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いごこち|観光マーケティングプランナーのちょっと視点を変えた連載コラム002

いごこちは「居心地」と書く。「心地」は「しんじ」という仏教用語にも続く。まあ、要は「心のありかや感情が良い場所」とでも訳せばいいのかもしれない。文学者ではないので、御託はここまで。

「いごこちのいい場所」と「いごこちの悪い場所」の差は何だろう?と考えたことがあり、自分の感性を信じてそれぞれの場所をそれぞれ探して何箇所も何時間も座って周ったことがある。・・・傍目にはさぞかし不気味だったろう。

この実験は面白かった。例えば小綺麗なラウンジでも、高価な絵や置物があっても、どうしても居心地が悪い。逆に、古びた田舎家の一室なのに、何時間いてもイイというほど居心地のいい場所もある。その違い、ひょっとして広さや明るさにナニカ決まった法則があるのか?と、座りながらずっと考えたが、どうにもわからないままいつしか数年が経過していた。

ふと、突然答えが見つかったのが十年ほど前だった。「いごこちを決めるもの」それは、広さや明るさでもなく、置物でもなく、絵でもない、勿論、壁や天井でもない。「視線」だったのである。

例えば、我々は飲食店に入り、座る場所を探すときに、「景色の良い場所」や「他人の視線が気にならない場所」を本能的に探しだす。
前者がプラス要因で、後者がマイナス要因だ。このプラス×マイナスをタシヒキしながら、「せっかくの時間を過ごす場所」を物色する行動をとる。・・・実はここに大きな答えがあった。

「景色の良い場所」とは、その視線の先に「やすらぐナニカ」が必ずあること。「ナニカ」とは、景色でも花でも家具でも絵でも光でも何でもいい。ずっと眺めていても飽きない秀逸なナニカである。

「他人の視線が気にならない」とは、視線がこちらに来ないことが確信できるしつらいで、決して壁や衝立のような視線を遮るものが自分と他人との境界にある必要はまったくない。

そのプラス×マイナスがプラスに傾くほどに、「いごこちの良さ」に面白いように転じてゆくのである。

レストランやホテル旅館などの食事処で、衝立がどこかしこに並ぶさまを眼にすることがある。「他人様の視線が気にならないように」というおもてなしだろう。それでは実際、食事をしているお客さまが、果たして衝立に囲まれた空間で「せっかくの時間を美味しく」過ごせるだろうか?少なくとも私はイヤだし、よいご感想を頂ける要因には決してならないと思う。

このプラス×マイナスをチェックする方法はある。ジブンで実際にそこに座って、食事なりをしてみる。料理の味が美味しくなるまで、目に見える自分の周りの環境をどんどん変えてみることである。それだけで、「夕食がとても落ち着いて美味しくて・・・」というコメントをどんどんいただけるお席の環境に創り変えてみては如何かと。

「常旅宿となると矢張居心地(ヰゴコチ)が可いからサ」国木田独歩

※2020/01/29公開の記事を転載しています


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