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旅館・ホテルのSDGsを考える。|観光マーケティングプランナーのちょっと視点を変えた連載コラム021

ここ最近、このワードを見聞きしない日はない、という位、頻繁に接することが多い言葉のひとつが、この「SDGs」ではないだろうか。

改めて説明する必要もないと思うが、2015年に国連サミットの中で定められた国際社会共通の目標のことで「貧困をなくそう」「安全な水とトイレを世界中に」「つくる責任つかう責任」といった17の具体的な目標が設定されている。

ある調査によれば企業の約7割がSDGsなどの社会課題の解決を「会社の責任として重要に考えている」「企業価値の向上として重要に考えている」と回答している。

アンテナの高い旅館・ホテルではすでに自社サイトの中でその取り組みをコンテンツとして掲載している所も実は少なくない。

それは元々旅館・ホテルなどが海や山など自然環境と密接に関わるロケーションに位置する施設が多く、また1泊を中心にある一定の時間、そこに留まり、さまざまなアクションをすることが多いことに起因していると思われる。

しかしながらあえてSDGsと叫ばれる以前から、例えば周辺や近くの海岸などの清掃活動を社員一同で実施している、バリアフリーやクリーンエネルギーの活用に早くから取り組んでいる、地域の間伐材や伝統工芸を館内の家具や什器、インテリアなどに活用している、といった施設は多かったのではないか。

また山岳地帯を運行するバス会社や観光運輸会社などでは、いち早く電気自動車を採用していた企業も多いはずだ。

もう30年以上前の話だが、とある九州地方の大型旅館に宿泊させていただいた際、その施設のオーナーからこんな話を伺ったことがある。

当時団体客が中心で、旅行エージェントからは夕食の品数や船盛りなどを求められるが、実際に来館されるお客様の目的は「呑み」が圧倒的で、せっかくふんだんにご用意しても残食が多く、それが悩みのタネだった。

そこでその旅館では所有する土地に鶏舎や温泉を利用した淡水魚の飼育施設を建設し、旅館の残食を飼料として活用し、そこで育てた鶏卵や魚を食事の原材料として活用し、フードロスを防ぐとともに料理原価率の引き下げに繋げていた。

また最近では夕朝食ともいわゆるバイキング形式で提供する施設も多いが、残食率を考慮してメイン料理はご予約人数に合わせて提供し、それ以外の料理をバイキング対応とする施設も見かける。

今でこそ「フードロス」への取り組みは各自治体も力を入れている所も多いが、何を今さら、と感じる旅館・ホテル経営者も多いのではないか。

現代においては商品のコモディティ化(同質化・一般化)が進み、同じ価格帯においては以前ほどの明確な商品ごとの格差はなくなっている。

似たようなブランドを同じ様な価格で購入してもだいたい同じ、というイメージは自分に限ったものではないはずだ。そうした時に「どれを選ぶか?」には身近な存在の人々のクチコミが最も強いと思われるが、個人的には「心地よさの共感性」なのではないか、と感じる。

例えば同じような価格帯で、同じような施設内容を持つ、同じようなクチコミ評価の旅館・ホテルが2軒あった時に、どちらを選ぶかは、自分が利用した時にどちらの施設の方がより「気持ちいいか(気持ちよさそうか)」という『共感性』が重要なのではないか、と。

もちろん感性的な「心地よさ」をよりアピールすることも大切だが、このSDGsもきちんと理解し、経営に取り込んでいることを自社サイトでアピールされているとすれば、何となくまったくそういったことに触れられていない施設よりも「こちらの施設を利用することで自分もSDGs活動に賛同し参加している」という心地よい気分を予感してもらうことにつながりはしないだろうか。

アピールの手段は自社サイトにコンテンツとして記載することに限らない。例えばご利用いただいた時にも、そうした取り組みを簡潔に表記されたものがエレベーター内や湯上りどころ、客室等にさりげなく置かれたPOPなどに記されているだけで、より自館のファンになっていただける可能性を増やせるのではないか。

全くそうした活動を考えていない、取り組んでいないと言いつつも、きちんと見直してみると意外にSDGsが掲げる17の目標に紐づくようなアクションは見つけられるように思う。

もし見つけることができるのであれば、それをしっかり整理して、伝わるものにすれば良いだけのこと。それほど手間を必要とするものでもない。

SDGsは非常にすそ野の広い、いわば世界的な社会課題。ビジネスを通じ多くの人々と接することができる旅館・ホテルの社会的な役割としも、むしろ積極的に発信していくべきものと考える。

なぜならそれは単にお客様の集客のみならず優秀な人材の採用や地域連携の推進にも役立つからだ。まずは自館のさまざまな施策の中で活かせるものがないか、じっくり見てみては如何だろう。

※外務省サイト「JAPAN SDGs Action Platform」はこちらから

※2021/08/31公開の記事を転載しています


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