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【2024年最新】中国人観光客の受け入れ動向・ニーズを解説

新型コロナ感染症拡大で、2020年からの数年間に激減した訪日外国人観光客は、その後の規制緩和を受けて急速に回復しています。
この記事では、中国人観光客の受け入れ動向やニーズを解説します。


訪日中国人観光客の推移

日本政府観光局の調べによると、2023年12月の訪日外国人観光客は2,734,000 人で、コロナ禍前の2019年12月と比較して8.2%増加しました。

地域別に見ると、韓国からの訪日観光客は215.7%増加となり、大幅な伸び率を示しています。台湾からは14.7%増加、シンガポールは13.3%増加と、多くのアジアの国や地域で増加傾向が見られました。一方で、中国からの訪日観光客は56.0%減少しています。

2023年12月 訪日外客数 (JNTO推計値) (対2019年比)

出典:日本政府観光局「訪日外客数(2023 年 12 月および年間推計値)」

中国の状況がアジアのほかの国や地域と異なり減少している理由は、一体どこにあるのでしょう。

2023年の中国・日本間での出来事が起因

日本を訪れる中国人観光客がコロナ禍前の2019年より減少しているのは、政治的・経済的な出来事が起因していると見られます。

その原因の1つが、原発処理水の問題です。2022年8月に中国から日本への個人ツアーが解禁となり、これ以降中国からの訪日客は増えるものと考えられていました。しかし、その後行われた原発処理水海洋放出の影響で、日本への渡航を自粛するムードになったのです。

また経済的な要因として、中国国内の不動産バブル崩壊による不況も影響していると考えられます。

(今後の動向)2024年末までに中国からの国際線が大幅増便

直近のデータを見ると中国からの訪日客は伸び悩んでいますが、その流れを変える要因もあります。

中国民用航空局(CAAC)は、2024年末までに中国を発着する国際線を大幅に増便すると発表しました。それに伴って日本への国際便も今後増えるものと思われ、このことがインバウンド増加を後押しするのではと期待されています。

中国人観光客が日本を含めた海外旅行に行かない理由

中国国内では、日本だけでなく諸外国への海外旅行全般を控える傾向にあります。コロナ禍が収まりを見せる中、アジアの国々では海外旅行が増えているにもかかわらず、中国人観光客が海外旅行を選ばなくなった理由はどこにあるのでしょう。
中国語のメディアをもとに、独自に調査した結果をお伝えします。

中国国内で過ごすムードになっている

これまで中国人旅行客は海外旅行に、中国にはない大自然や文化、自由なライフスタイルとの出会いを求める傾向がありました。しかし、近年では実際に出掛けなくともインターネットを通じて得られる情報が増えてきました。

一方で、質・量ともに充実してきた国内旅行の人気が高まっています。広大な中国国内には観光資源が豊富にあるため、わざわざ海外へ出掛けることに価値を見いだせなくなっているのです。

これらの要因が、中国国内で過ごそうというムードを生んでいると考えられます。

金銭面での消費意識が変化している

金銭的な面での消費意識が変化したことも、大きな要因です。

中国人旅行者は、旅行の費用対効果を意識するようになりました。海外へ渡航する場合には、ビザの手続き・旅行保険・国際通信費など、国内旅行にはない支出が必要です。さらに、為替変動のリスクも伴います。そうした諸費用の高騰も、中国人が海外旅行から遠ざかる理由の1つだと思われます。

しかしこれは見方を変えれば、日本に費用対効果の高いツアーを提案できれば旅行者を呼び込めるチャンスになると捉えられるでしょう。お得感に訴えられるツアーが求められます。

中国人観光客の求める日本での体験

日本を訪れる中国人観光客は、日本滞在中に何を求めているのでしょう。治安の良さや信頼できる公共交通機関、ここでしかできない体験など、日本に期待する声はさまざまです。
今回は企業で適用できそうなポイントを、中国語メディアからピックアップしました。

