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7月グランドオープン!新たなアイデンティティとともに誕生したイル・アズーリのリニューアルプロジェクト

Vol.013 西伊豆リゾート イル・アズーリ  総支配人 山下圭三

西伊豆・堂ヶ島の絶景の真正面に位置し、青い海と大空の中で自分らしいくつろぎを楽しめるホテル、イル・アズーリ。

2021年7月にオープンを迎えたこのホテルのリニューアルプロジェクトに際し、全館のマネジメントを一任する総支配人としてオーナーから白羽の矢を立てられたのが、ヒルトンホテルやウェスティンホテルなど数々のグローバルホテルチェーンでマネジメントや経営再建などの豊富な実績を持つ山下圭三さん。

団体向けの温泉ホテルから個人向けリゾートへと生まれ変わった新たなホテルの誕生について、お話を伺いました。


今回のリニューアルプロジェクトには、どの時点から参画されたのでしょうか

プロジェクトそのものの立ち上げ時期から携わっています。私はこれまでに数々のホテルのリニューアルや再建に携わってきた経験があり、このリニューアル構想のスタート時点でオーナーから「一緒にやらないか」とお声をかけていただいたんです。

そこからオーナーと繰り返し議論を重ねて、新ホテルの方向性やコンセプト立案、ネーミング、サービス形態から人材計画まで、ゼロベースから一緒に創り上げてきました。こうしてできあがったのがイル・アズーリ。その名称は「紺碧」を意味するイタリア語に由来しています。

オーナーが最初にこの地を視察した時、このホテルから見る広大な海と空からイメージしたのが著名リゾート地のイタリア・カプリ島なんです。また、ここにはカプリ島を代表するスポット「青の洞窟」とよく似た天窓洞もすぐ近くにあります。そんなモチーフを活かしてカプリ島のリゾートホテルのような、至上のステイをイメージしたのがこのプロジェクトです。


多彩な経験を持つ山下さんの、伊豆エリアでの初チャレンジとなりましたか?

これまでに全国各地で仕事をしてきましたが、伊豆は初めての地域なので正直を言うとワクワクしていました。

お客様がどんなことを求めていらっしゃるのか、競合状況はどうなのか、また地域の環境や文化面は?など、まったく未知のところからスタートしたわけですが、この地に来て自分の目でつぶさに確認してみると、特に首都圏からのお客様の来訪が非常に多いことも実感できて、こちらがきちんとした体制を整えることさえできれば十分に期待ができるという確かな手応えがありました。


温泉ホテルから、欧米型リゾートへの転換について

皆さんご存じの通り、旅行のスタイルそのものがかつての団体主体から個人・グループ旅行へと大きく移り変わっています。

イル・アズーリの前施設だったアクーユ三四郎様はいわゆる温泉ホテルとして長年営業されていたわけですが、私たちはまずこれを個人・グループ向けのホテルへと大きく生まれ変わらせる必要がありました。

グローバルホテルチェーンが提供するくつろぎの価値は「お客様のニーズに合わせた自由な時間の提供」にあります。お客様の秘めたニーズを汲み取って、至れり尽くせりのおもてなしを提供する旅館とは、この点で根本的にサービスの位置付けが異なるんです。

イル・アズーリでも必要以上の接遇をせず、海外のリゾートのようにお客様の自由な動きを大切にすることを重視しています。ウェルカムドリンクから夕食時のドリンクまで、お好きなお飲み物を自由に何度でも楽しめるフリーフロースタイルでの提供を行っていることなどがその一例ですね。

また、これにはスタッフの負担をより少なくするという副次的な効果もあります。

特に西伊豆は他県からの資本があまり入っておらず、周辺に個人向け旅館ホテルが少ないこともあって、必要なスタッフの確保が当初からのネックだったのですが、この課題を解消する意味でも大きく役立っています。

イル・アズーリではフリーフローにしてもビュッフェにしても、日本旅館のように言わなくてもやってくれるサービスから、ゲスト自身の能動的な楽しみ方を最優先に考えて、それをスタッフが適切にサポートするサービスへと転換させたと言っていいかもしれません。

先にも触れましたが、この地域はこうしたサービスを提供する温泉旅館ホテルが大多数ですから、その意味でもこのホテル独自のアイデンティティとして差別化できているのではないかと思います。


