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アプリを活用した「3密」対策でWithコロナ時代を生き抜く ~ホテル森の風グループの最新事例~

【今リポ!】今、伝えたい!最前線リポート- Vol.002

株式会社 日本ハウス・ホテル&リゾート リゾートグループ 統括営業支配人 片瀬俊彰

首都圏における「Go To トラベル キャンペーン」もいよいよスタート。本格的な秋の行楽シーズンに向け、国内の観光地ではより高度な「3密」対策の整備が急がれています。ニューノーマルとも言えるWithコロナ時代、この対策にいち早く取り組んできたホテル森の風グループ。お客さまに安心してご滞在いただける旅の実現を目指し、独自の視点で取り組むさまざまな衛生管理について、対策責任者を努める片瀬俊彰さんにお話をうかがいました。

日々進化するホテル森の風グループの感染予防対策

①混雑確認アプリの導入
・「大浴場、売店、チェックアウト」の現在の混雑状況とその先の混雑予想が確認できる専用アプリの導入

②チェックイン
・駐車場にてスタッフが待機 ・1組ずつホテル館内へとご案内

③食事
・入店人数の規制 ・バイキングは休止しセットメニューでご提供(個室会場)

④大浴場
・ロッカーの数を間引き ・洗い場のカラン数や湯上り処の席数を制限

⑤チェックアウト
・前日(20~22時)または当日朝(7時~)の事前精算

⑥エレベーター
・乗車定員を制限(4名まで)

⑦衛生管理
・ホテルエントランスにて手先のアルコール消毒と検温 ・十分な換気を行いながらの客室清掃 ・清掃終了後のアルコール消毒による拭き上げ
(ドアノブ、引き出し、取っ手、リモコン、スイッチ等)・食器類(お皿・グラス等)やカトラリーの高温洗浄(80度以上)

⑧スタッフの健康管理
・全社員が接触確認アプリをインストール ・出社時の手先のアルコール消毒 ・1日3回の検温と健康チェックの記録確認


ガイドラインを最低基準に、独自の視点でアプローチ

ー早速ですが、いま実践しているコロナ対策について教えてください。

現在「ホテル森の風 鶯宿」の収容は800名ですが、コロナ対策のためそれを半分の400名に、さらにレストランの「密」を避けるため最大300名に受け入れを制限しています。

当館では全旅連のガイドラインを最低基準に、その上を目指すことを課しています。

例えば大浴場の「間隔を空ける」というガイドラインに対し、カランの蛇口を外し強制的に使用できないようにしています。物理的な策を講じることで、完全な抑止をしています。

衛生管理についても、ゲストエリアで働いているスタッフは全員、腰にポーチを身につけています。

中には消毒用のスプレーとタオル、ハンカチなどが入っていて、館内を移動する際にお客さまが触れたであろう、または触れるであろう箇所を、気付いた段階で消毒するよう指導しています。

日頃のオペレーションでこの作業を組み込めれば、スタッフの負担も軽減でき、リスク回避の精度も上がります。

もちろん、パブリックや裏動線のエレベーターも同様です。各自が携帯しているスプレーボトルは、だいたい1日で使い切りますね。

ー清掃のモレなどを防ぐマニュアルはあるのでしょうか?

コロナが騒がれる以前から、当館では写真付で20ページ程の清掃マニュアルを作成して実践しています。

現在は現場のスタッフから見落としがちな箇所についての声をさらに集め、マニュアルの精度を上げて情報共有しています。

例えばテーブルを動かすときの拭き上げは、持ち手となる側面部分も忘れず行っています。

お部屋の襖なら引き手はもちろん、そのもっと下、ちいさなお子さまが触りそうな高さの部分まで、アルコール消毒の範囲を広げています。

部屋割りについても清掃の効率を考慮し、お子さま連れのお客さまや同日ご宿泊されるご年配のお客さまを「密」にならない程度で別フロアに集約するなど、考えうる限りリスクの回避をしています。

これらの対策においては、スタッフ間のコミュニケーションが本当に重要で、その点については逆に以前より「密」になりました。

意識の共有という「密」です。ありがたいことに、スタッフも一致団結して、大変なこの状況を何とか乗り越えようと頑張ってくれています。

ーエレベーターも一度の乗員を4名に制限されているようですが。

当館のエレベーターはもともと静電型で、ボタンに手を近づけるとセンサーが自動で感知するシステムです。

乗員についてはコーナーに1名ずつ乗っていただくイメージです。お客さまにも分かりやすいよう、床に十字のテープを貼って足跡マークをつけています。

ーお料理の提供についての対策は?

現在はバイキングスタイルを中止し、お膳などのセットメニューで対応しています。

ーリネンの取り扱いについてはいかがでしょうか?

