見出し画像

ジセキとドアイ|観光マーケティングプランナーのちょっと視点を変えた連載コラム026

動物が出てくる絵本の話ではない。今回は少し、心の持ち方について考えてみたい。

まるで禅僧の修行やジェダイ・マスターへの道のように、せっかくGo to トラベル再開が見えてきた矢先にこの全国的な感染拡大である。

逆にもう慣れてしまった、という方もいるかもしれないが、少し先回復の兆しが見えただけに、朝の来ない夜はないと分かってはいるものの、一体何度これが続くのだろう、と切ない気持ちを抱かれている旅館経営者の方々も少なくないだろう。

昨年発表された経済協力開発機構(OECD)の調査によると、世界の多くの先進国で新型コロナウイルス感染症の拡大によってうつ病などメンタルヘルスを損なう人の割合が以前の2倍から3倍に増加している。日本も同様にうつ病の人の割合は9年前に比べて2倍以上になっている。

これは経済環境の悪化により生活の先行きが見通せなくなったり、思い通りの生活が営めないことによるストレスの増加などさまざまな要因があると考えられるが、身体的な部分だけではない予防の必要を求められているのかもしれない。

その対策の一つが、自然の中で過ごす時間をきちんと持つこと。朝、少しだけ早く起きて公園など緑の多い場所を散歩するだけでも、大きな効果がある、と言われている。が、なかなかそうした時間をきちんと生活の中に組み込むのは難しい、という方も多いだろう。

そんな人にもできること、それが「ジセキとドアイ」である。

何のことはない。ジセキは自責のこと。「コロナが悪い」「苦しんでいるのが分かっているのに手を打てない政治が悪い」。人間はつい原因を自分の外に求めがちである。それが「他責」的な思考である。短期的にはそれでストレスを溜めないことにはつながるかもしれないが、それでは本質的には何も解決しない。

一方「ジセキ(自責)」は、良い結果に繋げられないのには何か自分の中に原因があるのではないかと考え、行動を見直すことである。

特に、多くの社員を抱える経営者や部下を持つ経営幹部の方々には、いくら原因が自分の外にあることであっても、それに対しもう一歩踏み込んで「ではそんな中で自分はどう対処するのか?」という「自責的な考え方」を持っていきたい。

他責的な考え方ばかりしていると、いつか自分の悪い部分だけを見て、人と比べて嘆いたり、上手くいっている人を妬んだりしてしまう。もちろん度を越えて自分を責める必要はないが、原因を自分の中に置き、素直に反省できる人の方が周囲からも愛され、結果何かする際にも協力を得やすいものである。

そしてもう一つが「ドアイ」をコントロールすること。つまり、喜怒哀楽のうち「怒り」と「哀しみ」をできる限りコントロールすること、である。

もちろん自分ひとりの状況であれば大いに「怒り」、こころの底から「哀しむ」のも自由。そこまですべての感情をコントロールする必要はない。が、社会的なポジションにいる時には、感情的な「怒(ド)」と「哀(アイ)」をできる限り表面に出さず内面に収めたい。

自責の考え方同様、いつも明るい雰囲気で楽しそうな人ほど、多くの人から愛され、上からも下からも適切なサポートを受け、上手く行っている経営者が多いと感じる。

宿泊産業というビジネスは、何よりもお客様という相手が存在して成り立つビジネスである。そのため、いくらこちら側が出来る限り冷静に、慎重に対応しようと思っていてもお客様側が感情的になられてしまっているケースも少なくはないかもしれない。

分かり切っていることだが、そんな時にこちらも感情的になってしまうと、上手く収まることはほとんどない。そんな時でも一方に立つ側がきちんと感情をコントロールし、冷静な対応ができれば事態が深刻化したり大きくなったりする前に適切に対応できることも多いだろう。

「あんたに言われんでも分かってるで」とご指摘を受けそうだが、ともすると下を向いたり愚痴をこぼしたくなったりしそうな時だからこそ、心を正しく整えることを忘れずにいたい、と自分への戒めとともに記させていただきました。

▶コラム一覧はこちら

※2022/01/27公開の記事を転載しています


毎週配信をしているリゾLABのメールマガジン「リゾMAGA」。新着記事の紹介、旅行・観光関連のデータやプレスリリースなど、旅館・ホテル業界に関わる方におすすめの情報を届けます。

▶メルマガ登録はこちらから


記事を最後までお読みくださり、ありがとうございます。励みになりますのでコメントいただくのも嬉しく、今後の参考になります。|また、業務ご相談を随時承っております。リゾLAB編集部を兼ねるエイエイピー観光戦略推進部の事業紹介サイト「伴走支援サイト」をご覧ください。