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今だからできること~パーパスを考えよう~|観光マーケティングプランナーのちょっと視点を変えた連載コラム014

残念ながら新型コロナウイルス感染症の猛威はなかなか収まる気配を見せてくれません。せっかくお客様が回り出し、ビジネス的にもやっと一定の結果が出てきたのに、と恨めしく思っている観光関係者がほとんどではないか、と思います。

しかしいつまでも下を向いて現実から逃避したり、犯人捜しをしていても、どうしても暗くなってしまいます。

それよりも少しでも前を見て、やらなければと考えていたのに出来なかったこと、例えば読みたいと思ったのに積みっ放しになっていた本を読んでみることや頭の片隅にずっと置いてあるけど触らずにいたことに着手するなど、思い切ってポジティブな時間を作ってみませんか?

最近参加したブランディングをテーマとしたセミナーなどで必ず耳にするのが「パーパス」というワードでした。日本語では「意義」「目的」と訳されることが多い単語です。

ちなみにこのpurposeという単語は「前に」「置く」という意味を持つ2つの言葉が一つになったもので、何かをする時に為すべき目的を表わしており、企業ブランディングのシーンでは「なぜその企業が存在するかの意義や決意、社会に向けての約束ごと」といった意味合いで用いられることが多いワードです。

世界最大の食品飲料企業であるネスレは創業者の精神を受け継いだ『食の持つ力で、現在そしてこれからの世代のすべての人々の生活の質を高める』という明確なパーパスを以前から打ち出し、そのパーパスに沿った経営を行っています。

内閣府が行っている「国民生活に関する世論調査」の中に『働く目的は何か』という設問があります。平成30年のこの調査結果で最も多いのは「お金を得るために働く」で回答者の53.9%がそう回答しています。

しかし「生きがいをみつけるために働く」と答えた人が18.6%、「社会の一員として、務めを果たすために働く」と回答した人も14.3%おり、誰もが単に生活に必要な収入だけを目的に働いているのではない、ということが分かります。

今までの経営計画ですと、つい「年間〇〇〇名集客」や「年間売上額〇〇億円達成」といった数字ありきの計画が中心となりがちで、ややもするとこの「パーパス」が置き去りになっているケースは少なくないのではないでしょうか。

新型コロナウイルス感染症の拡大により社会が大きな痛手を受ける中で「エッセンシャル・ワーカー」という言葉もよく耳にするようになりました。

医療従事者や介護・保育士、トラックドライバーやバス・電車の運転士の方々など、社会生活に欠くことのできない仕事で社会を支えてくれる必要不可欠な働き手を指す言葉で、こうした緊急事態化や特別な社会風潮下では、確かによりその必要性が強く感じられます。

では観光やホテル・旅館は社会にとって必要ではないのでしょうか。日本よりも早く新型コロナウイルス感染症に対するワクチンの接種が始まっているイギリスでは、ワクチン接種開始以降特に50代以上の人々から秋以降に向けて空前の多さで旅行予約が活性化している、という報道がありました。

現代社会にとって観光や旅行、リゾート体験やそのための施設・サービスがどれだけ求められているかを端的に表しているものとして、自分はとても興味深くそのニュースを見ました。

自分自身に置き換えて考えてみても、ずっと仕事だけをして生活していても楽しみがありません。特には熱くなった頭を鎮め、心や身体をいたわり、美味しいものを味わい、会話や笑顔で安らぐ。忙しく働く人ほど、実はそんな時間をきちんと持ち、大切にしています。

そんな中で自分たちの宿は、このホテルは、誰のために、何を目的や意義として経営していくのか。一度きちんと明文化し、社員としっかり共有してみると、不思議と次にすべきことや具体的にシーンやカテゴリーの中で改善すべき点、追求すべきことも、より見えやすくなってきます。

普段であればお客様への応対やリアルタイムで対処すべき課題中心にならざるを得ませんが幸か不幸か、自分の時間だけは少し取りやすくなったのではないか、と思います。ぜひ貴館のパーパスを今一度考え直してみてはいかがでしょうか?

※2021/01/28公開の記事を転載しています


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