独自の価値を見つけよう!ホテルや旅館のブランド戦略の立て方
SNSやホームページなどを使った情報発信をはじめ、さまざまな方法で集客活動に力を入れているものの、今ひとつ手応えを感じられないということはありませんか? 数ある競合のなかから選ばれるホテルや旅館になるためには、ホテルや旅館独自の魅力や強みを打ち出し、ブランド価値を高めていく必要があります。ホテルや旅館のブランド価値を高め、好感を持ってもらうための取り組みのひとつに「ブランド戦略」があります。今回は、ホテルや旅館のブランド戦略について、その方法を解説していきます。
ブランドの価値を高めるブランド戦略
そもそも「ブランド」とは何でしょうか。一言でまとめると、ブランドとは「競合と区別し選んでもらうための要素」です。具体的には、名称、ロゴ、店舗のイメージなども「ブランド」の要素です。例えば、コーヒーショップ、ファストファッション、ハンバーガーショップ、コンビニエンスストア…。これらの単語を耳にして、思い浮かんだロゴや社名、店舗や商品のイメージなどはすべて「ブランド」と言えるでしょう。
さまざまな方法によって「ブランド」の価値を高めて、市場での優位性を獲得するための戦略を「ブランド戦略」と呼びます。
せっかくブランド作りをしても、方向性やコンセプトがしっかりしていないと、宿泊客に価値が伝わらず、ブランドイメージが浸透しない可能性があります。宿泊客のニーズを捉えるだけでなく、どうすれば受け入れられるか、どのように発信するかを考えることが大切です。このように、目指すべき方向性、コンセプトを確立し、プロモーションを行うプロセスが「ブランド戦略」です。
旅館のブランディング方法
数ある競合との差別化をはかり顧客獲得を目指すためにも、まずは多様化し続ける顧客ニーズを正しく把握したうえでブランドを形作る「ブランディング」から始めていきましょう。実際にブランディングを行う際には、ホテルと旅館とでは顧客が求めるニーズにも違いがあるため、それぞれにより適した方法を採用することも大切です。
ホテルを利用する宿泊客の多くがホテルを宿泊のための手段と捉えているのに対し、旅館の利用客は旅館に宿泊することで得られる体験を目的とする傾向があります。
特に海外から日本を訪れる外国人観光客の多くは、旅館ならではの日本らしいおもてなしや、料理、温泉など滞在中の体験に期待を抱き、泊まりたい旅館を探しているケースも少なくありません。
このような場合には、安心、安全、快適さといった一般的なことではなく、「その宿に宿泊することの魅力」の部分をフォーカスしたブランディングを行うことが効果的です。旅館内部の美しさや料理、温泉、近隣の観光名所など、その旅館ならではの見どころをアピールするとよいでしょう。
ホテルのブランディング方法
ホテルのブランディングをするうえでまず理解しておかなくてはいけないのが、ホテルに求められている役割です。著名なホテルやコンセプトにこだわったホテルでない場合、ホテルというのは旅行の「目的」ではなく、宿泊するための「手段」という側面の方が大きいのです。
例に上げると、東京観光が目的の人は多くても、東京のホテルに泊まることが目的という人は少ないと言えるでしょう。
では、宿泊客のこうした需要のなかで、ホテル側はどのようにしてブランディングをしていけば良いのでしょうか。ポイントは、ホテルに宿泊する上で利用客が期待する「安心」「安全」「快適さ」に焦点を当てることです。
初めての利用でも安心して宿泊できる環境、セキュリティがしっかりしていて安全であること、客室内の清潔さや寝具の快適さなどをしっかりと打ち出していくのがよいでしょう。
これらの基本的な部分に加えて、独自のサービスやコンセプトなどを併せてアピールすることで、ブランド力をより高め、競合との差別化をはかることも可能です。
ブランド戦略を立てるステップ
ブランド戦略を立てる際には、まず現状を正しく認識することが大切です。そのホテルや旅館が利用客からどのようなイメージを持たれ、どのような評価を得ているのか、どのような問題点を抱えているのかなどを明確にした上で、下記のステップで進めていきましょう。
