【観光DX】補助金対象になる場合も! ホテルでのキャッシュレス決済導入のポイント
国際的なイベントも多く開催され、世界から注目される機会も増えている日本。それに伴い、訪日外国人旅行者の増加も期待されており、ホテル・旅館業界でもインバウンド対策が求められています。そのひとつが、キャッシュレス決済の導入です。キャッシュレス決済とは、クレジットカードやQRコード決済など、現金以外の方法で支払いをすることで、多言語化に並ぶ重要なインバウンド対策のひとつと言えるでしょう。
今回は、ホテル・旅館でキャッシュレス決済を導入する際のポイントについて、詳しく解説していきます。
訪日中のインバウンド観光客の決済方法
キャッシュレス決済導入を検討する前に、まずはインバウンド観光客が日本滞在中にどのような決済方法を利用しているのか、その傾向を詳しく見ていきましょう。
観光庁が発表した「2018年度訪日外国人消費動向調査」によると、インバウンド観光客が日本滞在中に利用した決済方法(複数回答)において、現金を利用した人が全体の97.5%と一番多いものの、クレジットカードが57.2%、Alipay, WeChatなどのモバイル決済が13.4%、Suicaなどの交通系ICカードが12.0%、デビットカードが10.0%という結果となり、全体の6割近くの人がキャッシュレス決済を利用していることがわかります。
広がるキャッシュレス決済
経済産業省が2018年に発表した「キャッシュレス・ビジョン」によると、2015年度の各国のキャッシュレス決済比率状況は、中国が60.0%なのに対して日本は18.4%と大きな開きがあることが分かりました。なぜ、中国ではキャッシュレス決済の普及が進み、日本では遅れているのでしょうか。
中国でのキャッシュレス決済の広がり
中国でキャッシュレス決済が広がった大きな理由のひとつが、中国政府主導で「銀聯(ぎんれん)カード」というクレジット・デビットカード普及させたからです。銀聯カードは世界での総発行部数が70億枚以上、中国国内シェアは9割を維持しています。また、中国では近年「Alipay(アリペイ)」や「WeChatPay(微信支付・ウィーチャットペイ)」といったスマホ決済も急速に普及していて、キャッシュレス決済の広がりを後押ししているのです。
日本では支払いにおいて現金への依存度が高い
中国と比べると圧倒的にキャッシュレス決済の普及が遅れている日本。これにはさまざまな理由がありますが、主な理由としては、コンビニエンスストアなどへのATMの普及でいつでも現金を引き出せるため、キャッシュレス決済そのものの需要が低いことが、理由として挙げられます。
ただし、日本においても、政府主導でキャッシュレス普及に向けての取り組みが行われています。消費者向けの取り組みだけでなく、事業者向けの取り組みも行われ、これからのキャッシュレス決済の普及が期待されます。
キャッシュレス決済導入が遅れているホテル・旅館も
一部の家族経営の旅館などで、クレジットカードやキャッシュレス決済の導入が遅れていると言われています。その理由は、旅館に若いスタッフがおらず、決済端末の取扱ができない、導入のハードルが高い、と思われていることが挙げられます。また、高齢の経営者の場合、自身もクレジットカードを利用しないケースも多く、カード決済の必要性を感じていなかったり、カード決済に警戒感があり、導入が進まないようです。
キャッシュレス決済の種類
現金以外の方法で支払いをする「キャッシュレス決済」は、大きく以下の3種類に分類されます。それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。
◯クレジットカード決済
クレジットカードとは、後払いができるカードです。
お客様がクレジットカードで支払いをすると、利用情報がカード会社に届きます。この利用情報をもとに、カード会社が旅館に立替払いを行いますが、この際支払われる金額は、カード会社に対する加盟店手数料を差し引いた額になります。
クレジットカード決済を導入することで得られるメリットとしては、単価の高いプランで宿泊してもらえる可能性があること、クレジットカードが利用できる旅館を探しているお客様を取り込める可能性があることです。
◯デビットカード決済
デビットカードとはカードでの支払いと同時に、銀行口座から即座に引き落としされるカードのことを言います。口座の残高以上に支払いができないことが特徴です。デビットカードには、銀行のキャッシュカードをそのまま利用できるJ-Debitと、クレジットブランドのデビッドカードの2種類があります。旅館にとってのメリットは、デビットカードは海外ではクレジットカードよりも普及している国もあるためインバウンド対策になること、加盟店手数料がクレジットカードよりも割安なことが挙げられます。
◯電子マネー型決済
電子マネーは、事前にカードに入金を行う「プリペイド型」、利用後に後払いで請求がされる「ポストペイ型」の2種類があります。クレジットカードと違って暗証番号やサインが不要なため、よりスマートな支払いを行えることがメリットです。
◯QRコード決済
QRコード決済とは、近年普及し始めた決済方法です。スマートフォンやタブレットにインストールされたアプリにクレジットカード情報を紐付け、QRコードを読み取ることで決済が可能になります。お客様のアプリに表示されたQRコードを旅館側が読み取る「ストアスキャン方式」、または旅館側の用意したQRコードをお客様がアプリで読み取る「ユーザースキャン方式」の2種類があります。
スマートフォンやタブレット上のアプリで利用できるため、最低限度の導入なら専用端末が必要なく、クレジットカード決済などと比較して初期費用が安いことが特徴です。
ホテル・旅館でのキャッシュレス決済の導入メリット
では、実際にホテル・旅館でキャッシュレス決済を導入すると、どのような効果が得られるのでしょうか。キャッシュレス決済導入の主なメリットを詳しく見ていきましょう。
インバウンド観光客にアピールできる
韓国や中国をはじめ、キャッシュレス決済が主流の国は数多くあり、そうしたインバウンド観光客に対しキャッシュレス決済導入は大きなアピールポイントとなるはずです。
支払い業務の効率化
キャッシュレス決済を導入することで現金のやり取りが減るため、フロントでの支払い時間の短縮や、業務の効率化に繋がります。
キャッシュレス決済の導入で注意すること
ホテル・旅館にとってキャッシュレス決済の導入は大きなメリットがありますが、その一方で以下の点には注意が必要です。
初期コストがかかる場合がある
最低限度のQR決済の導入であれば専用端末は必要ありませんが、クレジットカードや電子マネーを使ったキャッシュレス決済では、基本的に専用の端末を導入する必要があります。導入する決済方法によっては必要な端末が複数になるケースもあり、その分導入費用が高くなってしまう場合もあります。ただし、複数の決済種別に対応したマルチ決済端末もありますので、キャッシュレス決済導入にあたり、検討してみてもよいでしょう。
手数料が発生する
クレジットカードや電子マネーを導入すると、およそ決済手数料を業者に支払う必要があります。決済方法により手数料は変わってきますので、導入前によく確認しておきましょう。また、クレジットカードの場合、加盟店手数料の引き下げ交渉が行える場合もあります。
キャッシュレス決済にはポイント還元や割引サービスなどもあるため、集客の面でも効果が期待できます。インバウンド対策の一環として、キャッシュレス決済の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
※2019/10/25公開の記事を転載しています
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