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6時間の戦略。|観光マーケティングプランナーのちょっと視点を変えた連載コラム008

前回のリポートで、「個人旅行の伸長率は、この新型コロナ騒動によって急速にはやまる。」という見解をお話ししました。とある調査では、2名以下の同行者層(ひとり旅+カップル+夫婦)は調査前年度と比べ、微増という結果となりました。

また2名以上の旅行客については半数以下まで減り、この新型コロナ騒ぎの大波により来年のデータはさらに顕著な数値になることが予想されます。

それでは、グループ&団体旅行と個人旅行のホテル滞在時間の中で、最も異なる点はどこか?・・・ということで、双方のお客さまの、チェックインからチェックアウトまでの館内滞在時の1日の行動時間を、グラフにしてみたのが、「個人客/館内タイムスケジュール」(図①)と、「団体客/館内タイムスケジュール」(図②)です。

図①

図②

*注1:個人と団体はチェックインの時間をややズラしています
*注2:入浴時間は女性を想定してに予測しています
*注3:団体客夕食後にパブリック利用を加味しています
*注4:各時間はあくまで私見にて、ご参考として参照ください

さて、この双方のグラフを比較して、最も異なる部分が「客室の滞在時間」になります。

●個人客の客室滞在時間/13時間15分(睡眠を除くと、6時間)
●団体客の客室滞在時間/09時間45分(睡眠を除くと、3時間)

予想通り、個人のお客さまと、団体グループのお客さまが、起きている間に客室に居る時間に、3時間もの差があることになります。

これをお読みになっているホテル旅館関係者方々の、自館のお部屋で、はたして「6時間過ごして楽しいか?」と聞かれたら如何でしょうか?

客室のお風呂は単なるユニットバス。洗面台は普通の既製品。空調は旧式の全館連動型。畳は日焼と焦げのアクセント付。

いつもお馴染みの掛軸。自宅より小さいTV。照明が暗いトイレ。ベニヤ素肌のクローゼット内貼。傷だらけの床の間。頁のビニルが曇ったままのインフォメーション。

埃だらけのライトルーバー・・・団体客時代には定石のしつらいも、実際6時間も過ごせば、いやでも目についてしまうものです。

「個人化」に対応する手段は、幾枝もあります。集客企画、WEB戦略の整理、館内イベント、お料理のオペレーション、お帰り後のフォロー・・・しかし、いち早くスタートしなければならないひとつが、「客室での寛ぎ時間」を「新しい生活様式」に即したものに改革することではないでしょうか?客室での滞在時間が、そのままお宿の総合評価にダイレクトに影響する時代が現実のものになってきている時だと思います。

●何度でも二人で入りたくなるお部屋のお風呂
●自分がキレイになった気がする洗面台
●静かで快適で、ウィルス対策も考慮した空調設備
●赤ちゃんがハイハイしても安心で美しい畳やフローリング
●季節ごとに飾られる床の間のアート
●ビッグインチTVモニターで観るWOWOW
●ひさしぶりにゆっくりと睡眠がとれた寝具
●季節の周辺散策案内や外店舗のクーポン付インフォメーション

・・・これらいずれも、人件費には影響せずにサービスの純度を上げることができるおもてなしアップの一例です。(あくまで一例です)

「お二人さま」が、ゆっくりとじっくりと湯宿の一日を体感して、「ああ、ここはよいお宿だあ!」と実感出来るお部屋をご用意することからはじめることも、とても価値のある施策であり、ひいてはそれが貴館のブランドイメージにダイレクトに通じる戦略になると考えますが、如何でしょうか?

あなたのお宿は「お客様の6時間」を、どうプロデュースしますか?

※2020/07/31公開の記事を転載しています


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