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「富岳群青」を皮切りにして困難な時代にも独自の発展を遂げる西巻グループの今

【今リポ!】今、伝えたい!最前線リポート Vol.014

静岡県を代表する観光地、伊豆半島。なかでも西伊豆は駿河湾に面した温暖な気候と、戸田から土肥、黄金崎から堂ヶ島、松崎と続く美しい海岸線や、海に沈む夕日が人気の温泉郷です。

IZU WEST COASTとも呼ばれた陽の光に溢れるリゾート地・西伊豆で30年以上、様々な切り口で個性的な宿づくりに邁進する「(有)ウエストクリエイティブ社」と「(株)西巻観光」。二つの個性的な企業を率いる代表・西巻信一郎さん。

「富岳群青」に代表される上質な宿の経営とともに、新型コロナウイルスが蔓延する2021年には3つのアウトドア施設を相次いでオープンさせた手腕が今、注目されています。

コロナ禍を経て、日本人の旅や観光に対する考え方も大きく変わってきました。特に「高付加価値化」という新しい流れが起こり、訪れる人にとっては満足度が高く、受け手の企業にとっては集積性を確保できる方策が模索されている今、「個性が光る付加価値の高い施設づくり」とは。

ユニークで新しい伊豆の旅を提案し続ける、西巻社長にお話を伺いました。


1.ウエストクリエイティブ社」と「西巻観光」という二つの車輪

現在、ウエストクリエイティブ社としては土肥の「世界遺産富士山を望む宿 富岳群青」に代表される高級旅館の経営、一方で西巻観光としてコロナ禍の真っ只中、2021年に3つのバケーションレンタル施設を相次いでグランドオープンさせるなど、独自の開発と施設展開を続けています。

西巻社長が観光業に足を踏み入れたのは今から約30年前、当時両親が営んでいたペンションの経営に参加し、「全国に30軒、年商30億」という目標を掲げました。

20代の頃、2軒のペンションを通して、自ら発案した企画や改装が功を奏し、経営は軌道に乗ります。やがて家族で

  • 2002年 (有)ウエストクリエイティブ社を設立

  • 2005年 意匠の異なる八つの離れ家「無雙庵 枇杷(むそうあん-びわ)」グランドオープン

  • 2011年 富士山と駿河湾を見晴らす 「世界遺産富士山を望む宿 富岳群青(ふがくぐんじょう)」グランドオープン

  • 2018年 堂ヶ島にふたつの棟を往還する六組様限定の宿「繭二梁(まゆふたはり)」グランドオープン

  • 2023年9月には戸田に「富岳群青」姉妹店となる高級旅館が着工する予定です。

一方で2013年オープンの、「Beauty & SpaResort Izu 頰杖の刻(ほおづえのとき)」を有する(株)西巻観光は2021年に設立され、コロナ禍でも

  • 8月、土肥に「VACATION VILLA & GLAMPING BLUE EDEN(ブルーエデン)」グランドオープン

  • 9月、東伊豆・今井浜に「KAWAZU BEACH HOUSE BLUE MOON(ブルームーン)」グランドオープン

  • 9月、小土肥に「VACATION VILLA BLUE ARK(ブルーアーク)」グランドオープン

と相次いで人気のアウトドア施設を開業しました。その後も

  • 2023年 戸田に「VACATION VILLA BLUE LAGOON(ブルーラグーン)」をオープン。

  • 7月に土肥「BLUE EDEN」内に新しいグランピング施設がオープン

  • 今後も土肥に「BLUE NATURE(ブルーネイチャー)」を着工。

また「富岳群青」の真下に、貴賓室のようなバケーションレンタルをウエストクリエイティブ社と初めてタッグを組んで開業予定と、現在も成長を続けています。

「BLUE EDEN」新グランピング施設

 

