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旅館のマーケティング活動を再生する3つのポイント

国際的なイベントも多く開かれ、インバウンド観光客からも注目を集める日本では、特に東京を中心とした都市部でホテルの改築や建設ラッシュが続いています。都市部のホテルが、今後も増え続けることが予想されるインバウンド観光客のために、多言語対応をはじめとするインバウンド観光客向けの取り組みに力を入れている一方で、旅館の状況は少々違うようです。
特に地方では、インバウンドの波に乗り切れないことなどもあり経営環境が厳しくなる旅館もあり、創業100年以上を誇る老舗旅館が倒産するケースも出ています。では、実際に経営が厳しくなってきた旅館は、どのようにして経営の立て直しをしていけば良いのでしょうか。
今回は、旅館を取り巻く環境の変化と、特にマーケティング活動の再生において見直すべきチェックポイントをご紹介していきます。


旅館の数は10年間で25%減少している

厚生労働省の「衛生行政報告例」によると、平成30年3月現在の旅館件数は38622軒で、昨年度から11%、過去10年間では25%も減少していることが分かります。ホテルや簡易宿泊所の数が大幅に増加している一方で、旅館が減少し続けているのはなぜでしょうか。その要因について見ていきましょう。

旅行形態の変化

バブル崩壊によって経済状況が悪化し、職場旅行や招待旅行などが減少し、またインターネットの普及によって個人が手軽に航空券や宿泊施設の予約をできるようになったことで、旅行者のニーズは団体旅行から個人旅行へとシフトしていきました。もともと旅館というのは団体旅行客をターゲットとしているところが多かったため、この変化が大きな影響を与えたことは確かです。

国内の人口減少

少子高齢化の影響で、旅行者の数そのものが減少していることも、旅館にとっては経営を圧迫する引き金となっています。

旅行スタイルの二極化

長引く不景気の影響により、旅行者はコストパフォーマンスの良い宿を好むようになりました。リーズナブルな宿泊プランが増えている一方、同時に高級志向の宿泊客もおり、ニーズは2極化している傾向にあります。

旅館自体の要因

家業として営んでいる小規模の旅館が多いことやまた後継者や人手不足などにより、徐々に前線で働き続ける人の高齢化が進んだことで、時代の変化やニーズに合った新しいサービス作りや宣伝方法を取り入れることが難しく、結果として経営を存続させることが困難になるケースもあります。


ポイント1:広告や宣伝方法の見直し

では、実際に旅館のマーケティング活動の再生を行うにはどのようなポイントに気をつければよいのでしょうか。第一のポイントが「時代に即した広告や宣伝を行う」ということです。宿泊客が宿を選ぶ際の情報収集方法は、テレビCMや折込広告などの受動的な方法ではなく、インターネットなどを活用した能動的な方法へと変わってきています。広告や宣伝においても、インターネットを活用したWebマーケティングが主流になりつつあります。特にスマホの普及でモバイルツールへの広告配信は必須となりました。今までの集客方法にこだわるのではなく、新しいやり方を積極的に導入していきましょう。具体的には、以下の項目が重要になってきます。

インターネット広告の配信

インターネット広告の特徴として、行った広告施策の結果を、数値で管理できる、という点があります。広告の結果を元に、PDCAサイクルを回しながら見直しを図っていくことで、効果的な広告出稿が可能となります。代表的な広告として、リスティング広告、ディスプレイネットワーク広告、ネットワーク広告、動画やSNSを使った広告などがあります。

HPのリニューアルやSNSでの情報発信

何年も更新が滞っているようなホームページは、思い切ってリニューアルをして、積極的に更新をすることも大切です。さらにホームページでの情報は、SNSを活用し拡散するのも良い方法です。Instagram(インスタグラム)やFacebook、TwitterなどのSNSは国内だけでなく世界中に情報発信をするための最適なツールのひとつです。特に写真や動画に特化しているInstagram(インスタグラム)は、文章ではなく、ビジュアルでの訴求が可能なためインバウンド対応がしやすく、国内外に旅館の魅力を効果的に伝えることができます。

OTAでの集客

インターネット上で旅行取引を行う「OTA(オンライン・トラベル・エージェント)」は、宿泊業界にとっていまや欠かすことのできない集客方法のひとつです。例え自社でホームページを持っていて、そこで宿泊予約を受け付けていたとしても、OTAを併用することでより効果的な集客が可能になります。


ポイント2:設備やサービスなどの施設の魅力はどうか

第二のポイントは、「商品である施設の魅力を高める工夫をする」ということです。
自館に来てくれている客層に対して客室がマッチしていなかったり、売り物のお料理が提供しづらい食事会場になってないかなど確認してみましょう。
さらに、新しいサービスの開発や、コンセプトづくりにも取り組み、魅力的な旅館を目指して工夫していきましょう。具体的には以下の項目が重要になります。

設備やサービスへの投資

客室や大浴場など、主力商品といえる施設がターゲットニーズに沿っていなかったり、古い設備で使い勝手が悪く、非効率でタイムリーなサービスの提供ができないなどの状態が、生まれている場合は、段階的に装飾、演出から改装などの投資を積極的に検討しましょう。

新しい料理やサービスの開発

旅行形態の変化に沿って、旅行者のニーズも変わっています。
景気停滞の中でのリーズナブルな旅行を求める層と、高級志向の層への二極化や、宿泊を伴わない日帰り旅行の増加や、テーマやコンセプトを明確にした体験を求める宿泊客も増えています。
そのような宿泊客のニーズに合った新しいサービスや情報発信、魅力的な料理開発、そして自館のコンセプト作りにも力を入れましょう。


ポイント3:無駄な業務がないか見直す

旅館にとってスタッフ全員が重要な「商品」といえます。
第三のポイントは、無駄な業務がないか見直し「業務の効率化に取り組む」ということです。宿泊業界は慢性的な人手不足が深刻な問題となっていますが、限られた労働力のなかで生産性をより向上させるためには、業務の効率化が不可欠です。

業務のIT化

宿泊部門の情報を一元管理できる「PMS」や、インバウンドに対応した客室タブレットを導入することで、フロント業務の負担を減らし効率化を図りましょう。

オペレーション効率化

限られた労働力が無駄なく力を発揮するためには、マニュアルによって業務を共通理解することが大切です。また、旅館内のすべての業務を洗い出し、必要な人員を必要な場所に配置していきましょう。


初めから大きな改善を行うことができなくても、スモールスタートで実行可能なことも数多くあります。上記でご紹介した内容を参考にした上で、まずはすぐに取り組める部分がないかを確認していきましょう。

※2019/10/26公開の記事を転載しています


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