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必見!オーバーツーリズムの課題と対策、事例を解説

オーバーツーリズムとは地域や観光地に多数の観光客が押し寄せることです。それによって観光や地域の質を損なう現象も指し、観光公害とも呼ばれます。

持続可能な観光を促進するためには、オーバーツーリズムの問題を解決し、収益や集客につながる考え方を探る必要があります。

 


ホテル・旅館で起こっているオーバーツーリズムの実態

2023年は、数年間続いた外出制限が解除されたことによって、観光地に賑わいが戻ってきました。

同時にホテルや旅館において対応しきれないほどの多くの観光客が殺到し、さまざまな問題に派生しています。ここでは、宿泊施設で起こるオーバーツーリズムについて例を挙げて紹介します。

出典: 観光立国推進閣僚会議決定「オーバーツーリズムの未然防止・抑制に向けた対策パッケージ」

予約対応の煩雑化

観光客の増加によって起こる問題の1つとして、予約対応が追いつかなくなることが挙げられます。特に訪日外国人のお客様が集中すると、対応時の言語や予約方法などが多様化し、対応が煩雑化します。

予約対応の煩雑化を解決するためには、予約システムの導入が必須です。

また外国人宿泊客によって宿泊枠が埋まってしまうことで、日本人宿泊客やリピーターの予約が入らず、固定客が離れることがないようにする対応策も同時に考えなければなりません。

フロント業務への負荷

チェックイン時間に多くの宿泊客が押し寄せると、予約対応だけではなくフロント業務にも負荷がかかります。それに応じて問い合わせや異例対応も増加し、十分な対応ができず、満足度の低下につながる恐れもあります。

フロント業務を軽減するためには、自動チェックインの導入も考えられます。

自動精算機やQR利用のタッチレスチェックインなどを導入することで、スタッフを介さずお客様自身がチェックインすることで、スタッフは直接やり取りする必要がある業務に専念できます。

マナー違反行為
観光客によるマナー違反行為の増加も、観光公害の1つです。
宿泊施設での代表的なマナー違反行為としては、浴場での写真撮影・大声での会話・キャリーバックによる客室内の破損などが挙げられます。
マナーを周知するために張り紙やアナウンスなどの措置をとっても、観光客が外国人だと言葉の壁や習慣の違いによって伝わらない可能性もあります。
外国人観光客にマナーを説明したいときは、タブレットや翻訳機器を導入したりすることも効果的ですが、禁止事項をわかりやすく伝えるピクトグラムを活用したPOPも有効です。

人手不足
対応しきれない数の外国人客が押し寄せると、宿泊施設は人手不足になります。
宿泊客が増えればアメニティの用意や清掃などのオペレーション業務の回数は増加し、現場に大きな負担がかかります。
コロナ禍を機に宿泊業界から離れてしまった人材が戻っていないことも手伝い、観光地における人手不足は大きな課題であるといえるでしょう。
 

各国におけるオーバーツーリズムの実態・対策事例

近年、日本以外の国でもオーバーツーリズムは解決すべき課題です。
ここからは、世界各国のさまざまな観光地におけるオーバーツーリズムの実態と、対策のための取組について紹介します。
それぞれの課題について考えてみましょう。

オランダ
オランダでは、2018年から観光を取り巻く問題について議論が重ねられてきました。それに伴い、オランダの居住者に重きを置くレジデントファーストが唱えられています。
この考えは、観光客によって地域の住民の利益が損なわれたり、居住者と旅行者の間で軋轢が生じたりしていたことを踏まえて掲げられました。
今後はデータの活用と居住者との対話を促進するほか、有害な客層につながる宿泊施設やエンターテイメントを規制するべきという方針も打ち出されています。
出典:J-STAGE「アムステルダム市のオーバーツーリズム対策 - 新型コロナウイルス感染症流行前後に導入された土地利用規制を中心に -」

イタリア
イタリアの観光地として有名なヴェネチアは、本島の人口約5万人に対して非常に多くの観光客が訪れており、その多くがクルーズ船を利用しています。
大型クルーズ船は大量の観光客だけではなく、景観を損なうことやラグーンへの悪影響、波の発生による地盤沈下促進も懸念されていました。
そこでオーバーツーリズムへの対策の一環として、クルーズ船の中心地航行を禁止しました。
出典:国土交通省「環境と観光の両立のための持続可能な観光客受入手法に関する調査業務―報告書―

