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放置竹林を活用した交流人口拡大プロジェクト『たがみバンブーブー2022』を開催

新潟県田上町では、地域における長年の課題となっていた放置竹林や廃棄竹の問題を解消するだけでなく、積極的に活用することによって、新たな観光として創造するプロジェクト「たがみバンブーブー」を2022年に実施しました。

田上町商工会青年部および道の駅たがみ協同組合の主導により、多くの町民の自主的な参加を促して地域全体を巻き込んだこの町ぐるみでの一大プロジェクト。

地域の抱える課題を逆手に取って、高付加価値商品へと磨きあげ、町民のシビックプライドを醸成するとともに、交流人口の拡大に貢献する事業となりました。



1.『たがみバンブーブー2022』の企画背景と、その狙いとは

田上町では、地域周辺に広がる竹林が未整備のまま放置されていることによって景観の悪化や観光地としての魅力の低下、また廃棄竹の問題などが、地域全体の課題となっていました。

そんな竹林を厄介者としてではなく、新たな地元の観光資源として蘇らせようとし立ち上げたのがこの取り組みです。

「バンブーアート」「バンブーダイニング」の2大イベントをメインとして、町ぐるみで展開されたこのプロジェクトは、観光庁「地域独自の観光資源を活用した地域の稼げる看板商品の創出事業」補助金を活用したもので、総事業費700万円のうち600万円を国からの補助金によって充当しました。

その狙いは地域課題の竹林を整備して新たな観光商品を創造することに留まらず、できる限り多くの町民にこの地域課題を広く認識してもらうこと、さらには町民自らがその解決に乗り出すことによって地域に対する意識を高め、シビックプライドを自然に醸成してもらうことにありました。

こうして実施されたプロジェクトは、田上産のこだわり地域食材と竹を活用したカトラリーが採用され、地域の郷土芸能をアートに昇華した演出と共に田上町ならではのオリジナルディナーが提供された「バンブーダイニング」を皮切りに、随所に「地域」と「竹」をフィーチャーした数々の演出が施されました。


2.実施イベント①:町民参加による竹林整備とワークショップの開催

町民自らが「竹」の問題を身近に感じるとともに、その解決に貢献することでシビックプライドを醸成しようと、多くの町民への参加が促されました。

特に地元の小学校や中学校を始め、近隣の大学なども含めて次代を担う若い世代に積極的に関わってもらえるよう、出張ワークショップなども実施。
期間を通して延べ100人を超える幅広い世代の方々の参加を得ることができました。

<実施概要>
【第1回 座学・事例紹介/ワークショップ】
●実施日:2022年8月6日(土)
●場所:田上町商工会議所 2F会議室
●参加人数:約50名程
●内容:主要関係者との事業説明とワークショップの実施

【みんなで作ろう!竹林整備&ワークショップ】
●実施日:2022年9月10日(土)・11日(日)
●場所:田上町商工会・バンブーブー竹林
●参加人数:地元の住民・新潟経営大学学生・加茂農林高校生・3歳~81歳までの合計76名参加
●内容:竹の節抜き、穴あけ、竹まりづくり、竹林整備
●募集:地元情報誌「絆」への募集チラシの挟み込み配布、および公式Instagramによる参加募集


3.実施イベント②:竹あかりインスタレーション「バンブーアート」

町民の力で、「竹」を活用した新たな看板商品を創り上げることを目的に、「みんなで作ったバンブーアート」のテーマにて実施したイベントです。

日本発・世界初の竹あかり総合プロデュース集団『CHIKAKEN』のプロデュースのもと、『たがみバンブーブー実行委員会』がコラボレート

竹林から竹材の切りだしから切断、穴開け、設置に至るまで、参加者全員が力を合わせて制作したバンブーアートを、田上町民参加型の新たな商品としました。

制作されたバンブーアートの数々は、参加者によって整備された放置竹林の他、道の駅たがみ、湯田上温泉4館にて無料で展示され、多くの作品を鑑賞できるこれらのアート会場は多くの観光客や町民で賑わいました。