清潔感

第1に求められるのは、清潔感です。日本の公共スペースが清潔であることは、訪日観光客から高く評価されています。日本で生まれ育った私達には当たり前のようにも思えることですが、駅・空港・ホテル・レストラン・公衆トイレ・道端など、いたる所が清潔に保たれていると観光客から好評です。

「街にごみ箱が置かれていなくて困った」という声もしばしば聞かれますが、それと同時に日本人が自分で出したごみを持ち帰って処分する姿も話題になります。

清潔感を維持するためには、インバウンドを受け入れる側の努力と、公共スペースを清潔に使用してもらうための呼びかけが重要です。

美食

次に求められているのが美食です。旅行中、日本の美味しい食事を期待する声が多数あります。寿司・天ぷら・すき焼きなどの伝統的な日本食はもちろん、ラーメン・焼き肉・新鮮な魚介類や野菜なども人気です。

日本はミシュランの星付きレストランが多いことでも知られているため、さまざまな料理やワインを楽しむ観光客も多くいます。

不自由なく日本の食文化を楽しんでもらうために、案内やメニューの外国語表記をはじめとするインバウンドへの対応が求められます。

建造物

日本ならではの歴史的建造物にも、根強い人気があります。奈良や京都の寺院をはじめ、各地に残る寺院や神社を訪れたいという観光客が多く見られます。

また、荘厳な城郭建築や、それにまつわる文化・歴史に魅力を感じる観光客も多く、日本の百名城にリストアップされているような地方の城を巡るツアーも人気です。

自然体験

訪日観光客の多くは、日本ならではの自然体験を楽しみにしています。以前は日本の自然といえば富士山が人気でしたが、近年は、これまであまり知られていなかった地方の自然を体験したいという観光客が増えています。

そのほか「大自然の中で天然温泉につかる」「パウダースノーでウィンタースポーツを楽しむ」「美しい渓流での鮎釣りをする」など、中国ではできないような珍しい体験型コンテンツも人気です。

日本国内では、地域特有の風土に根ざした多様な自然体験ができます。まだ注目されていない魅力的なコンテンツを、積極的に発掘していくことも求められています。

アニメ・漫画文化

日本でアニメや漫画の文化に触れたい中国人観光客も増えています。
アニメや漫画を入口にして日本に興味を持った外国人にとって、関連グッズが豊富に揃っているコミックマーケット(通称・コミケ)は憧れの場所です。アニメや漫画をテーマにした美術館や記念館も人気です。

また、有名な作品の舞台となったスポットを巡る「聖地巡礼」も増加しています。とある漫画に登場した踏切や小さな神社に観光客が詰めかけるなど、意外な場所が人気の観光スポットになることもあるのです。

そうしたニーズを拾い上げ、アニメ・漫画の文化に触れやすい環境を整えることが地方自治体や企業に求められています。

ファッション

日本ならではのファッションを体験したい訪日観光客も多くいます。

着物は日本伝統の色柄や小物、着物をまとった時の立ち居振る舞いが注目されています。手軽に和装体験ができる浴衣レンタルも人気です。着付けをしてもらって下駄や髪飾りなどの和装小物を借り、街を散策して記念写真を撮る。そんな訪日観光客が、各地の観光スポットで増えています。

ファッションの中では日本の「KAWAII(かわいい)」も根強い人気で、かわいいの聖地である原宿へ足を運ぶ訪日観光客も多く見られます。ロリータファッションやコスプレも、日本独自のポップカルチャーとして注目されているのです。

まとめ

日本を訪れる中国人観光客の数はコロナ禍の後も低迷している状況ですが、今後は増加が見込まれます。

旅の中で消費されるのは「モノ」から「コト」へと変わってきており、かつて話題になった「爆買い」は姿を消して、日本ならではの体験型コンテンツに注目が集まっています。

日本人にとって意外な「コト」が中国人観光客に喜ばれることも多いため、インバウンドを受け入れる側は入念なリサーチが必要です。新たなニーズをすくいとり、地方創生の鍵ともいわれるインバウンド市場に対応しましょう。


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