日本(京都)

京都府では、オーバーツーリズムによって交通機関が麻痺したり、景観が損なわれたりなどの課題が発生しています。また、観光地の近くに住んでいる人の通勤・通学が妨げられるという問題もあります。

京都市は市バスの混雑軽減を目的として、バスの1日乗り放題乗車券の販売を2023年9月30日で終了しました。乗り放題乗車券の利用自体も2024年3月31日に終了予定です。

今後はバスと地下鉄がセットになった乗車券の販売によって、公共交通機関利用者の分散を図ります。

出典:京都市交通局「バス1日券(令和5年9月末で発売停止、令和6年3月末で利用停止)

日本(沖縄)

沖縄県ではオーバーツーリズムによる課題として、レンタカーによる事故の増加や騒音問題、商業施設の混雑などが挙げられます。

今後はコロナ禍による事業の縮小や課題解決に向けて、地域と連携した観光業態が必要です。西表島では自然環境保護のため、島内とその周辺に「一般利用ゾーン」「自然体験ゾーン」「保護ゾーン」の区分を設け、自然資源の無秩序な利用を抑制する取組が行われています。

また、一般利用者向けに26項目のマナーを制定し、それをもとにガイド向けのルールが制作されました。

出典:中小機構「地域主導型観光プラットフォームに業態転換

出典:環境省「西表島エコツーリズム推進全体構想(全体構想)の概要

 

ホテル・旅館がオーバーツーリズムの課題を解決する対策

ホテルや旅館などの宿泊施設がオーバーツーリズムによる課題を解決し、収益機会を逃さず、持続可能な観光事業を実現するためにはどのような方法が考えられるでしょうか。

ここではマーケティング対策として、4つの例を紹介します。

高付加価値化

観光地の混雑を解決する手段として目的地の分散化が考えられますが、宿泊施設は高付加価値化により滞在の目的地を目指すことも可能です。

食事体験や温泉体験などの他、地域の特色を活かした季節の催事や、着物や浴衣などの日本文化に触れる体験などで滞在時間の満足度を高める工夫が考えられます。

このような取組は観光地の混雑だけではなく他施設との差別化にもつながり、収益機会の増加に効果的です。

デジタルツールの活用

外国人観光客への対応を円滑にしたくても、外国語を扱えるスタッフがいないこともあります。そのようなときは、ホームページを多言語対応したり、タブレットによる翻訳を導入したりするとよいでしょう。

チャットボットを利用した問い合わせ機能の整備を行うと、対応が自動化されて煩雑なくり返しの問い合わせに効果的です。また多言語対応したアプリを活用することで、スムーズなコミュニケーションが可能になります。

館内サインPOPの見直し

外国人観光客によるマナー違反の一部には、言葉の壁によって注意書きが分からないという原因もあります。

看板や張り紙、パンフレットなどを多言語化するという対策が考えられますが、多数の言語を盛り込みすぎると視認性が低下する問題も生じます。

より多くの人に伝わるサインを作りたいときは、日本語が分からなくても直観的に理解できるように、ピクトグラムを取り入れるとよいでしょう。

フロントや大浴場、食事会場の入り口などにPOPを設置すると効果的です。

販売対策

オーバーツーリズムが起こる原因の1つとしては、繁忙期における観光客の集中が挙げられます。

時期を分散させるために、価格の差別化やオフシーズンへの誘導を図るプロモーションを行うことも分散化対策になります。

閑散期に掲示物やメニューをリニューアルすると繁忙期に行うよりも負担が少ないほか、リピーターが訪れるきっかけになります。

また、混雑する時期には訪れることが難しい、日帰り客や1人で訪れる人を狙ったプランやサービスを導入することも効果的です。

まとめ

オーバーツーリズムは、日本だけではなく世界各地で解決すべき課題です。

一口にオーバーツーリズムといっても、その原因は人手不足やマナー違反など多岐にわたります。

大量の観光客が押し寄せる状態が長期間続くと、宿泊施設や観光地だけではなく周辺住民へも負担がかかります。また品質の低下により商品価値が減少していくことも防がなければなりません。

オーバーツーリズムによる生活環境・景観悪化は、経済的損失につながる大きな課題です。

今後は地域住民と協力しながら、持続可能な観光事業の実現が求められます。

 ※2023/11/23公開の記事を転載しています


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