見出し画像

コロナ禍でのリニューアルオープンという決断、福島県・ いわき湯本温泉「ときわの宿 浜とく」

旅館ホテルにとって設備投資は必要不可欠。しかし今回のコロナの影響によって、近々に予定していたオープンやリニューアルの計画などを大幅に見直さざるを得なかった宿も多いことでしょう。

そんな中にありながらも、リニューアルオープンとリ・ブランディングを実現した宿があります。福島県いわき湯本温泉の「ときわの宿 浜とく」です。

いわき湯本温泉「ときわの宿 浜とく」は1977年の建築。「舌鼓の宿 浜とく」として40年以上の歴史を持ち、スパリゾートハワイアンズから徒歩3分という立地特性を生かして、地元はもちろん首都圏のファミリー層にまで幅広く親しまれてきました。

宿のこだわりは、多彩できめ細やかなおもてなし。形に表れない心配りから美味しい料理、空間の寛ぎまで、旅を彩るあらゆるシーンで、小さなお子さまから年配の方々までのすべてのお客さまがやすらぎととともに心から楽しめる「上質な時」をおとどけすることをなによりも重視しています。

そんな浜とくがこの2020年10月8日に新棟「蒼館」の増・改築工事を完了。「ときわの宿 浜とく」へと装いも新たにしてのグランドオープンを果たしました。今回のコロナの影響下にあって、貴重なオープン事例の一つです。



根気強い努力と「攻めの意識」で、施工スケジュールの大混乱を乗り越えて

浜とくの今回のリニューアル計画は、今後の小間需要の増大を見越したダイニングと客室の増築です。しかし施工段階で突如発生したのがコロナ騒動。社会全体があっという間にコロナの渦中に巻き込まれ、施工に関わっていた数々の企業も大きな混乱のさなかにありました。

一方、お客様の動向は来館客の大幅な減少ではなく、個人客需要の急上昇という形で表れました。これは宿の当初の狙い通りではあるものの、その動向変化の想定をはるかに越えた急激さを目の当たりにして、浜とくではこのリニューアルのより早い進行・完成を実現する必要に迫られることとなりました。

浜とくのリニューアルにおける最大の課題とは、想像されるようなお客様の減少ではなく、「どうしたら予定通りに計画を進められるか」という一点にあったのです。

予定された施工スケジュールの前に積み重なる様々な問題。これらを一気に解決できるようなマジックはありません。浜とくが取った手段とは、まるで絡まった糸を根気よく解いていくように、細かな障害に直面するごとにそれを一つ一つ解決しながら確実に一歩一歩を積み重ねていくことでした。

言葉にすれば簡単ですが、現実にはやっと一つの課題をクリアしたと思えば他の施工に思わぬ影響が出てしまうことの繰り返し。倦まずたゆまずけっして心を折ることなく、こうした数々の苦難を乗り越えた先にようやく2020年10月8日の竣工・オープンを迎えるに至ったのです。

「オープンに限らず、最近は『できなくても仕方ない』と思いがちなことが多かったのですが、今回のリニューアルを通して『どうすればできるのか』を考え、一つ一つ実行していくことの大切さを改めて実感しました」。

浜とくではコロナ禍でのオープンというこの難題をクリアしたことで、つねに前向きな「攻めの姿勢」を持つことの価値を再認識し、いわば意識の変換をもたらすことにつながったと言います。


新棟「蒼館(あおいかん)」の完成と料理へのこだわりが息づくリブランディング

増築オープンした新棟「蒼館」は、3階に「花遊」の名を冠する半露天風呂付き客室が5室、2階には32卓の席とオープンキッチン、ブッフェを有する和ダイニング「徒季和」、1階には新設の駐車場という構成になっています。また、この新棟増築と合わせて、既存棟の1階にあるラウンジ・売店・パーティールームなどの改装も実施しています。

