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損得勘定。|観光マーケティングプランナーのちょっと視点を変えた連載コラム020

先日ラジオを聴いていたら「自由に動きがとれないコロナ社会の中では、損得勘定を見極めるアンテナが重要ですね。」というコメントが聞こえてきた。

我々は知らないうちにこの「損得勘定」に左右されて生きている。売上が低迷してくると「今、儲かっている業種を見つけ出せ。」とか「売り上げの順調な企業から目を離すな。」などと上からの声がガンガンと大きくなる。なるほど順当なオハナシである。

「勘定」するわけなので、損か得かを相手によって振分ける。今はこういう時節なので、お金を生まない相手からのコールはノラリクラリと交わし、自分に利がある相手には、特別の用も無いのに日参する…イやなヤツである。

「損得」とは多くはお金かもしれない、又は自分の将来や人生にとって付き合うべき相手か否か?というメガネかもしれない。

ならば、その「損得」を「勘定」する我々本人の目が果たして正しいのか?ということも同時に勘定しなければならない。

昔、対面販売の名人のコメントで「対した相手が、自分と同じぐらいだなと思った時には、間違いなく自分より上。

自分よりも下だと思ったらほぼ自分と同じ。」という一言があった。その通り、自分の目ほど頼りないものはない。そんなウブな視線や、心もとない価値観で相手を見定めるなどもってのほかだろう。

などとウヤムヤ考えていた時に、国外のTVCMに目が留まった。あるヤリ手の社長が、一等地に構える古いレストランを買うための視察で、客として訪れる。

料理を食べてお金を払う、飛び切り安い。「こんな安いのにあんたはなにが得になるんだ?」と問いかける。店のお母さんは怪訝そうな顔をしながらお客を指さし、「あそこの学生はこの店で食事をして高い学費をなんとかしてる。

そこのタクシー運転手はお金を貯めて自分の車をやっと買えたさ。あの家族は自分の家を建てるためにここで食事して生活費をやりくりしてる。」「みんなの幸せのために、あたしは頑張っているんだ。」と語る。問うた社長は、黙って車に戻ってじっと何かを考えてる。

…という内容だった。モチロンTVCMの話ではあるが、「損得」の視線を「ダイレクトな利益」で観るか「他人の幸せ」で観るのかの違いは大きい。

楽天の監督だった亡き野村さんが阪神監督時代、落ち目になった時に多くの人が離れいったそうである。その一番どん底の時に手を差し伸べてくれた恩人がいたからこそ復帰することができたという。

今のコロナ禍で一番困っている人たち、一番大変な思いをしている人たちは誰だろう?

私がまだ駆け出しだった頃、私の敬する関西のホテル社長から聞いた「安いお客さまほど大切に。」という一言がいまだ頭から離れない。お客さまは変幻自在である。

一人旅で来たと思うと、カップルやご夫婦、はたまた親族や同僚を引き連れてくることもあり得る。一見の判断で、未来は予測できないものである。ただ、その連鎖も「宿の人柄」があってこそのお話だろう。

マーケティングの基本は、より多くの顧客がいる可能性のある所を狙うことだ。しかし、長期的に観た場合、そればかりに専念して一国を築いた企業を私は知らない。

かといって、旅館・ホテル業界もまたこのコロナ禍で大きな打撃を受けている業種である、でも終わらない混沌ではない。

すでに旅行者の我慢も限界に等しく、秋頃には県内・近県から数値が戻ると予測するデータも多いし、ワクチン接種率が半数を超え、さらに国の旅行促進施策が進めば流れも戻ると考える。

コロナ社会によって、旅行の個人化は急激に拍車がかかった。これまでのコメントでは、そうした個人のお客さまに対するアプローチや、デバイスチャネルを様々ご紹介してきたが、一時、時を止めて、自社の「人柄」を再考することも、コロナ終息後の市場において、個人のお客さまに貴社を見直していただく大きなポイントになると思うのだが如何だろうか。

※2021/07/30公開の記事を転載しています


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