オープンな旅館という新たな価値観の創造、その魅力を支える「Bakery & Table 東府や 足湯カフェ」とは
【今リポ!】今、伝えたい!最前線リポート Vol.003
伊豆で最古の温泉と言われる伊豆市・吉奈温泉。子宝の湯として知られるこの由緒ある温泉地で長い歴史を誇る老舗・東府やが、2010年に装いも新たに「東府やResort & Spa-Izu」としてリニューアルオープンしました。
広い敷地を背景に数々の施設が誕生しましたが、その中でひときわユニークな印象を放っているのが「Bakery & Table 東府や 足湯カフェ」。
宿で使用するパンをすべて自館のベーカリーで焼くのはもちろん、足湯のあるカフェで日帰りのお客様にも楽しんでいただけるこの施設。旅館としては先進的なこの取り組みについて、運営母体であるR&Mリゾート株式会社の企画部門・宿泊営業部門部長桜井大樹さんにお話を伺いました。
リゾートホテルで培ったベーカリーのノウハウを、老舗旅館のリニューアルに活かす
-大人気の足湯カフェですが、どんな経緯で立ち上げたのでしょうか
私どもの会社では以前から新潟の「赤倉観光リゾート&スパ」の運営を行っているのですが、このリゾートホテルでは1937年から長きにわたって培ってきたパンづくりの技術をいかして自館のベーカリーで焼いたパンがお客様に好評を博してきました。
2010年に老舗旅館の「東府や」をリニューアルオープンさせるにあたって、旅館にこれまでにない新たな価値と世界観を生み出すことを狙いとして、赤倉観光ホテルの長い歴史で培ったこのベーカリーの技術とノウハウを盛り込んだ施設を創り上げたというのがそもそもの経緯です。
オープン時に、ベーカリーで焼いたパンを宿泊客はもちろん日帰りのお客様にもゆっくりと味わっていただける足湯カフェを創り上げ、お客様からのご好評を受けて、次いで敷地外に「豆乳パン工房」を新設。現在はこの2つのベーカリーで自館のパンを賄い、直販も行っているという状況です。
-足湯カフェの事業としての状況はいかがでしょう
おかげさまで足湯カフェは宿泊のお客様に加えて、伊豆旅行に来られた方の立ち寄りスポットとして、また地元の方々のお気に入りのベーカリーとしても親しんでいただいています。
事業としても好調に推移していまして、おおよそですが宿泊とベーカリーを対比すると約8:2ほどのバランスとなっています。一般的に旅館の収益は宿泊料がその大半を占めていると思いますが、東府やではベーカリーが宿泊と並ぶ新たな収益構造の柱として大きく貢献してくれているという状況です。
このようにベーカリー事業単体でも運営可能なレベルに成長したことから、順次、東府や以外の元箱根・芦ノ湖の湖畔に建つ3階建てのベーカリー&レストラン「Bakery & Table 箱根」や、伊豆ホテル リゾート&スパに併設のベーカリー&カフェ「Bakery & Table Sweets伊豆」へも出店。
さらには初めてテナントとして駅ビル内に出店した「Bakery & Table ラスカ熱海店」など、独立事業としてのベーカリーの展開を図っています。
ホテルのホスピタリティと旅館のおもてなしを融合
-開放的なホテルの文化が、旅館に新たな魅力を添えているんですね
日本の旅館は、家にお客様をお迎えするようなおもてなしが伝統として息づいてきたのだと思います。ですから基本的に「お客様=お泊まりになる方」であり、その他のお客様が気軽に出入りできる空気はあまりありませんでした。
その一方でホテルは、家ではなくいわば公共の場としての歴史を重ねてきました。街の方々がラウンジでお茶を楽しんだり、待ち合わせに使ったりと気軽に出入りできる場として認識されてきたわけです。
旅館の「泊まる」文化、ホテルの「交流する」文化、その双方の良さを融合させることで「オープンな旅館」という新しい価値を生み出そうとしたのが、この東府やResort & Spa-Izuです。
開発当初は宿を中心に、周辺のまちづくりも視野に入れたプロジェクトとして立案していたのですが、計画の途上で東府やに隣接していた「旧芳泉荘」が入手できたことから、2館の敷地を合わせた広大なエリアに本館と西館、ヴィラスイートと各種の客室が点在し、さらに懐石茶や、足湯カフェ、多数のガーデンとテラス、散策路などが広がる独自の世界感を構築することができたのです。
-その魅力を象徴する足湯カフェ、お客様はどんなふうに楽しんでいるのでしょう
足湯カフェは、旧施設でプールとして利用されていた空間を水のきらめきが楽しめる水盤として新たに整備し、美しい紫の花が咲き誇る藤棚の下に足湯付のテーブルを設えた施設です。
お客様はベーカリーでお好きなパンを選び、このテーブルに座って足湯を楽しみながら自慢のパンを味わい、談笑のひとときを過ごしていただけます。
先にもお話ししましたが、旅館としてはまだ珍しいと思うのですが、足湯カフェは日帰り客や地元の方々に気軽にご利用いただいています。
足湯カフェの周囲には一面の芝生の広場「東府やガーデン」や「桜テラス」などがあり、随所に設置したイスやテーブルでゆったりとお食事を楽しむこともできます。またこちらのスペースは一般に開放されているため、観光客はもちろん地元の方や親子連れの皆さんがまるで公園のような感覚でご利用になられていますね。
もちろんお泊まりのお客様もほとんどの方が足湯カフェをご利用になられています。チェックイン後・チェックアウト前のお時間に広大なエリアを散策するなど、ご滞在の時間をゆっくりと楽しまれていますね。
広い敷地内には、子宝の湯の謂われとなったお万の方や、唐人お吉ゆかりの品々、各界著名人の方々の足跡・作品なども数多く遺されていますから、壮大な開放感を味わいながらこうした文化にふれるひとときをゆっくりとご堪能いただいています。
-東府やResort & Spa-Izuのこれからについて、お聞かせください
東府やResort & Spa-Izuのある吉奈温泉は、伊豆の中央を走る伊豆縦貫道から少し入った静かな山あいに位置します。
ドライブで通りがかりに目に付くエリアではありませんので、伊豆に来られた方に「そこに立ち寄ってみよう」と思っていただけるだけの魅力があり、またそれが広く認知されていることが重要になります。
お客様にわざわざこうしたアクションを起こしてもらえる魅力を持つには、これまでのように宿泊客だけを対象とした施設ではなく、立ち寄りのお客様も地元の方も誰もが楽しめる「ゾーン」を創り上げることが重要だと思っています。
ごく上質な滞在時間を静かにゆっくりと楽しみたいご宿泊のお客様も、美味しいパンを食べたい方々も、ドライブの途中で足湯と休憩を楽しみたい方々も、誰もがそれぞれの志向に応じた楽しみをご提供できるリゾート空間の創造。それが東府やResort & Spa-Izuのめざすところです。
東府やで豊かな時間を満喫された方々が「次にはここに泊まってみよう」と、自然にそう思っていただけるようなリゾート空間とおもてなしをぜひこれからもご提供していきたいですね。
東府やResort & Spa-Izu
公式サイトはこちら
R&Mリゾート株式会社
設立 平成16年2月27日
資本金 5,000万円
事業内容 ホテル、レストラン、ゴルフ場、スキー場、リゾート施設開発
公式サイトはこちら
※2021/04/27公開の記事を転載しています
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