれのやり方で、地に足のついた生き方を見出しています。

道の駅たがみでは、そんな地域の皆さんの「田上町に寄せる想い」を表現できる場となれるよう、共感してくれる方々と気持ちをひとつにしながら小さな取り組みを通して地道に一歩ずつ歩んできました。

そしてそんな地域の方々の想いを大切にするだけでなく、さらに次の世代にも繋げていこうというのも、私たちの掲げるテーマ。
若い世代へのアプローチとして今もっとも重視しているのが、小・中・高校生とのつながりを強化することです。

地元の高校生に取組を紹介(インスタグラムより引用

町内の学校をこまめに訪問して、私たちの様々な取り組みが田上町の未来にとってどういう意味を持つのかをしっかりを伝え、その中から彼らが何かを感じ、またふるさとへの興味や意識を高めてほしいと心から願っています。

そんな取り組みを行ってきた結果、最近では地元の小学生が「おにぎりパーティをするので、ぜひ来てください!」と、私たちに向けて自主的なプレゼンをしてくれる機会なども生まれてきています。

もちろん喜んで参加させてもらったのですが、小学生とは思えないほどしっかりとしたプレゼンで、しかもビジネス発想がしっかりと根付いていることに深く感銘を受けました。

小学生による学習発表会とおにぎりパーティ

また中学生とも約半年にわたって私たちのメンバーが伴走し、地域課題の抽出や将来に向けた施策などをまとめる取り組みを行っています。小中学生と一緒に活動することと通して、自分たちの想いが若い世代に確かに伝わり、未来へと繋がっているんだなという手応えを日々感じさせてもらっています。

彼ら若い世代は、実際に自分の目で見ることで自然に影響を受けますから、こうして私たちが渡した無形のバトンを、ぜひ彼らが前向きに受け取ってくれるよう期待しています。


地域課題と町の将来をテーマに、中学生と一緒に学習に取り組む


田上町の未来を考えると、若い世代が町づくりに本気で取り組むことは重要なポイント。そのためにも今私が担っている役割をできるだけ早く次の世代に受け渡したいというのが偽らざる本心です。

例えば道の駅たがみに、20代の若い駅長が誕生したとしたら、それは全国的にもセンセーショナルな話題になるでしょうし、同時に地域の若い人々の大きなモチベーションアップにもつながるでしょう。 

この町には観光以外の業務に携わる人でも観光や地域づくりへの意欲やスキルが高いという優れた特性があります。
今後もそんな町のエネルギーを活かせるよう、もっと深くもっと強く地域の人々とつながって、田上町ならではの「シティプライド」を醸成していければと思っています。

関連リンク

道の駅たがみ公式サイト
道の駅たがみ公式インスタグラム


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