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クチコミ、という曲者。|観光マーケティングプランナーのちょっと視点を変えた連載コラム011

ECサイトが花盛りである。ご存知の通り外出規制を求められていたこともあり、コロナ禍を経て、より日常化した感覚がある。そんなECサイトだが、実はカテゴリーによってそのクチコミの信用性に大きな差がある、という記事を見掛けた。

その中で一番、信用性が高いとされていたのがコスメ系のサイト。おそらく利用する年代や性別などが絞り込まれやすく、多くのユーザーが書き込むとしてもブレが少ないことが要因と考えられる。

逆に最も信用されていないのは飲食店の情報が掲載されているグルメ系サイトで、信用する人としない人の割合がちょうど半数ずつ、という結果になっていた。

では気になる旅行系サイトはどうか。その調査ではコスメ系サイトには及ばないものの7割近くの人が「信用する」と回答していた。ちなみにショッピングサイトでも約7割の人が程度の差はあれ信用すると回答しており、全般的にかなり信用する人が多いな、という印象を持った。

また、最も購買行動に影響を受けるものは「友人や家族からの推奨」であり、やはり名前も顔も分かる人の意見が一番信用されている。が、いわゆるシニア層の人々はそれに次いで信用性が高いものが新聞などの「編集コンテンツ」なのに対し、若い人々では「企業のブランドサイトやインターネットに掲載された消費者意見」、つまりクチコミの順位が高くなっている。

人生経験が少ない分、何かの意見を参考にする、という動きは当然で、より若い層をターゲットにするのであれば、いわゆるクチコミ対策もより真剣に考えるべきかもしれない。

最近よく三世代旅行のハナシを伺う。個人化する旅行形態の中でも比較的一組あたりの人数が多い形態としてもとても有効である、と。こうした三世代旅行の場合、パパ、ママ、こども、ジジババの組み合わせが中心で、その場合費用はジジババが負担するケースが一般的になっている。

では予約もその層の人々か、というとそうではない。予約はパパ・ママ世代の役割。となると彼らはクチコミを重視する世代だ。

クチコミを発信していただいたら〇〇をプレゼント、というのはさすがにやり過ぎな気もするが、気持ち良い応対を通じて「いいクチコミ」が増やせるのであれば、ぜひ取り入れていきたい。

そのひとつのポイントが「チェックアウト直前」や「数日後」と聞いた。「チェックアウト直前」はホテル旅館にとっては実はいちばん忙しい時間でチェックインの比ではない組数のお客様が集中する。

必然的になかなか目が届きにくい。がお客様にとってはその宿にいた記憶が最も濃いのはチェックアウト直前である。そのタイミングで心に残るサービスやひとことがあると、たとえ昨晩何かちょっと不満があってもがらっと良い印象に変わってしまうのが人情。

例えば玄関やフロント周りにSNSに発信しやすい場を作ったり、積極的にお声がけして家族の一枚を撮影してあげたり。そこにきちんと宿名が分かる場があればベストだ。

もうひとつがデジタル時代の今だからこそ響く手書きのお礼状。個人情報管理の厳しい現代、差し上げてよいかどうかの確認は言うまでもないが、特に三世代でお泊りいただいたお客様だけでも、ご利用になられた数日後に届くようにお礼状をお送りする。

住所等はパソコンで打ち出し、すべて手作りでなく印刷のものでも、ひとことだけ手書きを添えて。1週間を過ぎてしまうと記憶はあいまいになり、わざわざクチコミを書き込む意欲も低下してしまう。帰宅後すぐ、というのも少しいやらしい。そのちょうどいいタイミングが数日後であるらしい。

コロナ禍を経て、おそらくお客様はより価格的に2極化するだろう、という予測がある。ご来館いただいたお客様からのクチコミを活性化しつつ、リピーターづくりにもつながる施策として今一度考えてみたい。

※2020/10/28公開の記事を転載しています


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