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180分をマーケティング|観光マーケティングプランナーのちょっと視点を変えた連載コラム027

各国の航空業界で激震が走っている。コロナの影響による便の欠航が相次ぐ中、フランスでは列車時間換算で2時間30分以内の国内航空便をすべて廃止する動きとなり、フランスのみならずオーストリア、オランダなど欧米各国が追従する様子だ。

とりもなおさずこれは世界的な課題となるSDGsへの動きである。国内旅行業界において、もっともSDGsにはまるのは「移動による燃料資源の消費と、それに伴う排気量」が最も大きい。

コロナ終息の目途が立たない現状×SDGs=・・・で、掛算すると当面、移動手段は「自家用車」×移動時間は「最大で2時間30分」が、多くの旅行者の選択する大前提となる。現状、最も有力なターゲットは「車での移動時間2時間30分圏内に居住する」ことが導き出される。

逆にそうなれば、ターゲットのエリアは絞りやすい。
当館(又は当地)から180分圏内に円を描き、人口密度の多い主要な市町村を順に選択する。次に過去の顧客リスト(個人でもグループ・団体でも可)から、選択した地域の顧客をセレクトし、その顧客が、「いつ・何の為に・何人で・いくらで」当館を利用したのかを整理してみたい。

これをマップ上に色分け(色分けのセレクト方法は当館で設定)、して、どんどん書き込んでみる・・・すると、必ずある法則(又は傾向)がそのマップ上に浮き出てくると思う。

次の選択は、その法則(又は傾向)に対して、その路線を拡大する戦略をとるか、逆にその法則に手詰まりを感じる場合は、マップ上でカラーの濃いターゲットに対して新しい施策を投入する戦略をとるかを考察する。それが、「価格」なのか「お料理」なのか「旬」なのか「イベント」なのか・・・は当館の得意技を駆使してひねりだしたい。

ここまでは、これまでも何年も行ってきたターゲティングマップづくりの基本法則だと思う。考慮事項は「コロナ」×「SDGs」。ここに新たなかけ算として「個人化」が加わる。
 
さて、「個人」のお客さまの旅の要素は何だろう?「安心・安全」は、何処も一並びに評価の高い施策をとっているので差別化にはならない。「おもてなし」等従業員のオペレーションにさらに負担がかかることは現状できない。「料理」にしても原価や仕入れに影響が生じては意味がない。

そんな手詰まりのなか、後光を射すのが、「着地」になってくる。所謂「当館に来るまでと、来てから、さらに帰路の旅の行程」が旅行者のモチベーションの大きなフックになっているからだ。
 
コロナ禍になっても、「街歩き」のニーズはいまだに高い。ただし、そのスポットには「混んでない処」や「待たずに体験できる」という条件もついてくることも考慮したい。なにより「着地/ランド」は他の要素と異なり原価が掛からない。

さて、ここで活きてくるのが先に作成したターゲティングマップだ。

当館と、ターゲットとして設定した地域との地図上のラインの中に、どれだけの「おすすめスポット」が眠っているかを協議してみたい。ただし、その「おすすめ」に、旧態依然の観光スポットは必要無い。

180分圏内発地の旅行者は、ほぼ地元の方々、その旅行者にとってあたりまえの観光スポットなんぞはなんの新鮮味もない。

個人客が求めている「スポット」とは、当館から60分圏内を基軸に①地域グルメが食べられるお店や道の駅などが一番、さらに、②地元の人しか知らない、その季節しか見られない景勝スポットや、③隠されたパワースポット(物語のある寺社仏閣)などである。

これを、その地域に詳しい社員の皆様で協議しながら、一点一点、概要を書き込みながら①②③ごとに色分けした●を地図上にマークしてゆく。これで、「着地マップ」は完了。

あとは、各スポットの愉しみ方や訪問可能な時間帯(営業時間)・所要時間・所要金額・駐車場の有無・などを加えて書き込み、都合3か所ほどをひとつのライン(道)で結ぶ。

さらに、結んだラインに「テーマ」をつける。「春の食道楽」でもいいし「今だけ絶景スポット巡り」「開運・縁結び街道」など、惹きつけやすいワードを組み合わせる。これで「地域の人がお勧めする〇〇温泉の愉しみ方」が誕生する。

当館に来る旅行者は往路・復路ともに旅の愉しみ方が増える次第。あとは、これらを「ランドマップ」に仕上げて、できれば各コースごとのマップ付きのワンシートまで作成したい。
 
これを発信するのは、やはりWEBが最適だ。自社や自協会のHPをはじめ、旅行系の投稿サイトやキュレーションサイト、SNSを活用して、実際に自分達が体験した内容を動画や画像でアップして拡散させることも忘れずに行いたい。

大切なのは、これを「継続」することである。1~2回行ってみて反応がイマイチだったから・・・とやめてしまうのは「宝の持ち腐れ」を実践してしまうようなもの。
 
継続してストックされた情報は、今後の「個人旅行主流の時代」に大いに役に立ち、実際にマップを利用された旅行者からのアンサーは、今後の地域おこし中核の視点につながる最も重要な「お宝」なのである。

団体旅行の時代が大いに長く続いた日本ならではの太平の世が、今崩れ去ろうとしている。個人という黒船の来襲と戦う「観光維新」に向けて、まず最も有力株であり、リスクのない「着地」から手掛けてみてはいかがだろうか。

ちょんまげだらけの日本を、数年で政治経済そして生活まで180度変えた明治維新は 世界的に見ても類まれな歴史ケースだという。時代は違えど同じ日本人、「やれば、できる!」
 
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※2022/02/24公開の記事を転載しています


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