2023年夏、箱根小涌園ユネッサンがリニューアルオープン。より多彩な箱根の魅力を発信する総合リゾートの実現へ
Vol.024 箱根小涌園ユネッサン 支配人 松山元信さん
全国にその名を知られる箱根の一大レジャー施設「箱根小涌園ユネッサン」がこの2023年夏に、2001年の開業以来最大規模となるリニューアルオープンを果たしました。
テーマは「つながるカラフル」。
流れるプールなどが新登場したユネッサンを中心に、4つのゾーンに多彩な魅力が結集した複合体験リゾート施設「ユネッサンリゾート」としての新たなスタートを切りました。
今回のトップランナーでは、2021年に箱根小涌園ユネッサンの支配人に着任し、このリニューアル計画を主導された松山支配人に、プロジェクトの狙いやオープン後のお客様の反応などについてお話をお聞きしました。
-この夏めでたくリニューアルオープンを迎えましたが、支配人の想定どおりのお披露目となりましたでしょうか
このリニューアルは私の着任前の2018~19年頃からスタートしていた計画がコロナ禍によって一時凍結していたものですので、ここでようやく完成お披露目を迎えることができてひと安心しています。
計画を再始動する際には複数社による企画コンペを行い幅広いアイディアをご提案いただいたのですが、実現性についての検証や、業者ごとの得意分野・専門分野などを緻密に検証した結果、最終的に数社への分割発注となるなど、計画の遂行にも紆余曲折が多々ありました。
こうした経過を乗り越えて、概ね当初のコンセプト通りの施設が出来上がり、たくさんのお客様に楽しんでいただけている今の状況は本当に嬉しい限りです。
<箱根小涌園ユネッサン リニューアル概要>
■水着で遊べるユネッサン
大きな窓のある開放的な空間に、流れながら楽しめる温水プール「ボザッピィリバー」が新登場。小さなお子様向けのプール「ポニーラグーン」や、エアスライダー、大人も楽しめる見守りスペースなども揃っています。
■ショップ&アミューズ「たまて箱」
新たに「芝生の広場」と無料の「足湯」が誕生。さらに箱根名産品のショッピングや、イートインコーナーでの軽食、懐かしい「縁日」や最新のデジタルゲームなど多彩な体験ができる施設があります。また5Fリラクゼーションエリアではお寿司やしゃぶしゃぶ、3Fでは箱根西麓牛の焼き肉も味わえます。
■キャンプ&スパ 山の音
誰でも「手ぶら」でキャンプが楽しめるよう、テント・タープ・焚き火台・グリル・食器など必要なグッズ類はすべてレンタル可能。箱根の緑に包まれて気軽に焚き火やキャンプ飯が満喫できます。
■裸でくつろぐ森の湯
箱根小涌園 元湯 森の湯は天然温泉を満喫できる露天風呂や広々とした大浴場が揃った日帰り温泉。 隠れ家のような離れの貸切風呂、別邸「やすらぎ」6室が新設され、うち1室は専用車椅子で温泉を楽しめるバリアフリー対応となっています。
-オープン後のお客様の反応はいかがでしょうか?
オープン後はおかげさまで多くのお客様に来場いただき、現状ではほぼ成功と評価して良いかと思っています。
お客様の受け入れについてはコロナ禍における経験を生かして受付時間などによる制限を付け、お客様の入場の際の待ち時間の解消や混雑の回避を図っているのですが、それでも8月の来場者数は約10万8千人と、入場制限なしで営業していたコロナ前の2016年と同じ過去最大クラスの来場者数を記録しています。
基本的にユネッサンは小さなお子様連れのご家族をメインターゲットとなしているため、今回のリニューアルでもキッズ向けのプールに主眼を置いています。
全周70mの流れるプールに加えてふわふわ遊具やエアスライダーといったお子様向けの楽しいアトラクションが整い、この規模感・サイズ感が親御さんが安心して楽しませるのにぴったりなこと。さらには雨天でも存分に楽しめる屋内施設であることなどが、ファミリー層からのこの高い支持につながったのだと思います。
-観光施設の責任者という立場で、日頃から考えの根底に据えているものは何でしょう
私が常に念頭に置いているのは、「ユネッサンという施設全体をいかに快適に楽しんでもらえるか」ということです。
今回のリニューアルは既存の施設を残しながらのリニューアルなので、古い施設に対しての声はもちろんあるものの、お客様からはありがたいことに総じて高い評価をいただいています。
オープンから20年以上を経た施設ですから、どうしても経年劣化した箇所はあるのですが、しかし施設の古さがそのままお客様の満足度の低さにつながるわけではありません。
より肝心なのは「施設をいかに快適に使っていただけるか」という視点だと思うからです。
その意味でも日頃から古くなった箇所の修繕に務めるとともに、施設をより心地よく使っていただくための努力が必要だと思っています。
例えばユネッサンのようなプール施設ではお客様が裸足で歩くシーンが多いことから、床面をつねに清潔かつ快適に保つことは必須ですし、また特に女性にとってはトイレの使用感なども気になるはずですが、これらは単に施設が新しければクリアできる問題ではなく、私たちスタッフ側がどれだけ日頃からの配慮と工夫を凝らせるかが重要となるポイントです。
すべてのお客様は、満足感を味わうためにユネッサンにお越しになります。
その前提で来場している方が、もしもどこかの施設を不快に感じる場面があったら、その他にどれだけ楽しい体験をしてもその不快感だけが強くクローズアップされてしまうことは想像に難くありません。
それを避けるためにも、施設をより快適に使っていただく工夫や努力を重ねること。また目につきにくい箇所に対しても細やかな配慮ときちんとした対策を施す意識が大切で、それを成し遂げるには私たちスタッフ全員が「もし自分がお客様だったら」という視点に立ち、自分自身の感触を通して「気づき」を見出すことが重要です。
こうした点に目を行き届かせ、配慮することは、直接売上を上げることにはつながらないかもしれません。しかしお越しいただいたお客様の満足度の向上やリピート率の向上には必ずつながるはずです。
見過ごしてしまうことは簡単です。でもこうしたお客様視点での気づきのアクションには、「私たちがお客様をお迎えする姿勢」そのものが表れるのだと思いますから、ぜひこうした姿勢をスタッフ全員に広く浸透させていき、せっかくお越しいただいた多くのお客様にさらに高いご満足を提供できることにつなげていければと思っています。
-ユネッサンでは映画や人気アニメなどとの積極的なコラボ展開をされていますが、その狙いとは?