庭園テラス&半露天風呂付きのお部屋5室「蒼館・花遊(はなあそび)」

増築棟の3階に新設された新客室5室は「ツイン+デイベット」(3室)、「ツイン仕様」(2室)。いずれも景色を見渡す庭テラスと、半露天風呂が付いた贅沢なしつらいで、和室のリビングは天井も高く広々とした開放感を感じさせます。

旬を堪能する和ダイニング「徒季和(ときわ)」

新設の和ダイニング「徒季和」は、ゆったりとした空間構成によって上質感を醸成。卓ごとの間隔にゆとりを持たせた広々とした32卓の客席は、ソーシャルディスタンスに配慮したものです。

特徴はオープンキッチンによるシズル感ある演出。夕食は会席料理、朝食はバイキング形式で提供されます。これまで複数の食事会場に分散していた食事提供をこの一ヶ所に集約し、メイン厨房とダイニングを併設することで出来立ての料理を美味しさをそのままに提供できるようになっています。


ロビーフロアも開放感ある落ち着いた趣に

増築棟と合わせて改装されたのが既存棟1階のパブリックエリア。ラウンジ「出逢いの小道」は、ゆるやかに時が流れる広々とした空間でお客様をお出迎えできるようになりました。

おみやげ処「旅の玉手箱」はいわき・福島土産をより豊富にラインナップ、またグループ客用の二次会処としてパーティールーム「遊人(ゆうじん)」も新設されました。

浜とくでは今回の設備投資を機に、屋号を「舌鼓の宿 浜とく」から「ときわの宿 浜とく」へと改めて新たなイメージ確立。旅館としてのリブランディングを図っています。

株式会社エイエイピーもお手伝いしたこのリブランディングで、特に重視したのは地域性を強く打ち出すことでした。

これまでは福島県の風評を考慮し常磐地区の地域名を出さずに営業してきましたが、今回「ときわ」の地域名をショルダーネームとすることでお客様が宿の場所を特定しやすいように配慮。

併せてレストラン名も「つれづれに季節を和む」意味を地名に重ねた「徒季和」へと改め、より地域性を強調しています。

また宿のショルダーネームの変更により、館内サイン類も新たなデザインに変更。より見やすく美しいサイン類が整備されたことで館内イメージのリフレッシュにも大きく貢献しました。

地域性重視はマーケット戦略にも反映されました。それまで関東近郊からの団体客をメインとしていた営業戦略から、「安近短」思考を視野に入れて福島県内へのアプローチにも力を入れ、県内へのTVCMスポット露出を実施。コロナ禍によって遠地からの来訪客や団体客が減少する反面、地元の個人客が増加したことから、結果的にこの戦略立案がぴったりとフィットしました。

さらにマネジメント面にも大きなテコ入れを行い、顧客管理の行きとどかなかった古い基幹システムを一新。約150万円のIT補助金を活用して、レストランでのオーダーシステムや非接触型自動チェックインの導入にも対応できる新PMSシステム「満室御礼」を導入し、緻密な顧客・売り上げ管理が行えるより現代的な経営基盤を構築しています。

お客様への新たなおもてなしとしては、地域の魅力をもっとも反映できる料理に特に力を入れました。「季節に合わせて万人受けするごちそうで感動を与える」ことを目指し、伊勢海老やあわびといった豪華な海の幸や国産和牛など、高級食材をふんだんに使った料理をリーズナブルかつ大ボリュームで提供するのはもちろん、他館では見られない食材を積極的に使うことで、浜とくならではの個性も演出しています。

開業準備期間中には「料理」と「サービス」についての徹底的な研究とロールプレイングを行い、お客様評価の向上を目指した結果、お披露目後は楽天トラベルやじゃらんなどでの高評価取得を実現しています。


「一人たりとも感染者を出さない」を合い言葉に

コロナ感染防止をふまえた「新しい生活」の意識が広く浸透している中、この時期にオープンを迎える浜とくにとって、「安心して旅を楽しめる宿」であることを裏付けるコロナ対策の数々は、言うまでもなく最優先施策でした。