また有料会場として設定された「椿寿荘」では、田上の豪農「田巻家」の歴史を今に伝える由緒ある施設を舞台に、ちかけんプロダクツのバンブーアートに加えて、新潟市在住のアートディレクター小出真吾氏による椿寿荘の庭園の木々をモチーフにした幾何学模様のバンブーアート作品も特別展示され、来場者は身近な竹を素材としたハイクオリティなアートの美しさと、その可能性に魅入られていました。

無料会場・有料会場を通じて、期間内のこのイベントの総来場者数は24,111名を数え、その売上も200万円余りに上りました。

<実施概要>
●実施日:2022年10月1日(土)~10月30日(日)
●内容:ワークショップで作った竹あかりを活用。田上町内7カ所に設置
●設置場所:
【無料会場】道の駅たがみ・湯田上温泉4旅館(若竹・小柳・末廣館・初音)・竹林整備した竹林 
【有料会場】椿寿荘 入館料込1,000円(町民は500円に割引)
※周遊促進のための取り組みとして、デジタルスタンプラリーも実施
●期間中の総来場者数:24,111名


4.実施イベント③:田上を食す、竹あかり夕食会「バンブーダイニング」

地域と竹林を結んだ新たな観光商品の開発の一環として、「たがみバンブーブー竹林で田上の特産を食す、1日限定のバンブーダイニング」を開催。

地元湯田上温泉の旅館4軒と地元の飲食店「山Café一歩」の料理長によって、地産食材の料理とお酒のペアリングを参加者に提供しました。

「オール田上」のコラボレーションによるスペシャル料理とドリンクの提供は、今後の新たな観光商品として十分に活用できるとの手応えを感じさせるものでした。

<実施概要>
●実施日:2022年10月15日(土) 17:00~18:30
●場所:たがみバンブーブー竹林内
●料金:お1人様15,000 円(税込)
●参加人数:ペア6 組・12 名
●内容:竹林内での田上産食材を使用した一日限定の竹林のレストランの実施
湯田上温泉4旅館によるレシピ作成、女将による日本酒ペアリング
・スペシャルディナー&ドリンクの提供
・バンブーアート有料会場「椿寿荘」鑑賞チケットプレゼント(2枚)
・護摩堂太鼓田上甚句保存会による演奏


5.確かな手応えとともに、さらなる拡大に向けて

一連のイベント開催にあたっては新聞を始めとする各種メディアでの告知とともに、町内の関連諸団体への参加の呼びかけによる周知が行われました。

今回が初開催のこの取り組み。イベント名称やその目的が予め認知されていなかったため、情報発信の当初こそ一般からの問い合わせや申込みは少なかったものの、町民を始め幅広い方への認知が浸透するにつれて反応も徐々に拡大し、町外からのワークショップ参加などへの申込みも目立つようになりました。

また期間中の多数のイベントの中でも、特に町内の小中学生を対象とした若者向けのワークショップが、ひときわ高い人気を誇ったことも印象的でした。

さらに参加者の中には、地域の放置竹林を地元民の手で整備再生するというこの事業目的に共感し、すぐに「たけのこ団」の加入を申し込む方も見られるなど、参加した方々の中に、事業の目的と理念がしっかりと浸透していることを感じさせました。

新潟県田上町では、学校を始めとする諸団体との連携をより深めることで地域のさらなる一体感を醸成するとともに、「たけのこ団」の活動の情報発信や、イベント企画・制作リーダーの育成、より質の高い会場の整備・確保、ワークショップの開催回数の増加などを進めることで、今後もこの取り組みに対するファンの輪を広げていこうと考えています。

▶たがみバンブーブー公式サイト

全国には、地域の新たな魅力を訴求できる観光商品を開発したいとお考えの自治体や地域DMOも多いと思います。

地域の長年の懸案だった放置竹林を新たな観光資源へと生まれ変わらせた今回の田上町のこのプロジェクトは、柔軟なアイディアと取り組み方しだいで地域のマイナス資産をプラスに転化することが可能だという、新たな気づきをもたらすもの。

各地の観光振興への取り組みにおいても、きっと貴重な参考事例になるのではないでしょうか。


■実施主体/たがみバンブーブー実行委員会
■事業企画/道の駅たがみ協同組合
■運営主体/田上町商工会青年部
■委託先/㈱エイエイピー新潟支店:事業企画支援・補助金申請支援伴走、イベント、プロモーション関連手配実施

※2023/05/18公開の記事を転載しています


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