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未曾有の水害を乗り越えて、球磨への地域愛を紡ぐ宿へとリニューアル -清流山水花あゆの里-

古く12世紀から相良700年の歴史を誇り、豊かな水を湛える球磨川と美しい盆地が形づくる絶景の中で今も数多くの温泉客の人気を集める人吉温泉。

その球磨川の畔に建つ清流山水花あゆの里は、昭和20年に鮎里旅館として創業以来、お客様の「心のぜいたく」と「極上の癒し」を追求しながら度々の設備投資を重ねてきた旅館です。

創業後、団体旅行を中心とした旅のニーズに合わせて昭和47年にグランドホテル鮎里としてリニューアル。さらに、平成以降も設備投資を重ね、平成17年には「和遊和楽の宿 清流山水花あゆの里」へと装いを一新し、球磨川を眺められる和の粋とモダンな空間が心地よい湯宿として、数多くの旅人たちの心を癒やしてきました。



■球磨川流域を突然襲った未曽有の水害

そんな人吉温泉を、令和2年夏、突然の水害が襲います。

局地的な豪雨が地域を襲い、ふだんは穏やかで美しい姿を見せている球磨川の表情が一変。人吉市をはじめ球磨川中流域一帯が大規模な水害と土砂災害に見舞われました。

九州地方に降り続けた豪雨は留まることなく人吉を流れる球磨川の水位を一気に押し上げ、ついに7月4日の未明には行政からの避難勧告が、さらに5時過ぎには避難指示が発令されました。

当日約100名のお客様が滞在していた清流山水花あゆの里では、この勧告と指示を受けて、すぐさまお客様を上階へと避難誘導。何度も点呼を行い、お客様がパニックにならないよう安全確保を最優先に努めました。

そして朝8時、堤防いっぱいまで水が押し寄せていた球磨川からついに大量の水があふれ出し、押し寄せた濁流が建物の1階フロアをまるでプールのように水没させてしまいました。

予め上階へと避難していたお客様は水の難を逃れはしたものの、いつ引くともわからない大量の水を前に、はたして無事に帰宅できるのかという大きな不安を抱えながら、水も電気も使えない暗闇の中でスタッフが懸命に作った食事を取り、まんじりともしない一夜を過ごすこととなりました。

翌日になってようやく水が引き、宿が手配したチャーターバスで無事に帰宅の途についたお客様方からは、当日のあゆの里の迅速な対応や、泥まみれになりながら安全確保に努めたスタッフの懸命の活動に感謝し、数多くのお手紙が寄せられています。


■水害からの復旧プロジェクトと、リニューアル計画

後に激甚災害にも指定されたこの大規模な水害を何とか乗り越え、またすべてのお客様を無事にお送りできたことに心から安堵しながらも、しかしあゆの里に残されたのは水害で荒れ果てた宿の惨状という現実でした。

明日からの宿をどうするのか、自宅や家族にも被害の出た従業員はどうなるのか。数々の大きな課題が宿の眼前に横たわっていました。

しかし、あゆの里はただ転んだままではいませんでした。これほどの災害を受けてもなお、不撓不屈の精神で新たな復旧プロジェクトを立ち上げます。スタッフ本人が希望する場合を除き、一切の解雇をしないこと。それがプロジェクトの大方針でした。

あゆの里の復旧プロジェクトは、ただ被害施設を復旧・改修するだけに留まらず、営業再開後は団体客向けから個人客向けの旅館に転換することを主な狙いとして、経営面やおもてなしの質、さらには労務面までを含めて、より時代のニーズに合った旅館へのシフトを推進することがコンセプトとして定められました。

まずその根幹として、団体・グループ客を重視していた従来の経営方針を大きく転換。時代の流れを受けて大きな命題となっていた個人客向けの経営スタイルの確立を図りました。

しかし、そのためには何よりも個人利用客の単価を引き上げることが必須となります。

そこであゆの里が目指したのは「提供商品レベルの向上」。その実現のために「高質客室」の比率を大きくアップさせるとともに、従来の提供料理の方針を転換、さらにフリーサービスをより充実させることの3点を大きな柱としました。