2021年7月のオープン後、これまでのお客様の反応は

イル・アズーリにお越しいただくお客様は以前のお客様とはまったく客層が異なります。以前の客層はミドル層からシニア層が主体でしたが、この夏を見ても20代30代のお客様が非常に多く、秋以降は40代のお客様も増え始めてきている状況です。

ホームページも我々の目指す新しいリゾートのイメージをしっかり再現できていますし、実際にこのサイトを見て予約する方がほとんどですから、従来のお客様にも「これまでの施設とはスタイルやサービスが異なる」という印象・認識でご覧いただけているのではないでしょうか。

名称はもちろんハードもソフトもすべてを一新し、まったく新しいお客様に向けてのアプローチを展開した結果が如実に客層の変化として表れていますし、同時にこうしたマーケットの取捨選択こそが新しいブランドの育成・維持にもつながっているんだと思います。

実際のお客様の動きも上々で、7月のオープン後からまだ数ヶ月にも関わらず、すでに複数回ご来館されている方も多々いらっしゃるなどリピーターが劇的に増えてきています。

オープン後ずっと行っている満足度調査でも非常に高い結果が出ていますし、「必要なサービスだけを提供してくれるので、余計な気遣いをすることなく自由にゆったりと過ごせた」というお声もいただくなど、お客様の旅のスタイルへの想いを大切にするという方向性への確かな手応えも感じています。


総支配人としてどんな点に配慮されていますか?

総支配人としての私の立場は、マーケター、バイヤー、人事、経理など多方面にわたり、全館のマネジメントから現場サポートまでありとあらゆることにタッチしています。

例えば数値的な管理では、私自身が組んだオリジナルのシステムによって、日ごとの客数や消費単価からFLコストなどまでのリアルな数字を可視化しています。アウトソーシングで対処すると大きな予算がかかってしまうところですが、自分でシステムを組んでいますから最小限の投資で効率化と省力化を図ることができていると思います。

また、このシステムでは全員がつねに現況を把握共有できるため、会社のめざす方向性と、スタッフの認識や具体的な動きに乖離が生じないよう状況に合わせてつねにタイムリーな対処ができることもメリットですね。


今後についてはどのような展望をお持ちですか?

イル・アズーリでは少人数のスタッフでの運営を行っていることもあって、一人一人のスタッフが高いモチベーションを持って効率的なサービスを提供することが必須になります。

もちろん私もそのスタッフの一人でもあるわけですが、私が信頼する数人のブレーンを主軸に、すべてのスタッフが自ら考えて自ら対処できるようできるだけ自由な裁量を持たせるように配慮しています。

また、スタッフに異業種から登用した人材が多いのも当館の特徴です。ホテル業の経験が少ないことはマイナスに捉えがちですが、逆に先入観がないことが、目指す姿の実現に向けて自由に取り組む姿勢に大きく寄与してくれていると思います。

この姿勢を大切にしながらもう少し経験を積んでいけば、スタッフそれぞれがきっとめざましい成長を遂げてくれるだろうと、とても期待しています。
ホテルとしてサステナビリティを実現していくにはムリとムダが一番の大敵になりますから、良い意味でつかず離れずのスタンスを維持し、あれもこれもと欲張らずに、できることから一つ一つ確実に成し遂げていく姿勢は何よりも大切だと思います。

現在のオープン直後を第一フェーズとして、当初想定したブランディングの進捗度やスタッフの成長などのタイミングを見ながら、第二フェーズの展開に向けて、今は期待とともにさまざまな構想を練っているところです。


■プロフィール
山下圭三(やました けいぞう)
株式会社ひとものがたり 代表取締役

ヒルトンホテル、ウェスティンホテル、星野リゾートなど国内外の名だたるホテルや、著名テーマパークでの豊富なマネジメント経験と、経営再建・リニューアルでの数々の実績を持ち、現場から経営までを広く多彩な視野で見渡す総支配人として、イル・アズーリの立ち上げを力強く牽引する。

■会社情報
西伊豆リゾート イル・アズーリ
2021年7月16日グランドオープン
公式サイトはこちら 

※2021/11/30公開の記事を転載しています


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