旅館・ホテルのサブスクを考える。|観光マーケティングプランナーのちょっと視点を変えた連載コラム017
若者のクルマ離れ、TV離れなど数々の「〇〇離れ」を耳にします。そんな中で一番実感することが「CD離れ」ではないでしょうか。特に「外出」「買い物」を制限された2020年のCD販売は大きく落ち込みました。
そんな状況を背景に大きく飛躍したのが、定額で聞き放題を謳った定額音楽配信サービス。いわゆる音楽のサブスクリプションです。
月々いくら払えば聞き放題、2020年9月に発表されたある調査によると、有料・無料を合わせて約1/3の人々が定額制音楽配信サービスを活用しており、当然その分モノとしてのCDが売れなくなっていることに結びついていると考えられます。
現状では20~30代が利用者の中心を占めていますが、数年のうちには現状の3倍程度に市場が拡大するものと予測されています。
古くは新聞や雑誌の個別契約の仕組みとして、近年ではコンピューター用ソフトウェアの提供方式として広まったサブスクリプション・システム。
現在は先述の定量制音楽配信サービスや動画やスポーツ視聴サービスといったカルチャー系から、ブランド品のバッグやファッションのサブスク、野菜や食材の宅配サービスのサブスク。
おもしろいものでは月々全国の銘酒の中からオススメの日本酒がおつまみと一緒に届く銘酒のサブスク、毎月さまざまな種類が届けられるお菓子やスィーツのサブスクなど、その裾野はどんどん広がっています。
宿泊施設に目を転じてみると、特に新型コロナウイルス感染症の拡大によるインバウンド客層の減少により大きく稼働率が低下している東京都内の大手シティホテルが定額制で1カ月利用できるプランを販売しています。
また、定額制で宿泊客とバッティングしない時間帯に館内の温泉施設に入浴し放題のプランがあったり、さまざまなものが登場しています。
一部の新聞でも取り上げられましたが、現状では例えば街中にある複数の空き家を改装して定額で短期間の宿泊を提供するサービスなどは旅館業法に抵触する可能性があります。
ですが、元々旅館業法で営業許可を取得している旅館・ホテルであれば、そうした旅館業法に抵触する可能性はなく、自社の施設を活用した集客手段として商品化することも可能です。
実際にビジネス化を想定すると以下のような方法が考えられます。
サービスとして多くのエリアの宿泊施設と契約して同様のサービスを提供する業者も出てきています。
ですが、まだどの程度の動きになるのか、また現状ご来館いただいている客層とマッチするかなど不明点も多く、まずは自館や自エリアで実施し、トライアンドエラーでメリットやデメリットを体感してみることが重要であると思います。
ニューノーマル時代の旅行のあり方として、新型コロナウイルス感染症の拡大とともに見直された足元(県内)マーケットに向けて限定して実施し、その後のお馴染み様開拓に結びつける。
これから先に向けて新しいやり方を積極的に採り入れながら前向きに地域全体でチャレンジしていく、その宣言としての商品化など単なる話題づくりに留まらない、これからに向けてのテーマをしっかりと設定しておくことが最も大切と考えます。
販促手段としては、①メールマガジンや折込チラシなどで地域やお馴染み様限定企画として発信 ②幅広く販売していくのであれば自社サイトにランディングページや専用ページを用意しつつWEB広告やSNSなどを通じて発信 など、さまざまな方法が考えられます。
また「ホテル旅館のサブスク・サービス」は社会からの注目度もあるので、ニュースリリースを有料でたくさんのメディアに配信するPR会社のサービスを利用したり、顔なじみの地元メディアに取材してもらうよう依頼し、なるべく多くの人の目に触れるチャンスを作ることが重要です。
あくまでも本業をバックアップする手段や方法の一つではありますが、今話題のサブスク・サービス、ぜひ自館ならどのように商品化できるか、考えてみてください。
※2021/04/28公開の記事を転載しています
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