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税金について思うこと。

まず、令和6年の元旦に発生した、能登半島地震の犠牲になられた方々に深くお悔やみを申し上げるとともに、被災をされた全ての方々に、心よりお見舞い申し上げます。1日でも早く、平穏な日常が戻ってくることを、微力ながらお祈りいたします。

朝市のおばちゃんたちの「こーてくだー!」の元気な声、精緻な作業を入念に繰り返して完成する漆器の素晴らしさ、初めて見る光景に圧倒されたキリコ祭りなど、能登半島には強く心を動かされた思い出があるだけに、現地の惨状を伝える報道に触れるたび、心が痛みます。

取材先で買い求めた漆塗りの酒器や箸は、今も愛用しており、包装をしている時に「大事に使えば、何百年だってもちます。大切に使ってくださいね」と、店員さんが、まるで我が子を送り出すような調子で声を掛けてくれたことも、よく覚えています。

あの時出会ったすべての皆さんが、どうか無事でありますようにと祈らずにはいられません。また、困難の中で復旧復興にご尽力されている皆さんに、最大級の敬意を表したいと思います。

「税金は、‘取られる’んじゃなくて、‘納める’ものですよ」

さて、今回は、確定申告の時期でもあるので、税金のはなし。中でも観光に関する税金について少し考えてみることにする。

近所に住む、以前、税務署の署長さんを務められた先輩曰く、「皆さん税金を‘取られる、取られる’と言いますが、税金は‘取られる’のではなく‘納める’ものですよ(笑)」ということである。

その通りだと思うが、住宅ローンも終わり、子供も独立して、様々な控除が薄くなってしまい、諸税が重くのしかかる筆者にとっては、‘納める’といったポジティブな気持ちには、まったくなれないでいる。

賃上げと相殺どころか、手取りは、かつてより目減り、というのが実感だ。6月に所得税の定額減税があるらしいが、本当だろうか?そんな中で、政党の活動を助成するために国庫から交付される政党交付金が、今年は、9党に合計315億円余という巨額になるという報道があった。

真偽のほどはわからないが、‘国民一人当たりコーヒー1杯代程度’の額、だそうである。やれやれ。私は普段コーヒーを飲まないので、その分は他に回していただきたい気分だ。

さらに国会議員には、給与とは別に、毎月100万円の調査研究広報滞在費なるものが支給されており、これは領収書も不要、使い切らなくても返却する必要が無い。もちろん、これも税金で賄われている。あくまでも一介のサラリーマンの感覚では、今更ながら、「そんなのアリか?」と思う。

多くの国や地域が観光税を導入

いきなり話しが逸れた。観光に関する税金の話題を戻そう。ネットでさくっと見てみると、世界の多くの国や地域でいわゆる観光税を導入していることがわかる。

リストアップされているのは、たいていは、世界有数の観光立国や観光地であるが、中にポルトガルの「オリャン(オリョンともいうらしい)」という、あまり聞き慣れない都市が含まれている。

調べてみると、ポルトガル南部の高名なリゾート地であるファロのお隣にあって、新鮮な魚介類が豊富で、白と青の壁の建物が並んだ、とても素敵な街のようだ。これは行ってみたい。オリャンでは、徴収された観光税は、街の治安維持や清掃などに使われるそうである。

また、ヒマラヤ山脈の麓、‘幸せの国’ブータンも、観光税を導入している国のひとつだ。

外貨獲得とオーバーツーリズム抑制、環境保護などを目的に、観光税を、それまでの60ドルからハイシーズンは200ドル(現時点の日本円に換算すると約29,000円)という強気の値上げに踏み切ったが、コロナ禍やら何やらで旅行者が減少傾向にあり、それにともなって、現在は半額程度に割引措置をしているようである。

このあたりのバランス取りは、難しいところだろうな、と思う。コロナ禍で打撃を受けたハワイの中心であるオアフ島があるホノルル・カウンティも、ハワイ州が徴収するホテル税に3%を上乗せする形で徴収を始めており、宿泊代の18%程が徴収される仕組みだ。