安全確実にオープンを迎える。そのために浜とくでは、より安全性・確実性が担保されたコロナ対策はないかと様々な情報を精査しつづけ、その中で「空間除菌消臭装置」の存在に目を止めました。

それはメディカル機器などを幅広く取り扱う日機装が開発した、深紫外線LEDの技術を活用した空間除菌消臭装置「Aeropure-エアロピュア」。

この装置は、周囲から取り込んだ空気に深紫外線LEDを30秒照射することで新型コロナウイルスを99.9%不活性化し、空間全体に清潔で安全な空気を循環させることができるという大きなストロングポイントを持っていました。

最近は効果の高い除菌手段として紫外線による対策機器がその需要を伸ばしつづけており、この「Aeropure-エアロピュア」も極度の需要過多によって現在販売がストップするほどの人気となっています。しかし、浜とくでは他に先んじて半年ほど前にすでにこの装置に着目。社長自らが50台まとめて即決購入を決断しました。

その後6月中旬には全館への設置を完了。オープン後のお客様の安全を図ることはもとより、リニューアルに向けて作業中の関係者に対しても万全な対コロナ環境を提供し、長期間にわたった施工中も一切の感染者を出すことなく無事竣工することができました。

またオープン後にはお客様に対して「Aeropure-エアロピュア」をご案内する館内告知用POP類を作成し、清浄な空気環境が整っていることを力強く訴求し、お客様の大きな安心感の醸成に結びつけています。

その他にも浜とくでは、パブリックスペースへの飛沫防止パーテーションの設置をはじめ、ペダル式アルコールディスペンサーや体温計の設置、ダイニングご利用のお客様への手袋、マスク着用のご要請など、多彩なコロナ対策を施しています。

またオープンを控えてのスタッフの定例会などを可能な限り人数を絞って実施するなど日常的に「密」を回避する習慣づけがされ、プレオープンの試泊後のフィードバックなどでも特にコロナ対策へのお客様対応を重視するなど「一人たりとも感染者も出さない」を合い言葉とした高い感染防止意識を全従業員に浸透させています。

もちろんお客様に対しての配慮にも万全を期しています。宿の公式webサイトにはコロナ対策ページが新設され、お客様は宿選びの段階から、浜とくが「安心できる宿」だということをしっかりと確認できるように配慮されています。この秋のオープン後、お客様からの厚い信頼に支えられて着実な実績を挙げつづけている「ときわの宿 浜とく」。

コロナの影響をダイレクトに受け、工事日程の大混乱という想定外の難題に直面しながらも、従業員が一丸となることでピンチをチャンスに変えていったこのリニューアルオープン事例は、「Aeropure-エアロピュア」を主軸とした改修工事段階からの万全のコロナ対策意識も含めて、コロナに悩む多くの旅館ホテルにとっての大きなエールとなるのではないでしょうか。


株式会社エイエイピーは、長年培った旅館ホテルに関するノウハウを生かして、ソーシャルディスタンスの確保や3密の解消などの様々なコロナ対策から、リニューアル・リブランディング計画のご提案、PMSシステム導入、補助金申請のご相談などまで、お客様の多様なご要望に幅広くお応えしています。

※2020/12/03公開の記事を転載しています


毎週配信をしているリゾLABのメールマガジン「リゾMAGA」。新着記事の紹介、旅行・観光関連のデータやプレスリリースなど、旅館・ホテル業界に関わる方におすすめの情報を届けます。

▶メルマガ登録はこちらから




記事を最後までお読みくださり、ありがとうございます。励みになりますのでコメントいただくのも嬉しく、今後の参考になります。|また、業務ご相談を随時承っております。リゾLAB編集部を兼ねるエイエイピー観光戦略推進部の事業紹介サイト「伴走支援サイト」をご覧ください。