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ダム完成によって新たな一大レジャーエリアが誕生!注目すべき八ッ場ダム観光と今後の展望は?

【今リポ!】今、伝えたい!最前線リポート Vol.005

群馬県吾妻郡長野原町と東吾妻町にまたがり建設された八ッ場ダム(やんばダム)は、洪水から暮らしを守るとともに関東1都5県の水需要を支えることを目的として、利根川の水系・吾妻川の中流部に建設された高さ116mの多目的ダムです。

2020年(令和2年)4月に運用を開始したこのダムによって、この地域に「八ッ場あがつま湖」を中心とした一大観光レジャーゾーンが一気に完成することとなりました。



1. 治水機能に加え、観光の側面が重視された開発計画

ダムができるとそれに伴って新たな景観が生まれますが、八ッ場ダムではこのダムの建設を機に多くの施設が整備されたことによって、近年まれに見る大型のレジャーエリアの誕生を見ることとなりました。

ダムの建設にあたっては長きにわたる様々な課題があったことも事実ですが、新たに生まれたこの湖を中心に最新の遊び場が揃った一大観光地の新登場は観光業界からも大きな注目を集めています。

治水機能はもちろん観光の側面も重視して建設されたこの八ッ場ダム。ダムの堤体上には「やんば見放台」という大型双眼鏡を設置した展望スペースが設けられ、八ッ場ダムや八ッ場大橋を含め、深い緑の中にたたずむ湖の景観を一望することができます。

観光をめぐるムーブメントの中で「ダムマニア」などダムを愛してやまない方々の動きや、橋梁など大型建造物を巡るツアーなど、いわゆる「インフラツーリズム」というカテゴリーも注目されてきています。

こうしたニーズにも応えた施設と取組みを展開することで、「ダムを中心とした観光地創造」を成し遂げたのがこの八ッ場ダムだと言うことができるでしょう。


2. 観光の中心には湖と、温泉郷そのものが移転した川原湯温泉が

八ッ場ダムには観光用のエレベーターも設置されていて、堰堤からダム下に降りて迫力あふれるダム本体を間近で鑑賞できるほか、下流の吾妻渓谷方面へとアクセスすることもできるようになっています。

また美しい緑の湖水を満たす八ッ場あがつま湖の湖面には水陸両用バス「八ッ場にゃがてん号」が運航され、秋からは遊覧船も就航されるほか、周辺にはカヌーやカヤックなどの水上アクティビティが楽しめる環境や、キャンプ場、バーベキュー施設、湖畔公園なども整備され、新たな八ッ場観光の中心地となっています。

そしてもう一つこの開発計画で特筆すべきポイントが、古くから関東を代表する温泉のひとつとして人気を博していた 川原湯温泉が温泉地まるごと移転して生まれ変わったという点にあります。

ダムに沈んだ旧川原湯温泉にあった旅館ホテルから湖周辺へと移転した宿の数々が、今まさに新生・川原湯温泉の魅力を創りあげようとしています。

そのシンボルとなるのが、長野原町にある「王湯会館」です。

男たちが湯をかけ合う伝統行事「湯かけ祭り」の舞台として知られた共同浴場王湯がその古き良き伝統を生かしながら、新たに「王湯会館」としてリニューアルオープン。

この地を訪れる観光客が、より気軽に川原湯温泉を堪能することができるようになりました。

以前の王湯と同じく「源頼朝」発見の湯にちなんで源氏の家紋「笹竜胆」が掲げられている施設では、まばゆい木漏れ日が差す露天風呂から、広大なダム湖を一望することができます。


3. 湖を取り巻くエリアを舞台に、多彩な観光施設が次々と誕生

八ッ場あがつま湖周辺にはその他にも観光マーケットを強く意識した多彩なスポットやレジャー施設の数々が次々と誕生しています。

特に注目したいのが廃線となった鉄道に新たな楽しみを見出した自転車型トロッコ「 A-Gattan(アガッタン)」。

八ッ場ダムの建設に伴って廃止となったJR吾妻線の旧線路の一部区間(約3.3km)を、自転車型トロッコで走ることのできるレジャー体験施設です。レールの継ぎ目から伝わるガッタンゴットンという音や振動を感じつつ、自転車をこぎながら吾妻峡の美しい景色を満喫することができます。

複合レジャー施設「川原湯温泉あそびの基地NOA」は、恵まれた自然環境を生かして、キャンプ、バーベキュー、レンタサイクル、日帰り温泉の他、カヌー、カヤック体験などまで様々なアクティビティが楽しめるレジャー基地。

観光案内所やカフェも併設して、八ッ場ダムエリアに来たら、まず真っ先に立ち寄りたいスポットとして機能しています。

その他にも、日帰り温泉から足湯、直売所に加えてドッグランや遊具もある「道の駅 あがつま峡」、ダム見学の後のお食事やお土産さがしが楽しめる「やんば茶屋」など、ここには挙げきれないほどの多彩な施設が目白押しです。


4. さらに吾妻渓谷の美しさを満喫できるビューポイントも

吾妻川沿い約2.5㎞にわたって続く国指定名勝「吾妻峡」は、関東の耶馬渓とも称えられる美しい渓谷で、ダムエリアの開発によってさらに注目を浴びること間違いなしの景勝地。

特にミツバツツジの咲く4月中旬や新緑時期の5月、紅葉が彩る10月から11月にかけてのベストシーズンには多くの観光客を集めます。

この景観をさらに彩るのが「鹿飛橋」や、八ッ場ダム建設に伴って建設された「猿橋」などの橋梁。

吾妻川の渓谷美を堪能できるスポットとしてだけでなく、吾妻川の美しい景観にしっくりと溶けこむ優美な姿そのものが新たな観光資源ともなっています。

ダム建設時に行われた埋蔵文化財の発掘調査で出土した貴重な遺物を、展示や迫力ある映像によって鑑賞できる「やんば天明泥流ミュージアム」も、注目スポットのひとつ。

往時の人々の暮らしや自然災害の脅威を学び、知的好奇心を満たすことのできる施設です。


5. 2つの町と民間との連携で、輝く未来像を描くために

八ッ場ダム周辺に誕生したこの新たな観光エリアは行政的には東吾妻町と長野原町という2つの町にまたがっており、両町が運営する施設に加えて、旅館やレジャー施設などを始めとする多くの民間企業が参入しているのが大きな特徴です。

ダムの完成と周辺整備が進む中、並行してこの2つの町と民間との連携に向けて協議会の設立など様々な検討が進んでいますが、その活動はまだまだこれからが本番です。

2つの町と民間とが八ッ場ダム観光の未来に向けて一つのグランドデザインを共有していくことができれば、この素晴らしい資源が日本を代表する観光エリアの形成に大きく貢献することは間違いないでしょう。

ダム開発を機に、周辺一帯に新たな一大観光地が誕生した八ッ場ダム。自治体と民間がガッチリとタッグを組んで同じ目標に向かおうとする情熱と仕組みが、この先どのような未来と可能性を導き出していくのか、観光に携わる私たちとしては決して目を離すことはできません。

日本の各地でもこのケースと同じように、インフラをうまく活用して時代に合った観光コンテンツを提供して地域の魅力を開発・波及させるための取り組みが展開されていることと思います。

大きな時代の動きを的確に捉え、そこに新たなニーズとチャンスを見出すことで、ぜひ地域ならではの観光資源に命を吹き込んでいきましょう。

※2021/08/25公開の記事を転載しています


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