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人材支援のスペシャリストに聞く、旅館ホテルにおけるスムーズな外国人材導入のヒケツとは?

コロナショックが明けた後から、人手不足の顕著化が大きな課題となっている旅館ホテル業界。

これにインバウンドの急速な回復も重なって、外国人スタッフの拡充への注目もますます高まってきているのが現状です。

ひとことで外国人の採用と言っても、具体的にどうアクションを起こせば良いのかとお悩みの宿も多いことと思います。

今回の記事では、旅館ホテルでのスムーズな外国人採用を実現するためにはどうしたら良いのか、またどんな点に留意すべきかなどについて、一般社団法人 静岡登録支援協会の代表理事・土屋真一さんに幅広くお話をお聞きしました。


Q.今、日本の旅館やホテルではコロナ後の人手不足が顕著となり、外国人の採用に積極的な姿勢を持つ宿も増えています。

そんな宿が外国人を採用するのには、どんな手段があるのでしょうか。

日本の企業が採用可能な外国人人材の在留資格としては、現在、5年間の就労が可能な「特定技能1号」、永続的な就労および家族の在留も可能となる「特定技能2号」、そして指定された業務に限定して就労できる「技能実習」などがあります。

このうち「技能実習生」は、各現場での実際の労働環境や、技能を習得できているかどうかの実態などに様々な課題が生じたことから、今まさに所管官庁の見直しなども含めた抜本的な改革が進められているため、まだその内容が詳らかになっていないのが現状です。

このため、旅館やホテルがこれから外国人を採用する際には、まず「特定技能」の枠をメインとして考えるのがベターだと思います。

代表理事 土屋氏

Q.特定技能枠で外国人を採用することのメリットとは?

従来の技能実習生制度では、就労後3年を期限として人材はそれぞれの母国に帰国することとなっていました。雇用する側の企業としてもせっかく手間暇をかけて仕事を覚えてもらった人材が、3年後には帰国してしまい、その穴を埋めるためにまた新しい人材を一から育てなければいけないというジレンマがありました。
しかし「特定技能」枠は、この3年間の技能実習生制度を経て一度帰国した人材が、再び日本で働くための在留資格(一部のケースを除く)となっているため、日本語が堪能な上に日本での生活にも慣れており、さらに日本で働きたいという強い意欲を持った人材だと言うことができます。
初来日した外国人のように日本語や日本での生活、仕事のしかたを一から教える必要もないため、旅館やホテルのスタッフとしても、ごく普通の日本人とほとんど変わらない受け入れ方ができます。
 

Q.現在の採用支援活動はどのような状況でしょうか?

コロナ後はどの業種も人材不足が顕著になり、継続的に外国人人材へのニーズが高く推移している状況です。
関東から中部圏を主な活動エリアとしている私ども静岡登録支援協会では、こうした人材環境を受けて日々活発な採用支援を展開しており、直近の10月度では伊豆エリアだけでも5−6名の採用支援を行っています。
サービス業などではすでに外国人スタッフの存在は一般的になり、日頃から私たちが目にする機会も増えてきていますし、伊豆地域の旅館ホテル業界でもこれからますます外国人を採用するケースは増加していくことと思います。
 

Q.旅館ホテル側として、なにか準備しておくことはありますか?

まずは特定技能外国人の基本的な枠組みについて知っておいていただくことがポイントかと思います。
特定技能外国人1号には、受け入れの対象分野として12の業種が指定されています。
旅館ホテル業界に向けては「宿泊業」という業種が設定されていますが、業務が多岐に渡る旅館ホテルではその他にも食事提供や接客、調理補助などが行える「外食業」や、客室や館内の清掃業務を行える「ビルクリーニング業」などの業種も採用枠としての視野に入ってくると思います。
またインバウンドの復活を背景に「海外からのお客様と自由に話せるスタッフが欲しい」など、宿ごとの事情もあるかと思います。
<在留資格「特定技能」の12業種一覧>
●宿泊業 ●外食業 ●ビルクリーニング業 ●介護 
●素形材産業・産業機械・電気電子情報関連製造業(2022年4月に統合)
●建設業 ●造船・舶用工業 ●自動車整備業 ●航空業 
●農業 ●漁業 ●飲食料品製造業
 

Q.外国人の採用に際して、企業側が心がけておくべきこととは?

先にもふれたように外国人とは言ってもすでに日本での生活経験がある人材ですので、言葉や指示もおおむね日本語が通じますし、買い物や病院、旅行やレジャーまでを含めて日常生活にはさほど問題はありません。
日本人を雇用するのとあまり大きな違いはないのですが、人種による偏見などについては少し細かく目を配っておいていただければと思います。
企業としてはもちろんウェルカムな受け入れ姿勢だとは思いますが、社員一人ひとりの言動はまた別ですので、配属予定の部署などには予めその旨をしっかりと伝えて、合意を形成しておいていただくことでよりスムーズな受け入れが実現でき、ひいては企業への貢献度もより大きなものになることが期待できます。
また外国人が日本での就労を果たすには一定の初期投資額を必要とすることから、従業員用の寮や社員への食事提供など自分の支出を減らすことのできる生活補助制度があると非常に喜ばれることは予め知っておいていただいた方が良いでしょう。

採用支援した外国人が雇用先の社員とともにレジャーを楽しむ姿

日本での就労を希望する人材は、日本で高い収入を上げて母国に仕送りをしたい人、高度な技術を身につけて帰国後の自立に役立てたい人、さらには過去の日本滞在経験からふたたび日本での生活を望む人など、一人ひとりがそれぞれ様々な来日理由をもっています。

しかしそこに一つだけ共通しているのは、数多くの国の中からこの日本を選んでいるということ。

その誰もが「日本が好きだから、日本に住みたい、日本で働きたい」という強い想いを持っていますから、その能力や資質は非常に高く、また「少しでもたくさん働きたい」と意欲の点においても日本人に勝るとも劣らないものを持っています。

こうした優れた外国人材が秘めている大きな可能性を、旅館ホテルという職場で花咲かせていただき、働く側と雇う側の相互にメリットのある「WIN-WIN」の関係性を作り出していくことが私たち静岡登録支援協会の役割です。

良好な環境づくりのためにできる限りの支援・サポートをさせていただきますので、些細なことでもぜひお気軽にご相談ください。

静岡登録支援協会は「一人ひとりを大切に!」をモットーとし、日本への在留を希望する外国人と、受け入れ側の企業などをつなぎ、相互の理解や交流の促進を支援しています。

<静岡登録支援協会の主な事業>
(1)外国人に対する職業生活上、日常生活上又は社会生活上の支援の実施
(2)外国人に対する日本語や技能に関する教育及びコンサルティング
(3)国内法人等の海外進出及び海外法人等の国内進出に関する支援及びコンサルティング
(4)文化、スポーツ、健康、介護、福祉、保健などに関するイベントの企画、制作、運営及びコンサルティング
(5)外国人や多文化共生社会に資する広報啓発活動の企画及び実施
(6)外国人や多文化共生社会に関わる各種調査研究
(7)上記に附帯関連する広範な事業

▶一般社団法人 静岡登録支援協会

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※2023/11/16公開の記事を転載しています


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