リネンは回収の際、部屋ごとに袋に入れて密封を徹底しています。実は以前、滞在中のお客さまが発熱されたことがありました。

結局は熱中症だったのですが。そのときは、ガイドラインの指示に従いお客さまのご了承のもと、食事もチェックアウトもお部屋で行わせていただきました。

清掃スタッフも白い防護服を着用して1人に制限。作業も他の部屋と時間をずらし、疑いがある限りリネンはすべて焼却処分しました。

もちろん、従事したスタッフは経過観察で4日間程、勤務から外れてもらいました。

リネンは直接肌に触れるものですので、念には念を入れて取り扱っています。

ー駐車場にもスタッフを1名配置して、1組ずつご案内されていると伺いました。それも現状のスタッフで対応されているのでしょうか?

そうです。それまでお客さまをお部屋まで案内していたアテンドスタッフをそのまま駐車場へスライドし、対応してもらってます。ご案内がフロントまでと移動距離も短いため、問題なくスムーズにできています。


専用アプリの導入による混雑状況のタイムリーな可視化

ー対策のひとつにアプリを導入されているようですが。

はい。ひとつが「3蜜」を回避する専用アプリです。アプリをダウンロードいただいたお客さまに大浴場やレストラン、お土産処など、現在の混雑具合を分かりやすい表示でタイムリーにお知らせしています。

これについては今年の5月くらいに日経新聞で取り上げられているのをみて、すぐ問い合わせをして登録しました。

一部のコンテンツは有料ですが、基本的なシステムはダウンロードすれば無料で、自館の施設に合わせた使用が可能です。いまでは旅館組合をはじめ、全国のホテルでも導入されているようです。

このアプリの導入も含め、うちではコロナ対策について星野リゾートさんより早く、中国の武漢でウイルスの発生が取り沙汰された2月頃からすでに行っていました。ちょうどインバウンドに本腰を入れるタイミングだったこともあり、さまざまな状況を想定したためです。

対応した時期が早かったことで、広報についても地元メディアへニュースレターを送ったところ、全局で取材をしていただきました。それを受け周辺の旅館さんなどでも同じような対策が次々と伝播していった具合です。

ーアプリ内の混雑時間の予測は、どのように行っているのでしょうか?

宿泊人数をベースにすると、経験値の高いスタッフはどの時間にどの施設が混み合うのか、ある程度の予測ができます。

もちろん、それだけでは正確でないため、大浴場などは1時間に1回行う消毒清掃の際、実際の現場を目でも確認して最新の情報をお伝えしています。
アプリで表示している時間帯に清掃のタイミングを合わせることで、忘れることなくチェックができる仕組みです。

ー実際にアプリについてのお客様の反応や評価はいかがですか?

アンケートにも書かれるのですが、対策に関しては大変安心できたという高評価を頂戴しています。じゃらんや楽天のクチコミサイトでは予想通り、若い世代のお客さまから好評です。

ーアプリが苦手なご年配のお客様には、どう対応していますか?

ご年配のお客さまには、やはり書面です。チェックイン時に「3密」対策の注意点を明記した案内文をお渡ししています。また、電話予約の時点でも入館時の検温や消毒、混雑時は時間をずらして施設をご利用いただく旨を口頭にてお伝えしています。

ーその他、アプリを使用した取り組みはありますか?

10月からは、レストランのドリンクメニューもQRコードで読み取りできるようにしました。これも無料のアプリを活用しています。導入のきっかけは「メニューも色々な人が触るよね」といった、お客さまからのご指摘です。

Withコロナということで、時代の利器であるデジタルを活用しながら、締めるところは締め、緩めるところは緩めながら臨機応変に取り組んでいます。


1日3回の検温、チェックシート記入によるスタッフの健康管理

ー先ほどのお話では、従来のスタッフだけですべて行っているとのことでしたが。

そうです。それだけに残業も含め1人の負担は確かに増えています。今はどこのホテルさんも同じだと思いますが、コストがかけられないぶん、各自の頑張りでなんとかまわしているというのが実情です。

私は8月末から、ここ鶯宿に滞在していますが、普段は東京の本社に在籍し、対策の検討や作成したフォーマットをグループ内の5つのホテルをまわって指導し水平展開しています。

そのなかで感じることは、東京と地方ではリスクに対する考え方にどうしても差があるということです。

これからの時代、地方においても東京のお客さまが考えるリスク対策をしていくことがよりベストだと感じています。また、それがうちのひとつの基準にもなっています。

ースタッフの体調管理について教えてください。

大前提としてまず全社員が、接触確認アプリ「COCOA」をインストールしています。その上で自宅にて検温、さらに出社の際は入口でまた検温、手の消毒。そして専用の健康チェックシートに毎日、健康状態を記入してもらっています。

また勤務中も朝の出社時、昼の休憩時、一番感染リスクの高い夕食前と、1日3回の検温の機会を設けています。実はかつてノロウイルスを出してしまった苦い経験があり、今回の件はその時の教訓が活かされています。

ー作業の負担増に対し、スタッフのマネジメントはどうしていますか?

