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アフターコロナの家族旅行で感じたこと|観光マーケティングプランナーのちょっと視点を変えた連載コラム045

◯旅館ホテル・観光にかかわる、老若男女様々なプランナーによるリレーコラムです。

今から2年前、TOKYO2020が終わった頃、筆者は本稿で「コロナ騒動が治まったら、行きつけのアジアのリゾート地でおもいっきり散財してやる!」と声高らかに宣言をした。

行きたいところに行けないフラストレーションに起因する、ハイな状態だった感じは否めないが、まぁ、その時は、本気でそう考えていたし、旅行計画なども割と具体的に夢想していた。

ところが、時は過ぎ、今年の5月に行動規制が事実上撤廃され、「よし、これからは自由解放だ!」というタイミングで寄稿した拙文末には、「もう、海外旅行は、いろいろ面倒でイヤだ」と、堂々と書いている。

この無責任な変節ぶりはどうだろうか。誰にも迷惑をかけたわけではないと思うが、なんだか恥ずかしい。

そして、いよいよ、待ちに待ったサマーバーケーションシーズンが到来。そして最終的に目的地に選んだのは・・・沖縄・・・でした(笑)。

コストとフライト便数が決め手に

「海外旅行は面倒でイヤだ」と言ってはみたものの、やはり実際に計画を立てるとなると、初めから海外リゾートを除外する気持ちにはなれず、好きなバリ島から検討を始めたが、航空券・サーチャージ、宿泊代ともに、めちゃくちゃ割高感があった。

かつては4泊6日お一人様合計5万円台、なんていうのがざらにあったし、10万円以下でも、フライト時間帯も無理なく、快適なホテルもキープできたものだ。

ところが、今でも律儀にDMをくれるホテルの料金をチェックすると、かつての倍くらいの感覚。航空券・サーチャージも、「おい、どうした?」と画面に向かって思わず声が出るくらい高い。

彼の地でも、物価は上がっているだろうし、円安もある。わかっちゃいるけど、高い。

各航空会社共に、フライト便数も極端に減っていて、希望の日程や時間帯が取りにくく、取れたとしても高額になってしまうことも、算出費用が高額になってしまった要因の一つだ。

いずれにしても、滞在費を除いても、予算の範囲をとても大きくオーバーする計算なので、家族会議の末にバリ島、プーケット、ハワイはリストから削除された。

久しぶりに、旅行エージェントのお世話に

というわけで、行き先は消去法的に国内に絞られ、国内となれば沖縄の一択だ。

ネットをチェックして、ホテルと航空券は比較的容易に希望日を押さえられることが確認できたが、レンタカーが全然取れ無い。常軌を逸した法外なプライスを提示している店舗もある。比較的大手の店舗に問い合わせをしてみたところ、コロナ禍で減車してしまい、需要の回復に追いついていない、とのこと。

やれやれ、そういうことなら、個人で予約するよりもエージェントに頼った方がいいなと判断し、30年ぶりくらいに旅行エージェントのサイトでパッケージツアーをチェックしてみた。

まぁ、イマドキのどのサイトは丁寧に作られていて、初見でもストレスなく、希望する内容見つけることができ、便利なもんだと感心する。

費用だって、レンタカーを付けても、ハワイの4分の1以下。しかも、旅行支援の恩恵もあって、お得感たっぷりだ。

深刻な人手不足を実感

そんなわけで、何冊かの沖縄に関する本を携えて機上の人となった(ちなみに持参したのは、原田マハさんの「太陽の棘」、吉本ばななさんの「なんくるない」、向田邦子さんの「沖縄胃袋旅行」の3冊)。

数年ぶりに訪れた沖縄は、やっぱり最高だった。青い空、碧い海、美味しい食べ物と酒、島唄と三線の音色、ビーチの砂を舞い上げる強い夏至南風(カーチベーと言うらしい)すらも心地良い。

滞在中、「気っ持ちいいなぁ」と何度も口にしては、家族から笑われた。

ただひとつだけ、気になったのは、人手が足りてない、ということだ。

何度か泊まったことがある老舗のリゾートホテルは、かつては、クルマで敷地の入り口のゲートを通過すれば、ドア前にスタッフが待機していて、こちらから名乗らなくても、名前を呼んで笑顔で迎え入れてくれたし、スマートにバレーパーキングでクルマを預かってくれた。

しかし今回はそういうサービスは省略されていた。朝食のブッフェ会場で、テーブルにアテンドしてくれた方は、「Cの1、2、3・・・あっ、あそこですね」とテーブルの配置も理解されておらず、カトラリーを運ぶ姿もぎこちなさが漂う、明らかに急ごしらえのスタッフだった。

どこか夕食を取ろうと、ホテル近くの飲食店に出向いたが、ちょうどいい時間帯だったこともあって、軒並み満席。

中でも比較的待ち順の少ない1軒を選び、30分程待って入店してみると、奥まったテーブル席は使われておらず、カウンターの前には「めんそーれ!お料理をお出しするのに、ちょっとお時間がかかってしまうかもしれません!」と墨文字の手書きのメッセージが貼られていた。スタッフが不足しているのは明らかだった。

いずれの場面も、声高にクレームを入れる客もいなかったし、料理は文句なしに美味しく、スタッフも丁寧に対応してくれたので、不快に感じることはなかったが、思わぬところで、人手不足を実感させられた局面であった。

空港でも同様の現象が起きていて、グランドスタッフの不足などによって受け入れ体制の整備が追い付かず、海外便については、現状では定期便の5割程度しか受け入れることができない、という現地での報道もあった。

沖縄の人手不足は、かように深刻な状況のようだ。

コロナからの完全復活はいつになるのか

日本政府観光局(JNTO)の発表によると、7月の訪日外国人客は、232万人強。コロナ前の2019年と比較すると、8割程度は回復してきていることになる。

一方、出国者数は89万人と、コロナ前の5割にも満たない状況だ。2019年には、訪日客と出国者数の割合は3対2程度であったから、いま現在が、いかに不均衡な状態かがわかる。

当たり前のことだが、このバランスは極めて重要な要素なのだ。満席で飛んで来て、帰りはガラガラという状態では、航空会社としては航路の維持はできない。そういう状況が続けば、やがて日本に来る便は減少していくのは自明の理だ。

来てほしいけど受け入れ体制の整備が追い付かないし、世界的な物価の上昇と円安が重なっている影響もあって、海外に行く人は増えない。そうこうしているうちに、海外における日本人客のプレゼンスが下がり、やがて就航便も減っていく・・・。

沖縄に限らず、日本は依然として、なかなかにシビアな負のスパイラルの中にあって、外国からお客さんがたくさん来れば、すぐに日本は元気を取り戻す、と考えるのは、ちと早計だなということを、この数日間の旅を経て実感した。

まぁこれも旅に出なければ改めて考えることもなかっただろうから、そういう意味でも旅することは意義のあることだと改めて思う。

そんなこんなで、久しぶりの沖縄旅行は100点満点の大満足。元気なうちに孫と海外に行きたいな、と思いつつ、たぶん来年も沖縄を選ぶと思う。

※2023/09/28公開の記事を転載しています


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