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浅読みと深堀り|観光マーケティングプランナーのちょっと視点を変えた連載コラム030

ビッグデータ含め、様々なデータの活用が流行っている。かく言う自分も、データの確認と活用は日常必至の作業となっている。ひと昔前だと、調べものをしに図書館に足蹴く通い、大量の専門書に目を通して、必要なデータをコピーしてそれをいちいち企画書用に作表・・・なんて、重い作業に明け暮れた時代もあった。

今はPCやスマホでググれば、欲しいデータはすぐに手に入る。ナント便利な時代になったのやらと思う今日この頃・・・。

さて、手に入りやすくになった分、今度は膨大なデータが目の前に積み重なる。しかしデータをクロスアップしてまとめ上げればそれもたやすい。要はそのデータをどう活用するかだ。

最初にお話してしまうと、「データを信じると危ない」というコト。

勿論、データに誤りはないだろう。大きな幹はココですよ!とちゃんと教えてくれるワケだから、大変助かる、それの何が悪いのか?問題は、そのデータが「アナタだけのものではない」ことであり、他の人や競合他社も、それを活用して策を練るということになる。

昔、絶頂を誇り全国チェーン化した流通Ⅾ社。膨大な数年分の膨大なレジデータを駆使して売り場のマーケティングに徹底して活かし、売れ筋をしっかり揃えた。流通各社も右に倣えで売場でのマーケティング強化に乗り出した矢先、Ⅾ社が潰れた。

理由はどうあれ、「これが売れ筋ですよ!」という商品が売り場にあふれるとともに、ショッピングの愉しみが消え、客足が大幅に遠のいたのが大きな理由だった。

ならば、データはどう使えばよいのか?

自分としては、自社の立ち位置を確認するための材料と考えるのが優先と考える。たとえば、自社周辺競合社の販売価格を全て調べたとする。その価格にあわせて、自社の販売価格を設定するだろうか?商品や企画にはそれを生みだしたスタッフの英知が宿っている。それを「隣屋が1万円だから、当社も1万円(又は9800円?)」とは言い難い。

データは、あくまでも顧客の購買姿勢の予測材料であり、そこから当社への期待度と、商品開発の方向性を考える「ひとつの視野」と、捉えてみたい。浅く読んで、立ち位置を確認するにとどめるのが得策かと考える。そうすれば、データの集め方や、見方に、無駄もなくなり、判断から決断に至るスピードは格段に早くなる。

さて、方向性を決断したら次は予測に準じたブランドアクションや商品開発になる。早い決断なので、ここで他社を一挙に引き離しにかけたい。一番早い方法は「模倣」のスタイルだ。同業や他業で成功した例を倣い、肉づけして手っ取り早く市場に出す。

しかしここでもうひとつの落とし穴が生じる。ご商売をされている方々なら身をもってご承知かと思うが、「同じ柳の下に二匹目の泥鰌はいない」のと同じように、商売やマーケィングに「成功の方程式」など無いのが現実。それがあれば、この世は苦労しない。

しからば、何があるのか?

そのひとつとして「深堀り」である。穴を掘るときに、掘りたい直径の穴がそのままどんどん深くなって掘られるわけではない。目標とする深さが増すほどに最初に掘る表面の広さが必要になる。

たとえば直径50cmの穴を2m掘りたかったら、最低でも最初に直径1m以上の直径から始めなければ、下に掘り進むことは困難になる。

「深堀り」とは、本来不必要なエリアの情報も一挙に掘ることで、思わぬお宝も手に入るものだ。その思わぬお宝が、別の戦略で役に立つことも実に多い。だから深堀をするときには最初に広めに掘ることが大事で、ここで他社に先んじた時間を消費したいのだ。

もし「成功の方程式」があるなら、それは最初の「深堀りの仕方」と、どれだけ精を込めて「やりつづける」か・・・の度合いではないかと考える。

伝えようとする気持ちが、より強ければ、必ず相手は揺れる。その揺らぎを創り出すために、「浅読み」した予測で早めに見切って、「深堀り」した商品づくりを、どんどんぶつけてみることも一計かと。

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※2022/05/30公開の記事を転載しています


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