今すぐできる! ホテル・旅館の多言語対応について説明します
日本を訪れる外国人観光客の数は年々増えていて、日本政府観光局(JNTO)の発表によると2018年度には初めて3000万人の大台を突破しました。観光先進国の実現を目指す日本政府は、インバウンド観光客が快適に旅行することができるよう様々な環境整備を課題として掲げています。
そうした中で、官公庁が行なった「外国人旅行者に対するアンケート」の調査結果によると、インバウンド観光客の多くが日本滞在中に「言語」と「コミュニケーション」の面で困った経験があると回答していますず。この結果を踏まえ、ホテルや旅館などの宿泊業界ではどのような取り組みを行っていけば良いのでしょうか。
今回は、ホテルや旅館の「多言語対応」について、詳しく解説していきます。
簡単にできる多言語対応
「多言語対応」というと、高額の費用を投じてシステムを導入したり、外国語の話せるスタッフを新たに採用したりということをイメージしがちですが、コストをかけなくても比較的簡単に多言語対応を実践することは可能です。では、具体的にホテルや旅館のどのような部分から多言語対応を進めていけば良いのでしょうか。身近なところから始められる多言語対応について、そのポイントを詳しく見ていきましょう。
おすすめ商品の説明
インバウンド観光客が日本語を読めない場合、商品のパッケージや館内のポップなどからその商品の魅力や価値を知ることは難しいことです。
その土地の特産品や名物、ホテルや旅館で一押ししているグルメやサービスなどについては、写真と文章で解説したものをフロント周辺に表示しておくと親切でしょう。その商品の特徴、おすすめポイント、価格、どこで購入ができるのかなど、ポイントを押さえて多言語化しておけば、外国語に対応できるスタッフがいない場合でも安心です。
よくある質問をまとめたFAQを作成する
チェックアウトの時間、食事の時間、館内設備や部屋の案内、大浴場の入り方など、インバウンド観光客から尋ねられる質問というのはある程度決まっています。こうしたよくある質問をあらかじめFAQ形式で多言語化しておくことで、説明にかかる時間や案内表示のためのコストを削減することが可能です。特に、規模の小さな宿泊施設やスタッフの少ない施設では、有効な多言語化の方法のひとつです。
決済方法などをアイコンによりわかりやすく表示する
クレジットカード決済、QR決済など対応可能な支払い方法や、免税店の表示などは、目立つ場所にアイコンを表示することも効果的です。
アプリやデバイスを活用した多言語対応
ホテルや旅館の規模によっては、思い切って多言語対応のための設備投資を行うことで、結果的に業務の効率化や顧客満足度の向上につながる場合もあります。では、具体的にどのような設備を導入して多言語対応を進めていくことができるのでしょうか。ホテルや旅館の多言語対応におすすめの方法を詳しくご紹介していきます。
客室タブレットの導入
ホテルや旅館の客室にタブレット端末を導入することで、館内施設案内や催し物、レストラン情報、周辺情報、観光情報といった、インバウンド観光客に必要なさまざまな情報を多言語でリアルタイムに伝えることができます。サービスによってはメッセージ送信や内線通話、貸出品のオーダーや清掃業務に対応しているものも多く、業務効率化も可能です。
音声翻訳機や翻訳アプリ
モバイル音声翻訳機や、スマートフォンなどで使用できるオンライン翻訳アプリを利用することで、外国語がわからなくても、意思の疎通が可能になります。音声入力が可能なものが多く、面倒な操作なしに、翻訳を行うことができます。日本語から外国語、外国語から日本語へ、双方の翻訳が可能なため、ホテルのスタッフや外国人観光客にとって、便利なツールと言えるでしょう。
対応すべき言語
ホテルや旅館がインバウンド観光客のための多言語対応を行う上で大切なのが、どの言語を扱うのかということです。日本政府観光局(JNTO)の発表によると2018年のインバウンド観光客は中国が約838万人と圧倒的に多く、次いで韓国の754万人、台湾の475万人、香港220万人、アメリカ157万人となっていて、中国語、韓国語、英語の3言語に対応したほうがよい、ということがわかります。
もちろん、それ以外の国からもインバウンド観光客は訪れるため、施設によっては対応が必要になるケースもあるでしょう。どの言語に対応するかは、過去の宿泊データなどをもとに検討することが大切です。なお、多言語対応の際には、世界の共通語である英語を一番に表記し、次に中国語、韓国語の順で表記することが多いようです。
中国語
中国語には中国本土やシンガポールで使われている「簡体字」と、香港、台湾、マカオなどでつかわれている「繁体字」の2種類があるため、多言語対応する際には両方で表示するのが理想的です。また、どちらか一方にする場合には宿泊データなどを分析した上で、客層に応じて選択しましょう。
韓国語
韓国からのインバウンド観光客は中国に次いで多いため、韓国語での多言語対応も必要です。韓国語というとハングルと思い浮かべる方も多いかもしれませんが、韓国語イコールハングルというわけではありません。ハングルは音を文字にして表す表音文字で、日本語でいう「ひらがな」や「カタカナ」のようなものです。ハングルの文字数は24文字と少なめなので、日本語話者でも比較的とっつきやすい言語だと思います。
英語
世界共通語である英語も対応が必要です。英語は普段接しなれていることもあり、比較的容易に多言語表記が可能でしょう。注意するとすれば、ですが、イギリス英語とアメリカ英語があることですります。文法だけでなく、単語の意味が異なる場合もあるため、若干の注意が必要です。
多言語対応というのはさまざまな方法で進めていくことができます。立地条件や規模などを参考にしたうえで対応の必要な言語を適切に判断し、導入できる範囲から対応していきましょう。
※2019/11/04公開の記事を転載しています
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