-ウエストクリエイティブと西巻観光という2つの会社はどのように業務をすみ分けているのでしょうか。

ウエストクリエイティブ社は高級旅館の経営、西巻観光はヴィラ、コテージ、グランピング施設等の経営を行っています。どちらも日常では得られない特別な休日のお手伝いをするという意味では、同じビジョンを持ちますが、長年、高級旅館経営を続けて来て生じた幾つかのジレンマが、西巻観光を立ち上げるきっかけとなりました。

上質な旅館・ホテルは、計画の立案から数えると、どうしても5〜10年かかってしまいます。丁寧にいい宿を作るためには当然の期間ですが、その間 何もしないではいられません。私は社長とは「会社の中でレールを引く仕事」だと考えています。じっくりといい宿を作る一方で、時代の求めに応じた当意即妙な手を打ち続けることはできないか。それが西巻観光を立ち上げたきっかけです。

西巻観光では美しい環境のなかにある施設をリノベーションして、贅沢なヴィラやグランピング施設として提供することを大きな目的としています。

コロナ禍で、家族で出かけられるアウトドアのキャンプ需要が伸び、グランピングやバケーションレンタルの人気が高まったのもいい追い風となりました。

 

2.高級旅館経営から学んだおもてなしの真意「ウエストクリエイティブ社」

-上質な旅館の経営に関して、社長はどのようなお考えで展開されていますか。

2011年富岳群青のオープンの年に、先代の社長である父が60歳の若さで亡くなりました。私は35歳でした。「無雙庵枇杷」「富岳群青」と経営を引き継いだわけですが、最初に考えたのは「スタッフが一生懸命に働き、どの宿も満室なのに、これしか利益が上がらないのはなぜか?」ということでした。

そこで経理を半年かけて徹底的に学びました。人件費や食材原価などつぶさに見て回り、板場やサービス方と話し合いを重ね、独自の経営指針を作り上げました。

お客様に満足していただくこととスタッフの就労環境を整えることを同じと考え、「こういう形で進めていく」と私の意志を伝えました。

また同じ地域で、同じ価格帯の宿を営むことは互いによくないと考え、「富岳群青」に関しては高額の宿泊料に見合ったサービスや食事の提供を思案しました。お客様が求める宿と自身がイメージするサービスをすり合わせることに数年を要しましたが、「富岳群青」という上質なステイタスがうまく確立できたと感じています。

これにはインターネット時代の到来も大きかったと思います。かつて雑誌しか広告手段のなかった時代には、価格やプラン、サービスを一度載せると1年それでやり通すしかありませんでした。しかし現在は口コミなど時代にあったコンテンツを通して、つねに価格やサービスを修正することが可能です。富岳群青でもお客様の評価や意見を常に意識し、真摯に改善努力してきたことが結果につながったと思います。

-現状の伊豆の観光をどのように見ていらっしゃいますか。

まだ私には伊豆全体の観光の行く末を考えられる余裕などありませんが、こと西伊豆に限って言えば、最後のフロンティアとして高級旅館の開発に乗り出すことがいちばんいいように思います。伊豆に名宿なし、などと言われた時代もありましたが、西伊豆は豊かな自然や環境も含めて、セレブが集まる高級な場所となるのが相応しいと思います。

また他の地域には他の地域の素晴らしい特質があり、地域の資源もそれぞれ異なりますから、伊豆全体で括らず、西伊豆・中伊豆・東伊豆・南伊豆の4区画ですみ分けできるブランディングができれば、面白いことができると感じています。

-ウエストクリエイティブ社としての今後の展開をお聞かせください。

近々では、今年2023年9月、沼津市戸田、御浜岬の高台に「富岳群青」の姉妹店となる「富士青藍(ふじせいらん)」が着工します。無雙庵枇杷、富岳群青、繭二梁と展開してきた高級旅館路線の集大成となるような素晴らしい宿を提供できると考えています。

コロナを経て今、首都圏などから豪華な高級バスで土肥へお越しになって、富岳群青を一棟貸し切ってお過ごしになる日本人観光客の方もいらっしゃいます。旅の楽しみ方がまたひとつ進んだような気もしています。これからの新しいレジャー、観光業のあり方を今後もウエストクリエイティブ社を通して考えていきたいと思います。