会社がギリギリのところで稼働していますので、現状はボーナスも支給できていません。

現段階では見通しがつかないので、スタッフには本当に苦労をかけています。

10月からは首都圏を対象とした「Go To トラベル キャンペーン」も始まり、問い合わせもかなり増えています。

社員にはお客さまが比較的少ない平日に交代で連休をとってもらう就業シフトを組み、できるだけリフレッシュしてもらうよう配慮しています。


Withコロナ時代に向けた地元観光の促進

ー「Go To トラベル キャンペーン」後の対策として、最近は「マイクロツーリズム」という考え方も提唱されているようです。こちらも地元需要の喚起を何か考えていますでしょうか?

キャンペーン後はお客さまが遠出をしなくなるので、より地元に目を向けて何かできないかと、各ホテル内にメンバー5名による「ジ・モット コンシェルジュ」というチームを結成しました。

ガイドマップに載っていない、それこそ自分達しか知らないような近所のラーメン屋さんやレストランなど、周辺のおすすめスポットを「ジ・モット(地元)」の目線で開拓して紹介する取り組みです。

活動としては現在、フロント横に周辺のお店の情報を掲載したボードを設置しています。

同時にインスタグラムやフェイスブックでも発信しています。店の連絡先などを記した個別の情報カードも用意し、興味のあるお客さまに自由にお持ち帰りいただける工夫もしています。

「ジ・モット コンシェルジュ」は、地元ならではのディープな観光の需要に応える取り組みです。

ゆくゆくは行政の協力なども得ながら、食べ歩きなどのパスポートなども展開して、参加してくれる店にも還元できるスキームができればいいですね。

その他としては、状況が落ち着いたら現在中止しているバイキングや餅つきなどのイベントも、もとに戻したいと思っています。

考え方としてコロナ禍が終息してから何かを始めようというよりは、次のステップであるWithコロナへ、うちではすでに頭を切り替えています。

状況はいきなり改善しませんし、お客さまの考えるリスクもしばらくは消えないと思いますので。

ラウンジのフリードリンクは、複数の方が触れないよう紙コップの設置を工夫したり、個包装のマドラーにしたりするなどして10月から再開しました。

またにぎわいの創出として以前、2階の広場で行っていた社員による太鼓のお祭りショーを、飛沫対策を考慮し、吹き抜けのラウンジにある浮き舞台を利用して始めています。

構造上、音の響きは劣りますが、今年はほとんどのところで夏祭りが中止でした。

太鼓を叩いて民謡の歌い手が来て、にぎやかな夏祭りが体験できるその瞬間だけは、お客さまもコロナを忘れて楽しんでいただいているようです。

当館ではいま、徹底した衛生管理で日帰り入浴も受け入れています。お客さまはほとんどが地元のご年配の方です。

長い自粛生活で感染対策疲れが蔓延してきているいま、地域に根ざすホテルの使命は、そういったところにもあると思っています。

自助自立ではないですが、こんな時代だからこそあらゆる局面でできることを、できるだけやる、という姿勢で取り組むことが一番大切だと思います。

地域総出で地元をもっともっと盛り上げていきたいですね。

ーお忙しいところ、本日はありがとうございました。

人手や予算がかけられないなか、最大限の予防と効果を求められるコロナ対策。目に見えないウイルスとの戦いはこれからも続きます。この難局を選ばれるホテルとしての実力と信頼を勝ち得る機会として捉え、お客さまとの間に確かな絆をつくりあげていきたいものです。


【プロフィール】
片瀬俊彰(かたせ としあき)
1979年生まれ、福島県須賀川市出身
盛岡大学文学部卒業後、株式会社ホテル東日本(現:株式会社日本ハウス・ホテル&リゾート)入社。
ホテル森の風 鶯宿にてフロント責任者、営業責任者としてホテル運営全体に携わる。
2020年から本社にて運営するホテル5館のマーケティング、DXの統括責任者として活動している。

【株式会社 日本ハウス・ホテル&リゾート】
設立 平成30年(旧 株式会社ホテル東日本より分社化)
資本金 1億円
従業員数 293名
事業内容 ホテル運営
URL 

※2020/10/15公開の記事を転載しています


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