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“つかみ”にみるファーストコンタクトの重要性|観光マーケティングプランナーのちょっと視点を変えた連載コラム036

突然だが、昨今のお笑いムーブメントには目を見張るものがある。

ゴールデンタイムには数々のネタ番組・コント番組が名を連ね、『М-1グランプリ』をはじめとする各賞レースの盛り上がりは凄まじい。

この勢いのままいくと、М-1グランプリの決勝戦を「あんまりお笑いのことはわからんけど、とりあえず見とくか…」と、まるでサッカーワールドカップのように、日本中の国民がテレビに齧りつく日も近いのかもしれない。その光景を思い浮かべるだけでなんだか笑いが込み上げてくる。

もはや文化と呼んでも差し支えない(と個人的に思っている)日本のお笑い。

さて、今回はそんなお笑い文化の最前線、「大阪」の観光マーケティングにツッコんでいくぜ!…というわけではなく、もう少しニッチな切り口から話をさせていただきたいと思う。

漫才・コント・新喜劇・(広義の意味での)落語…数あるお笑いジャンルの中で、それらには共通して“つかみ”というものが存在する。つかみとは、簡単に言うと「一発目のボケ」のことだ。

言葉にすると大した事なさそうだが、この“つかみ”は台本(ネタ)の中で非常に重要な役割を果たす。

大お笑い時代とでも言うべき今日、それでもなお芸人にとって最も価値があるもの、それが「ネタ」だという。計算され、洗練されつくしたネタは、しばしば一本の映画やドラマにも例えられるが、そのような視点で考えると、“つかみ”をただの最初のボケとするのは軽率だ。

当然だが、芸人のネタを見にきたお客さんは笑いにきている。もっと言うと、今か今かと笑う準備をしている。いや、もはやとりあえず笑いたい状態とまで言えるかもしれない。

つまり、お客さんの期待やら安心やら色んな感情を一手に受ける初めのボケ、それが“つかみ”ということになる。つかみに成功すると、その芸人はどういう系統の面白さで、どんなキャラクターなのかが見ている人にスッと入ってくる。それにより、その後のネタで笑いが起きやすくなるのだ。

逆につかみに失敗してしまうと悲惨だ。見ている側に残った拭えない負の印象は、その後のボケや展開にも悪影響を及ぼす。

過去にはつかみの早さ・秀逸さが決め手となって『M-1グランプリ』優勝を果たしたコンビもいる。

つまり“つかみ”とは、単なる「一発目のボケ」ではなく、「全局を左右する受け手とのファーストコンタクト」とも言える。

「つかみの話のくせに、つかみがなげえよ!」
そう心の中でツッコミを入れている方がいそうなので、そろそろ本題に入ろうと思う。

初対面の人との第一印象は3~5秒で決まり、それを変えるには半年から数年かかるという。主観だと一蹴されるかもしれないが、日本人はその傾向が特に強いと思う。粘着気質というか、ねちっこいというか…何となく共感してくれる人もいるのではないか。

裏を返すと、このファーストコンタクトにさえ成功すれば、その後は非常にスムーズに物事が進みやすくなるということ。改めて言うと当たり前だが、その意識を常に強く持っている人や組織がどれくらいいるだろうか。

例えば、駐車場から入り口まで少し歩かなければならないホテルがあったとする。事前の予約情報によるとお客様は連泊。きっと荷物も多いことだろう。「駐車場からホテル入口まで少々距離がありますので、ホテルに着きましたら従業員がフロントまでお荷物をお運びします。」いずれの予約経路にせよ、上記のような気遣いができたらどうだろうか。

お笑いを見ているお客さんが笑いにきているように、旅館やホテルに泊まりに来たお客さんは、「その場所での時間」を楽しみに訪れている。

そう、お笑いでいうなれば、お客様がホテルに着いたその瞬間から、「ネタ」はスタートしているのだ。そうなると、出来るだけ「早く」「秀逸な」“つかみ”が必要になってくる。

先述の通り、その如何ではお客様にその後のサービス体験や過ごす時間をより楽しんでもらうことができるからだ。そして、逆もまた然り…。

旅館ホテルによって各々強みが異なるのは言うまでもない。しかし、“つかみ”にみるようなお客様とのファーストコンタクトの重要性はどこも同じだろう。大切なのは、その重要性と自分たちの魅力や欠点を十二分に理解した上で、どれだけ特色や魅力を伝えられるつかみを用意できるかではないか。

何しろ個々人によってサービスの感じ方が違うのに加え、宿泊人数や構成、チェックインの時間帯、季節などなど…その時々でコミュニケーションに最適なつかみは変わってくる。そう考えを巡らすと、つかみ足り得るボケはできるだけいろんなパターンがあったほうが、お客様の満足度は高まるのかもしれない。

お笑いが旅館ホテルサービスの参考になるだなんておかしな話だ。

そうツッコみたくなる人もいるかもしれないが、私はそこまで的外れなことだとは思わない。なんせお笑いだろうと旅館ホテルだろうと、人を笑顔にしたいという目的は一緒なのだから。

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※2022/11/30公開の記事を転載しています


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