自分たちの強みを探す
自分たちのホテルや旅館の強みや特徴が何なのかを探していましょう。
具体的には、自分たちのホテルや旅館の競合となる対象と比較してユニークポイントなどの強みを徹底的に社内検討し、自分たちがアピールできる点を洗い出す、同時に宿泊客アンケートなどで第3者の目から強みを洗い出すなどの方法、ソーシャルメディアを使い、自館に関するユーザーの意見を集める方法などが有効でしょう。
その際は、社内プロジェクトを立ち上げるなど業務に携わるスタッフ全員がその内容を共有しているということ。スタッフの一人ひとりが同じ方向性を持ってブランド戦略を立てていくことが大切なのです。
ニーズとターゲットの調査を行う
強みがわかったら、利用客が自分たちに対してどのような役割を持っているのか、またどのような層に支持されているのかニーズとターゲットを細かく調査していきましょう。
自分たちの提供しているものがターゲットとなるお客様のニーズと合致しているかを探ります。方法としては、宿泊客へのアンケート、モニター広告、インターネット調査などがあります。
コンセプトの再プランニングを行う
自分たちの強みやアピールすべきポイント、求められているニーズが明確になったら、次はコンセプトのプランニングを行います。
コンセプトとはブランドのあり方・基盤となるテーマのことをいいます。コンセプトプランニングでは、自社の強みとお客様のニーズを掛け合わせて「こんなお客様にこのように楽しんでもらえる宿になろう」というような、サービスのあり方や考え方、それらをわかりやすく発信するためのブランドのロゴやキャッチコピーなどを決めていきます。
効果的な訴求方法を調べる
ブランドのコンセプトが定まったら、より多くのお客様に知ってもらえるよう、広告などの宣伝を行います。様々な宣伝方法のなかから、より効果的な訴求方法を探すことになります。
年配の方をターゲットとするなら新聞やテレビ、比較的若い層をターゲットにしているならSNSやホームページなど、自分たちの存在を伝えたいターゲットによって媒体を変えることが必要です。
ブランドは育成することが大切
ブランドは作り上げて終わりではなく、継続的に育成していかなくてはなりません。その土台となるのが「ブランド・エクイティ」という考え方です。
ブランド・エクイティというのは経営学用語のひとつで、そのブランドが持っている資産的な価値を意味します。
ブランド・エクイティの構成要素としては、5つあります。
1つ目は消費者がそのブランドに抱いている忠誠度である「ブランドロイヤルティ」。ブランドロイヤルティが高くなると、ブランドに対する「こだわり」が強いお客様が増え、そのブランドのサービスを利用する可能性が高くなります。
2つ目はブランドネームの認知度。ブランドネームが認知されるほど、消費者に選んでもらう機会が増えるといえます。
3つ目は消費者が商品・サービスに対して認識している品質「知覚品質」。
4つ目は、ロゴや企業名などそのブランドを目にした時に想起される全てを意味する「ブランド連想」。ホテルや旅館のブランド名を聞いた際に連想されるイメージになります。
5つ目は「所有権のある資産」これはブランド以外の無形財産をいい、特許や商標権などを指します。
これら5つの要素を意識しながら、商品開発やサービス品質の向上に努め、自分たちのサービスが常にお客様を満足させ続けているか確認し、改善点があるようならさらによいサービスを目指す。
このようにしながら時間をかけてブランド・エクイティを強化し、ブランドを育成していくことが大切なのです。
ブランド戦略を立てるには、自分たちの強みからお客様のニーズ、どのように受け止められるのかまで、様々なことを考慮して、自分たちを一番良くアピールできるようなブランディングを行うことが大切です。ブランド戦略は一過性のものではなく、長い時間をかけて醸成していきましょう。
※2019/10/27公開の記事を転載しています
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