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会津若松の東山温泉・芦ノ牧温泉が、次代のにぎわい創造に向けて「温泉地域景観創造ビジョン」を策定

【今リポ!】今、伝えたい!最前線リポート Vol.008

自然と歴史が美しく融和する福島県会津若松市は、国内を代表する観光地のひとつで、二つの湯の町を持つ温泉郷としても知られています。

会津若松市の中心地から車でわずか10分程の場所に位置する東山温泉は名僧・行基によって発見されたと言われ、奥羽三楽郷にも数えられる歴史ある温泉郷。竹久夢二や与謝野晶子などの文人・墨客にもこよなく愛され、春は桜、初夏の新緑、秋は紅葉、冬の雪見風呂。四季折々の自然の魅力で数多くの観光客を魅了し続けています。

そして会津若松市の南に位置し、豊かな山と緑の素晴らしさを満喫できる芦ノ牧温泉は、かつては幻の温泉郷とも伝えられた千数百年もの歴史を誇る名湯。「出会いの湯滝」や「子宝の湯」「足湯足ポッポ」「散策遊歩道いちいの小路」などで、多彩な旅の楽しみが揃ったエリアです。



1.次代の会津のイメージを描き出すプロジェクトがスタート

しかし、そんな長い歴史と名声を誇る会津の二つの温泉郷も、旅のスタイルが団体旅行から個人化へのシフトが急速に加速するにつれて、個人客を受け入れる環境の整備が追いつかないという弱点が目につくようになっていました。

未来の観光客に支持されるためにはどうしたらよいのか?地域の方々が現状を直視した上で挙げた改善点は、街歩きのポイントである「景色」の整備とそれによる「にぎわい」の活性化、そして地元の人だけが知る「地域の隠された魅力」を、旅人に向けて発信することの重要性でした。

この課題改善を主題として、会津若松がこのほど街ぐるみで取り組んだのが「温泉地域景観創造ビジョン策定」プロジェクト。

具体的には、東山・芦ノ牧両温泉地域にある老朽化した空き旅館やホテルなどの対処を含めた地域の景観対策を行うなど、現状の課題を抜本的に改善するとともに、今後の温泉街が目指すべきビジョンを定め、めざす街の姿を具体的に描き出すことで、未来に向けて温泉街の魅力を向上させていこうとする計画です。


2.関係者によるワークショップと議論を繰り返し、めざす未来像をより明確に

事業のスタートにあたって、まず着手したのは現状の徹底的な調査とその結果の分析でした。

東山温泉街および芦ノ牧温泉街の詳細な現地確認と地域関係者へのヒアリングなどを実施することで具体的な課題の数々を抽出し、その分析と整理を行ったのです。

そして「温泉地域活性化検討会」を設立し、浮かび上がってきた課題を解決するために両温泉地で計10回にわたる活性化ワークショップを開催。

景観対策の先進的な事例を参考としながら空き旅館の撤去などについての景観改善手法を検討し、同時に両温泉地のマーケット分析を重ねながら、自然資源・歴史資源・モノ資源・サービス資源の各分野で「何に」「どう」注力すべきかを入念に絞り込んでいきました。

これらの取り組みを通じて両温泉それぞれの「将来的にお客様に持っていただきたいイメージ」を固め、それを軸とした「温泉地域景観創造ビジョン」がまとめ上げられました。

計画はより実証性の高いものとするため、将来的なKPIも設定。また、この目標を達成するための運営シミュレーションも行うなど、かけ声だけでなく現実の事業として成り立たせるための細心の配慮も施されています。


3.「会津の湯町」と「会津の奥座敷」、二つの温泉郷のアイデンティティを再確立

こうしてまとめられた両温泉の未来ビジョンは次の通りです。

東山温泉は 「会津の湯町」としての立ち位置の確立をテーマに掲げました。

会津若松市の観光の主役である「鶴ヶ城」から車で数分という東山温泉の立地は、ほぼ「街中」と言え、城下町の中における「御殿湯」「湯町」という立ち位置に当たります。

こうした背景を受けて、東山温泉は「会津若松の市街観光の大きな目玉」としてのポジションニングを確立することを目標とし、「湯町としてのしつらい(景色)」をしっかりと整えることをその計画の骨子としています。

また、この姿勢を多くのお客様に伝えるために温泉郷としてのコンセプトを『遊歩』(仮)とし、「会津にこの歴史あり ゆえにこの東山温泉が生まれた」という歴史に基づいて、東山温泉で最も特徴のある「湯川と橋」を活かした景観再生と維持に注力。

「会津の湯町」の価値を伝え、愛される景色の創出を図っています。


一方の芦ノ牧温泉 のテーマは「会津の奥座敷」です。

阿賀川の扇状地にあり川の流れや雄大な山並みを望める静かな雰囲気や、深い渓谷に沿って連なる芦ノ牧温泉街の佇まいは、まさに「奥座敷」と呼ぶにふさわしい趣。

散策で30分ほどの小ぢんまりとした温泉街全体の景観と施設を統一イメージでまとめ上げることで、お客様が自然に「湯上がりに歩きたくなる、旅の風情」を提供していこうと企図。そのコンセプトを『楽歩』(仮)と位置づけました。


4.個人観光客に「行ってみたい」と思わせる、美観と魅力を形成するために

それぞれの嗜好や好みによって、多彩な旅のスタイルを自由に選ぶのが個人の旅の基本スタイル。

一人一人の旅人が「行ってみたい」とその魅力を感じ取り、また実際に行った後も「素晴らしい感動と体験に出逢えた」と深く想い出に残る観光地であるために、印象を大きく左右する景観の整備は必須です。

旅行代理店やマスメディアによる情報発信が主流だった団体旅行の時代から、個人旅行の時代へと移り変わって旅のカタチがよりいっそう細分化・多様化した今。一人ひとりの旅の目的や趣味嗜好、そしてビジュアルが与える印象は、旅先選びを大きく左右するファクターとなっています。

webサイトやSNSなどを主体として美しく感動的な景観を発信していくためにも、まず「現実にその光景が存在している事実」は何よりも重要です。

観光地振興のために、次代への戦略立案や情報発信への工夫を凝らしている地域は数多いと思いますが、この会津若松の取り組みのように、観光の原点に返って「その地域が真に魅力的であるか」を、改めて問いかけなおすことも大切なのではないでしょうか。

※本件は事業プロポーザルコンペにおいて、㈱エイエイピー東北支店が受注。2021年7月28日~2022年1月31日に伴走実施したものです。

※2022/04/21公開の記事を転載しています


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