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2024年のトレンドから「旅」について改めて考えてみた

「コロナ禍」という言葉を耳にすることが少なくなってきたのとともに、待ってましたとばかりに以前にも増して旅行需要の高まりを感じる。とても喜ばしいことだ。

そんな中、最新のアメリカン・エキスプレスの調査によると、2024年の旅行トレンドは、四つのキーワードに集約されるらしい。

一つ目のキーワードは「スポーツ観戦」。

WBCやサッカーW杯で日本国内が熱狂に包まれたのも記憶に新しい。同じ情熱を共有する世界中のファンとの一体感や、二度は訪れないスポーツ特有の瞬間的な爆発力。スポーツイベントはただの試合観戦以上のものを味わえる貴重な機会だ。

調査によると、全体の58%の人々がスポーツ観戦を目的にした旅行に興味があると回答しており、特にMZ世代はその数がさらに多いようだ。

例えば、連日のニュースで日本中の注目を集める大谷翔平選手やダルビッシュ有選手のようなスター選手の試合を見るために、わざわざ海外まで足を運ぶファンも少なくない。スポーツの熱狂は、旅の疲れを感じさせないほどのエネルギーを提供してくれる、またとない機会なのだ。



二つ目のキーワードは「大規模な旅行」だ。

生活が日常のルーチンに追われがちな今、人々は旅行でしか味わえない非日常の経験を求めている。

調査では全体の65%の人が、より大規模な旅行に興味があると答えており、その背景には「一生に一度の冒険」を実現させたいという願望があるようだ。

これは、遠く離れた未知の地への長期旅行や、一つの旅で複数の国を巡るといった壮大なプランも含まれる。大規模な旅行は、ただ単に時間とお金をかけるだけでなく、深い文化的理解や新たな自己発見を促す旅にもなり得る。これまた二度とはない体験ができる旅行の形と言えるだろう。



三つ目のキーワードは「一人旅」。

一人旅は全体の69%の支持を得ており、この数字はスポーツ観戦同様MZ世代で高まっている。

一人旅の特長は、自分自身のペースで世界を体験できること。多くの人がカスタマイズされた旅行を好み、自分だけの興味や好奇心に基づいて気軽に計画を立てられることに魅力を感じている。

個人的には旅先での感動や体験はだれかと共有して盛り上がりたいタイプなのだが、何となく日本人ぽさが感じられるトレンドで(調査は世界が対象だが)納得できる部分もある。


そして私が最も注目した最後のキーワードが「フレキシブルな旅」だ。フレキシブルな旅=「計画に縛られない自由な旅行」ということだが、なんと調査によると、78%の人々がそのような旅行に魅力を感じており、この「自由」が最終的に他のすべてのトレンドをより魅力的なものに変えている…らしい。

「フレキシブルな旅行」においては、突発的な勢いで出かけることもあれば、現地でプランを変更するどころか、ノープランで現地に乗り込むなんてこともあるとか…。

…うむ。このトレンドは私の旅行の価値観とはかなりかけ離れている。だって「フレキシブルな旅行」っていい感じに言ってるけど、それってつまり「行き当たりばったりな旅行」ってことだよな。

個人的には、旅行のときは割とがちがちにスケジュールを組んで1時間単位で計画を練って、何なら移動時間も事前に計算して、無理ない範囲で最大限旅行を楽しみたいタイプなのだが(自分でもかなり細かいタイプだと自覚している…)、フレキシブルな旅行はその対極の考え方になるだろう。

だってもしも、本当にノープランで旅行に行ってみたとする。当日じゃ宿が予約できなかったり、イベントやアクティビティは事前予約で埋まっていたり、楽しめるかどうかというより、旅行先で後悔してしまうかもしれない。


他のトレンドはともかく、このトレンドは理解できても納得はしづらいな…そもそも旅行って、京都ならお寺とか、沖縄だったら海とか、何かしらの目的があって行くものじゃないだろうか。…と半分愚痴めいたことをつらつらと言っているのも何なので、ここで一つ「旅」の語源を調べてみた。

こういう何かに納得がいかないときは、とりあえず語源とか起源を調べてみるクセがあるのだ。

諸説あるようだが、個人的に面白いと思ったのが『「旅」という意味を表す「トラベル(Travel)」の言葉の語源は、ラテン語で「労苦を伴う努め」という意味を表す「トラベイル(travail)」という言葉に求められる』というものだった。

「労苦を伴う努め」とは、現代の旅とはむしろ真逆の言葉にも思えるが、確かに時代を遡ってみると、旅とは必ずしも良いことばかりではなかったのかもしれない。

現在のように交通網が発達しておらず、移動手段が「徒歩」であったことを考えれば、それも当然のような気がする。当時は宿泊施設などもなく、泊まる場所は沿道の民家が主流で、宿がなければ、野犬や物取りにおびえながら野営をしていたこともあったそう…。

あれ、なんだか、時代や文明の毛布をかぶったぬくぬくとした自分の旅の価値観が浮かび上がってきた。もちろん、行く当ても目的も定まらずそれでも歩き続けた昔の「旅」と、新鮮で大量の情報に守られた安全と共にある今の「旅行」とでは厳密には違う文化なのかもしれない。それでもルーツを辿るときっと「旅」に繋がっていて、今の「旅行」は先人たちの苦労の上に発展してきたものなのだろう。


そう考えると、「フレキシブルな旅行」とは、旅の原点、そして本質に近いトレンドであり価値観なのではないか。そうであれば納得せざるを得ないどころか、先人たちに敬意をもって尊重するべき考え方だ。

そして、私はふと学生時代のことを思い出した。

それこそ初めての一人旅を計画していたときのこと。まだ二十歳にもなっておらず、前日になにやら不安が押し寄せてきて、旅行好きな先輩に「初めてのことばかりなので、予定通りいくか不安なんですよね。」と相談をしたのだ。

すると、「なに言ってるの。予定通りにいかないから旅行は楽しいんでしょ。」こう返された。

今になってもう一度、この言葉が腑に落ちている自分がいる。いつからか良くも悪くも型にハマっていた旅行のスタイル。

そう思うと、予定をただこなしていくような感覚になった旅行もあったかもしれない。それでもやっぱり、予定をしっかり組んで旅行に臨むことはいいことだと思う。

だがしかし、次の旅行は少し、フレキシブルに行ってみようか。そんなことを考えている自分がいるのもたしかだ。



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