すでに遊園地などの業界ではコラボ企画というのは一般化していますし、それによる新たなマーケットの取り込みが大きな成果を挙げています。
もともと私たちの施設では、ワイン風呂やコーヒー風呂など企業とのコラボ企画も行っていたため、他業種との連携については前向きに捉えていましたし、箱根エリアではエヴァンゲリオンとのコラボなどの実績もあり、新たなファン層を開拓できるという手応えも十分に感じていました。
こうした経緯から2020年に妖怪映画とのコラボ企画をスタートし、現在に至るまでほぼ定期的な実施を継続しているというのが現状です。
提携先としては映画配給会社、そして関連グッズの企画販売企業がメインとなっていますが、いずれもファミリー層を中心としたユネッサンのターゲットにマッチするかという点を十分に検討した上で決定しています。
またもう一つの視点となるのが、提携先の映画やアニメのファン層がユネッサンの新たな顧客として期待できるかという点です。
これまで実施してきたコラボ展開ではおかげさまで大きな効果が得られていることから、映画やアニメとのコロボに加えて、さらにVチューバーとのコラボレーション企画にも挑戦しようと、今後半年先までの実施計画を固めている最中です。
従来は定番イベントは年間計画に盛り込んではいたものの、期間イベントまでは確定できていなかったのですが、この催事計画を固めることで半年から1年先までの販促企画が目に見えるようになり、施設側の準備やアクションがより具体的に進められるようになってきました。
-今後の「ユネッサンリゾート」の展望や、具体的な計画などがあればお教えください
これまでの歴史を通して、温浴施設やプールとしての箱根小涌園ユネッサンの認知は広く浸透しており、今回のリニューアルを通じて、皆さんが期待している多彩な楽しさや体験シーンをほぼご提供できる陣容が整ったのではないかと思っています。
そして無事オープンを迎えた今、さらにその先の展開として、お風呂以外の楽しみをより充実させるための取り組みに尽力していこうと考えているところです。
例えばキャンプです。キャンプはブームとしての勢いが一時に比べて若干落ち着いてきてはいますが、まだまだそのマーケットには大きな期待が寄せられます。また観光地として著名な箱根には意外なことにキャンプ場が少ないというのも、このジャンルを充実させていこうと考える大きな要因のひとつとなっています。
箱根を訪れる2千万人の観光客の中に、確実に存在するキャンプニーズを確実に捉え、さらに多様な楽しみを提供していけたらと考えています。
そしてもうひとつが、森の湯の拡充です。
ユネッサンはプールや水着で入れるお風呂としての認知が高いため、裸で入れるお風呂の魅力がまだまだ浸透しきっていないことから、森の湯を「大人の湯」としてさらに手を入れていきたいと考えています。
箱根の日帰り温泉施設でも若いお客様の来場が増えてきているなど、「水着には抵抗があるけれど、友達と箱根のお湯をゆっくり楽しみたい」というニーズは確実に存在しています。こうしたお客様を受け入れられる施設として、温泉はもちろん、湯上がりのゆったりと時間をも楽しめるような施設としての拡充を図っていく考えです。
今回リニューアルを果たしたユネッサンに加え、そして7月には箱根ホテル小涌園もグランドオープンを迎えたことで、箱根小涌園ユネッサンは箱根の温泉・自然・食事・体験をより一体的に楽しめる一大レジャーエリアとしての姿が整いました。
今後はこれをベースとして、先にふれたキャンプシーンや大人の湯などの魅力をプラスしていき、数年後にはより多様なニーズに応える一大リゾート化が実現していくことと思います。
ぜひ今後の箱根小涌園ユネッサンリゾートに、ご期待いただければと思います。
■プロフィール
松山 元信さん
箱根小涌園ユネッサン 支配人
1992年、藤田観光に入社。フロント業務を皮切りに営業企画から商品開発、イベント企画や情報発信など広範に渡る業務を経験。その幅広いノウハウを生かして、藤田観光グループ内の企業や施設の改革・リブランディングなどを推進。
2021年には箱根小涌園ユネッサンの支配人に着任し、今回のリニューアルオープン計画を主導しています。
※2023/09/27公開の記事を転載しています
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