困難な状況の中にありながらも、被害施設の復旧と新施設へのリニューアル、さらにはサービス内容の見直しと改善までを、この3本柱に沿って一気に推し進めることとなったのです。


■個人客向けに大きく変貌を遂げたパブリックと客室

施設復旧にとどまらない高質化改修の実現によって生まれ変わった、新たな清流山水花あゆの里。

被害が特に大きかった1階ロビーフロアは、災害の傷跡がみじんも感じられないほどに大きく様変わりし、同時にチェックインシステムもより個人客に寄り添ったロビーチェックインへと刷新。

また、レストラン・料亭街ではバリアフリーも視野に入れて料亭街の踏み込みを廃止し、レストラン部分はすべて椅子・テーブル式を導入。 1階のダイニングは個室客専用、2階はグループ客対応のダイニングへと仕様変更し、お客様のさまざまなニーズに合わせて多様なダイニング設定を可能とし、これまで以上の有効活用ができるようになりました。

さらに2階の厨房も床の補強工事と併せて、ソフトを含めた厨房計画を全面リニューアル。原材料の搬入、処理から調理、配膳までの流れにも大きく手を入れ、より一人一人のお客様に寄り添ったお食事提供のスタイルを確立しています。

また大浴場も、個人のお客様がより人吉温泉の魅力を堪能できるよう新たにリフレッシュ改修。

人吉城の壁や蔵をイメージした空間で三種の湯渡りが楽しめる5階の「蔵の湯殿」、南九州山脈の山並を眺めながら数寄屋デザインの湯処で開放感あふれる湯浴みが楽しめる「山並みの湯屋」と、それぞれ個性と特徴を明確にした2つの露天大浴場が整いました。

もちろん客室も個人客対応へとシフト。全75室のうち23室が露天風呂客室になるなど、高付加価値客室の割合を大幅に増加させ、個人客向けの宿としての新たな方針がここに如実に語られています。


■そして、地元の魅力を最大限に活かすために

日本でいちばん豊かな隠れ里ともいわれる球磨人吉に古くから息づく、たくさんの「宝物」たち。その「価値」と「魅力」に、ゆったりたっぷり、思う存分に触れてほしいと願うあゆの里が掲げる新たな合い言葉が、「Discover HITOYOSHI」です。

このリニューアルを機に、その想いを広く発信する新施設も誕生しました。その代表格が天空のテラス「KUMAGAWA」と、球磨焼酎ラウンジです。

球磨川と共に生きてきた歴史を象徴する人吉の絶景をお客様に身心で体感していただきたいという想いから生まれた、7階天空のテラス「KUMAGAWA」は開放感たっぷりのテラスで大らかな展望と季節の風を楽しみながら、心やすらぐ人吉の旅のひとときを満喫できる新スポットとなっています。

また、地域の誇りである世界ブランド「球磨焼酎」の真の魅力を全国の旅人に広く知り、深く味わってもらおうと新設されたのが、球磨焼酎を自由に楽しんでいただける焼酎ラウンジ。

焼酎蔵を併設させ、球磨の水と風土から生まれた球磨焼酎の歴史や製法を学びながら、フリーサービスの焼酎サワーサーバーでその味を楽しむことができるなど、宿の名物スポットとして数多くのお客様の注目を集める空間となりました。

水害による数々の困難を乗り越えて、人とその心を何よりも大切にした新たな宿へと生まれ変わった、清流山水花あゆの里。

宿のコンセプトも新たに「寛雅和楽(かんがわらく)」とし、優雅な寛ぎと和やかな楽しみをお客様に提供します。

その底流となっている想いは、新しく生まれた充実の施設はもちろん、人吉と球磨川を愛してやまないスタッフの一人ひとりが「人吉コンシェルジュ」となることで日本一の「人吉づくし」のおもてなしをおとどけすることにこそあるのかもしれません。

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※2022/02/02公開の記事を転載しています


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