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シリーズ企画 接客現場の「こんな時どう答えればいいのですか?」- 第2回

接客現場では、ことばに詰まる質問を受けることがあります。もっと上手に答えられないかと向上心にあふれて考えてしまう人もいます。後輩から質問されて説明できないこともあります。

そんな接客現場の悩みに耳を傾け、受け答えの考え方やことばのヒントをお伝えします。接客ミーティングの素材として、現場指導の教材として、ご活用ください。

第2回 〈この敬語は正しいですか?編〉


Q 「大丈夫です。」を、よく使ってしまいます。間違っていると指摘されたことがありますが、どのように言い換えるといいでしょうか?


A 必ずしも間違いではありませんが、「大丈夫ですか?」「大丈夫です。」ということばは、親しい間柄で使うことばだと、理解しておきたいものです。

例えば、お客様から「ここに置いても大丈夫ですか?」と聞かれた時に、「はい、大丈夫でございます。」と答えそうになりますが、この答えはすべてのお客様に適切だとは言えません。

この場合は、「はい、結構でございます。」と言います。

また、お客様が食事中に器をまとめてくださったり手渡してくださったりすることがありますが、このような場合に、「そのままで大丈夫ですよ。」などと言うのも、馴れ馴れしい感じがして印象を損ねるのではないかと心配します。「よ」を付けていることも礼儀を欠いています。

「お気遣いありがとうございます」や「お気を遣わせてしまい申し訳ございません。私がいたしますので、どうぞそのままになさってくださいませ。」と言うこともできますし、お手伝いくださる時には、「おそれいります。ありがとうございます。」とお礼を伝えることができます。




Q お客様から感謝された時などに、「とんでもございません。」と言っていますが、他の言い方はありますか?


A まず、「とんでもございません。」は、「とんでもありません。」を丁寧にしたからと言って、正しい言葉遣いではありません。「とんでもない」ということばは、「とんでも」があるとかないとかと言いません。つまり、分解できない一つの言葉なのですから、これは「とんでもないことでございます。」と言うのが、正しいのです。

さて、その上で他の言い方も考えてみましょう。お手伝いしたことにお礼をおっしゃってくださったのであれば、

「お気遣いありがとうございます。」の他に、「どうぞいつでもご遠慮なくお申し付けださいませ。」や、「他にお手伝いできることはございますか。」と申し上げるのも、ポジティブな良い表現です。

ほめていただいたのであれば、「いつもお客様に教えていただくことばかりなのですが、ありがとうございます。」や、「他の係にも申し伝えます。みんなも喜びます。ありがとうございます。」と、嬉しい気持ちとともにお礼をお伝えするのも良いと思います。




Q お客様の意見や手配など承ったことを、他の部署に伝える場合、「それでは、フロントにお伝えしておきます。」と言うのは間違っているのでしょうか。


A フロントに伝える場合は、自社=身内に対しての行動ですから、「お伝えしておきます。」と尊敬語にはしません。この場合は、「それでは、フロントに申し伝えます。」と言います。

ご同行のお客様への伝言を承った場合は、「それでは、お客様にお伝えいたします。」と言います。

社内の人のことをお客様に伝える場合、「〇〇支配人」と言わず、「支配人の〇〇」と言い換えますが、これは名前の後ろに役職名をつけることが、敬称(さま・さん)をつけるのと同じ意味を持つためです。




Q お客様の到着時に、「いらっしゃいませ。」に続けて「お疲れ様でした。」「お疲れ様でございました。」と言っていますが、失礼なのでしょうか?


A 慣用句として使われていることばなので、必ずしも間違いだとは言えませんが、本来はお客様や社外の人に使う言葉ではありません。

「ご苦労さまでした。」は目上の人には使ってはいけない、目上の人には「お疲れ様でした。」と言うのだと教えられるので、お客様にも使えると思いがちですが、そうではありません。「お疲れ様でした。」は、一緒に業務に取り組んでいる認識がある場合のねぎらのことばだということを、合わせて理解しておきたいものです。

ですから、お客様には親しみを込めて言う場合もありますが、できれば、「いらっしゃいませ、ようこそお越しくださいました。」「お待ちしておりました。」「本日はありがとうございます。」など、他にもお伝えできることばは色々とありますので、「お疲れ様でした。」をあえて使うことはないと思います。




Q よくお見えくださるリピーターのお客様から、他館のサービスについてお話いただいた時に、よいヒントをいただいたので「参考にさせていただきます。」と言ったのですが、間違っているのでしょうか。


A 感謝の気持ちを込めて言うのであれば、「参考」ということばは選ばない方が良いと思います。「参考」を辞書で確認すると、『何かをしようとするときに、他人の意見や他の事例・資料などを合わせて、自分の考えを決める手がかりにすること。また、そのための材料。』などと書かれています。

つまり、「参考」とは、他の人の意見や情報を自分が考えたり判断したりする時の手がかりにするという意味なので、他の人の意見や情報を取り入れるかどうかは自分で判断します、というニュアンスを含んでいるのです。
このような場合には、「とても勉強になりました。ありがとうございます。」などのことばが適しています。



Q 料理提供の際に、召し上がって終わっている器を先に下げますが、その度に「お下げしてもよろしいでしょうか。」と繰り返し尋ねるのはよくないように思います。他によい言い方はありますか?


A そもそも「こちらはお下げしてもよろしいでしょうか。」は、少し考えておかなくてはならない質問です。これは、「私は下げようと思うのだけれど、お客様の許可を得てから下げます。」と、私の考えが含まれている聞き方に感じるからです。

以下のような質問のことばを覚えておくと、状況に合わせた尋ね方ができます。

いくつかの器がある場合:
「お済みのものはございますか。」「お召し上がりの途中のものはございますか」

おそらく終わっているとは思うけれど、お造りのあしらいが残っていたり、グラスに氷が残っている場合:
「こちらはいかがでございますか。」「こちらはお召し上がりでございますか。」

お客様が器を重ねていたり、テーブルの端に器を寄せている場合:
(お尋ねはせずに)「こちらはお引きいたします。」「おまとめいただき/寄せていただき、おそれいります。」




Q チェックインやご案内の説明の最後に、「何かおわかりにならないことはございませんか?」と聞くようにしていますが、このことばは失礼になりませんか?


A丁寧に質問しているのですが、「わかる」「わからない」というのは、能力に関する質問に近い印象があるので、目上の人やお客様には使わない方がよいと言えます。「日本語は話せますか?」ではなく、「日本語を話しますか?」と聞く方がよい、ということと同じです。

お客様がわかったかどうかでなく、お客様にわかりやすいように説明したかどうか、十分に伝えたかどうかを問えばよいので、この場合は「説明の足りないところはございませんか。」と、自分のことを尋ねる方が印象よく聞こえます。



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