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こんな時だからこそ夢は大きく。|観光マーケティングプランナーのちょっと視点を変えた連載コラム016

先月はBABYMETALの海外進出よろしく、時には「二筋縄」思考が大切、というお話を紹介させていただきました。今回も引き続き、その「二つ目の縄」のお話です。

仕事柄、たくさんの街や温泉場で、たくさんの旅館・ホテルに宿泊させていただき、さまざまなお風呂に入り、土地それぞれの四季の味を堪能させてもらい、色々なタイプの客室に泊めていただいてきました。そうした中でつくづく感じることが、ベースマーケットの大切さ、ということでした。

伊豆や箱根、富士五湖周辺や鬼怒川といった観光地は日本最大の経済圏である首都圏をベース市場として抱えています。新しい生活様式に合わせて人々の旅に対する意識も「安(心)・近・短」という傾向が高まっており、よりこのベースマーケットの経済状況がどうか、ということが重要になってくると思われます。

個人的な印象で恐縮ですが、旅館・ホテルの頑張り度とこのベースマーケットの相関は実はそれなりに深いと思っています。

ビジネスとしてドライに考えれば、設定した料金以上におもてなしに力を入れる必要はありません。きちんとプライスを価値として共感いただけるサービスや料理など、価格相応の商品設計で十分な訳です。

が、地方のホテル旅館、つまりベースマーケットの経済圏が限られているエリアの施設では、自ずと距離感のあるしっかりした経済圏のマーケットを狙うしかなく、恵まれたベースマーケットを持つホテル・旅館よりも相当頑張っている施設が多い印象があります。

ああ、この旅館がそのまま伊豆にあったら、どんなに繁盛するだろう。ああこのホテルのお風呂から富士山が見渡せたら、どんなに素晴らしいだろう。ああ、こんなに若いのにきちんと料理紹介ができる女性社員が箱根の旅館で働いていたら…等々。

勘違いされては困りますが、もちろん伊豆・箱根や鬼怒川等、首都圏近郊観光地の旅館・ホテルが努力不足、と言っている訳ではありません。

首都圏や経済力に富んだ地方都市からアクセスが悪いエリアの旅館・ホテルには、本当にそのマイナスをカバーするため、さらに一段上の商品・サービス提供を掲げ実践している施設が多く、同じような観光マーケットに詳しいプランナーと話をした際に、同じような印象を聞きました。

さてここからが「二筋縄実現夢プラン」のお話です。

日本旅館のスタイルは日本人の生活スタイルに併せて変化してきました。今や主流は和室にふとんではなく、和洋室にローベッドスタイル。食事もゆったりイスに座って食べたい、というニーズも多いのではないでしょうか。

しかしながら旬の地物を取り入れ、いわゆる洋スタイルのホテルとは異なる「一泊二食」付の食事提供、大浴場・露天風呂などで浸る温泉の湯の滑らかさ、そしてロビーや館内を彩る季節の花々やそっと焚かれたお香の匂いなど、旅館は今も日本文化を色濃く反映しています。

新型コロナウイルス感染症の拡大により残念ながら大きく減少してしまったインバウンドのお客様ですが、そうした日本文化に触れ、体験できることを魅力と感じていた外国人ゲストは決して少なくなかったと感じます。

そんな日本文化を体験できる旅館が、日本にあるそのままの姿で、例えばハワイやバリにあったらどうなのだろうか、と実はずっと昔から考えていました。

すでに海外でも運営されている旅館もあり、例えば国により大きく異なる食材で日本と同じような日本料理を提供することや、当然サービス係などお客様に触れ合うスタッフも現地で採用し、教育が必要だったり、おそらく考えている以上に大変な事は想像するに難くありません。

日本とは大きく異なる建物に対する法規制もあり、そもそも同じものを再現するのは不可能かもしれません。決して規模の大きな旅館ではなくいわゆる離れ形式の小宿で十分ですが、もし海外の観光客が多い地域にそうした日本旅館が存在していたら、どんなに素晴らしいだろう、と。

日本文化のショーケースたる旅館が、日本文化を丸ごと海外で披露し、且つビジネス化する。当然カンタンなことではないと思います。

諸外国に遅れてやっと日本でも医療関係者からワクチンの接種がスタートしました。が、まだまだインバウンドのお客様が自由に再び旅行できるようになるのは2年から数年必要と予測されています。

それならこちらから日本スタイルをそのまま海外に持っていき、そこで日本旅館の魅力を疑似体験させてやろう。そんな二筋めの縄を夢に、日々の業務に取り組む。一見不可能に思えることこそ、チャレンジへの応援者はたくさんいると思います。

※2021/03/24公開の記事を転載しています


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