「富岳群青」客室 沖の嶺

3. これからはもっと楽しいことをしよう「西巻観光」

-ウエストクリエイティブ社と会社を別にした意図をお聞かせください。

上質な接客と料理、時間の提供を旨とするウエストクリエイティブ社に対して、西巻観光は、良質な環境と建物を提供することを主たる目的としています。キャンプやグランピング、バケーションレンタルといったアウトドアを専門とし、お客様自ら料理し、自ら楽しむ場所を提供することが西巻観光の第一義です。

-アウトドア施設に着目された理由はどんなところにあったのでしょうか。

旅館経営を通してここまでやってきて、徹底して頑張ってきた分、これからはそろそろ遊びもあっていいんじゃないかな、と感じたのが大きな転機でした。

年齢的にも、これからはもっと楽しいことをしようと思うようになっていた時期だったのです。

西伊豆には豊かな自然もたくさんありますし、アウトドアなら一通り全部やってみたいと思いました。やったことのないものをやってみないと満足しないという性分もあって、利益が出るかどうかはわからないが、ただ儲かることだけを追求する時代でもないので、チャレンジしてみました。

コロナ禍のソーシャルディスタンスの問題や、家族で野外で遊ぶレジャーの隆盛、キャンプ人気などが背中を押してくれました。

-各地でバケーションレンタルなどの施設も多く見られるようになってきましたが、今後はどのように淘汰されると思いますか。

現在「空き家なら民泊かバケレン」のような傾向が強まっていますが、とりあえずやればいい、では決してないと思います。適当なことをしてはダメ、良質なものを組織立って丁寧に建てていくこと。これは簡単なものではありません。お客様は確かな目としっかりした感覚をお持ちなので、お客様が心から楽しめる場所の提供を心がけなければ、このブームはすぐ終わってしまうでしょうね。

 

4. 時代と常に並走し、つぎの未来へともに

-お話を伺っていますと、社長の打つ手がつねに時代の要請にあったもののように感じられますが、消費者の動向を見、時流を読むコツなどありますか。

私の世代は第二次ベビーブームでいちばん人口が多い世代です。つまり自分が考えること、やりたいことは多くの方が考え、やりたいと望んでいることだと、勝手に思い込んでいるんです。

父母の作ったペンションで、自分だったら「貸切露天風呂を湯巡りで楽しめる宿がいい」「安い価格で客室露天風呂のある宿はないだろうか」そのときの自分が求めるサービスを素直に形にした結果が、多くのお客様に気に入っていただけるサービスとなった、と感じています。

その後も節目節目の選択で指針にしたのは「われわれ世代が今求めているものとは何か」でした。

今でも同年代の妻と話すことはそのまま企画会議のようで、自分たちがいいと思うものこそ、これから求められるものと考えています。

私の後継者となる娘たちには、これからは難しい時代となりますが、どの世代をターゲットとし、どんなおもてなしをしていくか考えて欲しいと願っています。

-最後に、伊豆のなかで様々な切り口の宿を展開される西巻社長の経営に対する基本的な考えをお聞かせください。

自分の仕事はビジネスというより「恩返し」だと考えています。18歳の頃、病弱だった両親を少しでも助けられれば、と経営のサポートを始めました。20代で会社を組織立ったものにし、多くの人の手を借り、お世話になってここまで来ました。ですから、私たちに関わってくださった方々には感謝の思いで、できる限りの恩返しをしていきたい。

日本全国とまではいきませんが、土肥、伊豆の観光業だけは生涯をかけて、ブランド価値を上げ続けていきたい。底上げをすることで、伊豆から出ていかなくていい人が増えるかもしれない。一つの宿を起点に地域がもっと活性化するかもしれない。

いまはそんな風に考えるようになりました。

「BLUE LAGOON」テラス

 ※2023/07/06公開の記事を転載しています


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