インドネシアのバリ島でも、今年、2024年4月から、10ドル程度の観光税を徴収し、増加するごみ処理や、魅力発信、持続可能な観光地の形成などに使われるそうである。

国内での宿泊税導入の動き

次に、国内の宿泊税の導入状況に目を転じてみたい。

宿泊税は、自治体が独自に徴収する地方税のひとつ。2002年、東京都が全国に先駆けて宿泊税を導入しており、現在は、1万円以上の宿泊費に対し、金額に応じて100円または200円の宿泊税を徴収している(令和2年7月から令和3年9月の期間は、TOKYO2020開催を受けて課税を中止)。

コロナ禍前の2019年には、27億円の税収があったそうだ。ほかにも、大阪府、福岡県、福岡市、京都市、北九州市、金沢市、長崎市、ニセコのスキーや羊蹄山で知られる北海道の倶知安(くっちゃん)町などが宿泊税を導入している。

大半は100円から1,000円程度の定額徴収だが、倶知安町は、宿泊費に対して、一律2%が宿泊税として徴収される仕組みだ。そして、先ごろ、静岡県の熱海市が宿泊税の導入の方針を固め、2025年4月からの導入を目指しているという報道もあった、導入によって年間7億円規模の税収を見込んでいるということである。

国内有数の観光客数を誇る熱海市で宿泊税が導入されれば、周辺地区も追従するかもしれないな、と思う。そのほか、宮城県も宿泊税の導入に向けての協議が再開されたということだ。

そして、おなじみの入湯税

そして、観光関係の税金といえば、入湯税。鉱泉浴場を有する市町村が入湯客に課する税金で、昭和22年導入というから、80年近い歴史を持つ古株の税金だ。

現在は全国で、1,000近くの市町村が導入をしている。国が定める標準額は150円であるが、例外的にそれを上回る額を設定、または減免している自治体もある。

いずれにしても、比較的小規模な自治体が多い温泉地にとっては、貴重な自主財源であり、こちらは、一般財源として使われるケースも多いようだ。ちなみに、宿泊施設だけでなく、日帰り入浴施設やゴルフ場などでも、鉱泉(いわゆる温泉)を使用している施設では入湯税が徴収されるのが原則である。

筆者がよく行く伊豆のゴルフ場では、温泉の浴場を使用しなければ、150円を料金から差し引いてくれたりするところもあるが、あくまでも例外的な対応で、多くは、風呂に入らずに帰っても、入湯税は徴取されている。

入湯税歳入全国1位を維持する箱根町

2021年度の入湯税額トップ5は、箱根町(神奈川県)、別府市(大分県)、熱海市(静岡県)、伊東市(静岡県)、日光市(栃木県)の順。以下、札幌市、神戸市、函館市、草津町、那須町と続く。

箱根町は、なんと1986年度から40年近く全国1位をキープ。コロナ禍中であった、2021年度でも、4億円以上の入湯税があり、2位の別府市(約2億6千万円)を大きく引き離している。

箱根町は、町の税収の1割以上を入湯税が占めており、そのうちの6割以上が、ごみ処理施設の維持管理や下水道の整備などに充てられる計画という。

ちゃんと使ってほしい

長々と駄文を重ねてきたが、ここで言いたいのは、要は『取る(いや、納める)のはいいが、ちゃんと使ってくださいね』ということだ。

前述の通り、宿泊税の導入が今後も拡がっていく気配が強まっており、それは観光地としての魅力の維持には欠かせないものと理解はできるが、導入にともなって使途を検討する際に、「観光振興に活用」のような大括りの定義で落ち着かせるのではなく、「こういうことには使うのをやめよう」という、きめ細やかな議論もあるといいなと思う。

スイスのとある州では、「宿泊税は、税を支払った宿泊客のサービスを良くするために使われるべきで、潜在的な顧客にリーチするようなプロモーション活動に使ってはならない」と定められているそうだ。

別府市も「入湯税は、お客様が参加しにくいものや、成果がわかりにくいものには使わない」という提言がまとめられている。納税に対する理解を深める好例だと思う。

ところで先日、仕事のついでに、千代田区の都道府県会館にある石川県の東京事務所に立ち寄り、ごく少額ではあるが、能登半島地震の災害義援金を納めさせていただいた。お忙しい中、とても丁寧に対応していただき、大切に使わせてもらうといった言葉をいただいたが、他人からお金を預かるとは、本来こういう姿勢であるべきなのだろうと思う。どこかのセンセーたちにも見習ってもらいたいものだ。


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