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見えているのに、見えないもの。|観光マーケティングプランナーのちょっと視点を変えた連載コラム010

「見えているのに、見えないもの」まるでナゾナゾのような表題だが、それは何か?と尋ねたら、何を隠そう、ジブンなのである。

こんなお話がある。ある街に家族経営の小さなお店があった。ご両親がやっとの思いで新しいお店をOPENさせた。しかし、御多分にもれず、その家の息子は都会にあこがれ、家を出てしまう。

よくあるハナシである。・・・それから10年、息子は一度も故郷に帰らず、都会で一所懸命働いたが、両親の健康を気遣う年頃となり、帰郷を決意して、我が家に戻った。

10年振りに帰った我が家のお店を見て息子は愕然とする。店の壁はくすみ、看板は汚れて蜘蛛の巣まではっている、お店の玄関となる窓や戸は塗装が剥げて色も変わってしまって、営業しているのも怪しい古屋に様変わりしていたのだ。

あわてて、店の玄関を潜り、奥から出てきた親父どのに、ただいまも忘れて開口一発「どうしたんだ!店になにかあったのか!?」と尋ねると、返ってきた親父どのの返事に再び驚く・・・「何が?」。

息子の記憶にあった店は、新築したばかりの小さいながらも綺麗な佇まい。しかし、10年の歳月は、親子の感覚に大きな隔たりを創ってしまった。

仮に、1日0.01mmの汚れが生じるとする。これは視覚的に感知は不可能かと思う。掛算を続ける、1年過ぎると0.01mmが3.65mmまで拡がる。そこに歳月を掛算すると、10年で汚れは40㎝程に成長する。

目の前にこの大きさの汚れが突然表れれば、さすがに誰でも気づくのだが、一日0.01mmずつ変化するとなると、気づかない。前日と今日・明日の区別がつかなくなり、感覚がマヒしてゆく、いつのまにやらそこはいつもどおりの「住めば都」であり続けるだけである。

「その変化に気づかない親父どの」・・・ジブンで自分を反省するときにいつもこの話を思い出す。にもかかわらず、衣料品店で服を合せるとき、鏡を見る前に頭に浮かべるジブンの姿は、若い頃の絶好調のスタイル+αだが、実際に鏡を見ると、+αではなく「倍返し」であることを知り、その度に小さな失意を繰り返すハメになる。

ジブンでは見えないもの。それはジブンそのものであり、ジブンが生活する住処やジブンが運営するお店でもある。昨日>今日>明日の変化には決して気づかない。しかしその日々年月をたまたま客観的に見る他人には、明確に見えるものである。

なら、その変化を知るにはどうすればよいのだろうか?一番手早い解決法は「他人に聞く」ことだと思う。お宿なら、お客さま、はたまた出入りの業者さんや隣町の友人などそう考えれば幾らでも聞く相手は居る。

要は、そこから聞いた客観的な意見を「信じるか、信じないか」が分かれ目になるのだろう。そこは、ジブンの器量かもしれない。

新型コロナ騒動の終息はまだまだ見えない。本年の10月には東京発着のGo To トラベルも解禁になる。政府としても、観光業界としても出たとこ勝負のカケに踏み出す。

いろんな好機も生まれ、いろんな事故も噴出するだろうが、それらに対してフレキシブルに対応することになるだろう。

そんなとき、目標を見失わず留まり、「見えてないジブン」を客観的な目で捜し、「知らない魅力」に切り替えることも、大事なひとときになるのではないでしょうか。

或プランナーの独り言。Vol.010「見えているのに、見えないもの。」

※2020/09/30公開の記事を転載しています


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