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JSTS-Dとは?「サスティナブルな観光地」の魅力を国際的に訴求できるこの指標に注目してみましょう

社会が高度に先進化するにつれて、将来にわたって維持し続けられる社会と環境を新たに形づくっていこうという気運が、世界中で巻き起こっています。

こうしたムーブメントを代表する取り組みのひとつが、自治体や地域を始め、数多くの企業がいち早く取り組み始めているSDGsです。そんな中で、新たに地域観光を対象とした「日本版持続可能な観光ガイドライン(Japan Sustainable Tourism Standard for Destination:JSTS-D)」が2020年に観光庁から発表されていることはご存知でしょうか。

これまでのところまださほど認知が広まってはいませんが、リゾLABでは今回、これからの地域づくり・観光地づくりに必須となるこの「JSTS-D」についてご紹介させていただきます。


★記事のポイント★
「JSTS-D」は、国際基準に基づいた、持続可能な観光地づくりのためのガイドライン。まだあまり広く知られてはいませんが、これから注目必須となる地域づくりの指標です。ぜひいち早く理解・検討しましょう。



1.日本版 持続可能な観光ガイドライン 「JSTS-D」とは? 

「日本版 持続可能な観光ガイドライン」(以下「JSTS-D」)とは、グローバル・サステナブル・ツーリズム協議会(GSTC)が管理する国際基準を基に開発された持続可能な観光を推進するためのガイドラインです。

近年の急速な外国人観光客の増大と、それに伴って一部観光地では混雑やマナー違反などいわゆるオーバーツーリズムが問題視されていることを受け、こうした諸問題を未然に防止しつつ、将来にわたって持続可能な観光の発展のモデルを確立する必要性がクローズアップされてきました。

加えて観光立国日本としても、2030年に6,000万人という外国人観光客の訪日目標数を達成すると同時に、地域社会の経済振興や旅行者・コミュニティ・文化資源・環境に対する利益の最大化、および悪影響の最小化を実現できる適切な観光地経営の手法を確立し、「持続可能な観光先進国」を実現していくことはもはや必須の課題となっています。

しかしその一方で、自治体やDMOの地域振興計画においては、持続可能な観光に向けた方策が定まらず、具体的な施策を模索している地域が多いのも事実です。

そこで観光庁として、持続可能な観光地になるためにはどのようなマネジメントが必要なのかを世界基準に即して示そうと生まれたのがこの「JSTS-D」です。

▲「JSTS-D」ロゴマーク(出典:観光庁

● 国際基準に準じつつ、日本の地域性や観光特性にも配慮した、より現実的な指標

持続可能な観光の推進に資するべく、各地方自治体や観光地域づくり法人(DMO)等が多面的な現状把握の結果に基づき、持続可能な観光地マネジメントを行うための観光指標である「JSTS-D」は、観光地向けの持続可能な観光の国際基準「GSTC−D(Global Sustainable Tourism Criteria for Destinations)」に準拠した指標となっています。

この国際指標GSTC−Dは「持続可能なマネジメント」「社会経済のサステナビリティ」「文化的サステナビリティ」「環境のサステナビリティ」の4つの分野から構成されていますが、先進国から後進国まで多くの国に活用できるよう開発された指標であるため、国や地域によってはその国の制度や実情にマッチしない項目も多々含まれています。

「JSTS-D」ではこうした状況に配慮し、国際基準に準じながらも、各項目を通じて日本独自の特性がきちんと反映された、より現実的かつ取り組みやすい指標となっています。


2.今、「JSTS-D」に取り組むべき7つの理由

日本の観光地が今こそ「JSTS-D」に取り組むべき、その具体的な理由は主に以下の7点です。
現状の課題や悩みに当てはまるものがあれば、ぜひあなたの地域でも導入を検討してみてはいかがでしょうか。

①インバウンドの旅行客に、旅行先として選ばれる可能性が高まる
Booking.comによるアンケートでは、世界の86%の人がサスティナブルツーリズムを希望しているとの結果も出ており、10年後にはサスティナブルツーリズムに取り組まない観光地は淘汰されるとも言われています。特に欧米豪などの富裕層にこの傾向が強く、これらのターゲットに向けた国際競争力を確保するためにも、国際指標への取り組みは喫緊の課題となっています。

②世界基準に即した「持続可能な観光地」であることを訴求できる
国際公認を得る指標に取り組むことは、国連世界観光機関やグローバルサステナブルツーリズム協議会などの提唱する国際基準に則していることを意味します。あなたの地域の取り組みが、「国際的に評価されたもの」であることを訴求することが可能です。

③日本の現状を踏まえつつも、国際公認が得られる唯一の指標
「JSTS-D」は、日本の文化・風習、現状等に即して開発された唯一の国際基準に基づく指標です。既存の他の指標のように日本の現状にそぐわない内容を求められることがないため、無理なく取り組むことができます。

④オーバーツーリズムの他、自然環境・文化財保護などの課題にも広く対応
オーバーツーリズムへの対策を契機として開発されたJSTD-Sですが、感染症対策や災害時の危機管理、誘客促進のために取り組むべき事項、雇用面や資源・文化の保護など、今後の地域と観光のあり方について幅広い事項をカバーしているため、どんな地域でも取り組むことができます。

⑤一連の取り組みを通じて、「SDGs」の各目標も達成できる
「JSTS-D」の各項目は、それぞれSDGsの各目標と明確に結びついています。現状ではまだ「JSTD-S」のニーズが低い地域においても、SDGs達成に向けた取り組み指標として活用することができます。

⑥日本版指標のみの特長として、取り組み支援ツールが充実
「JSTS-D」は、それぞれ各項目に取り組むための考え方や、参考法令・各種統計などの参考資料、先行事例など、他の国際指標には存在しない支援ツールが充実しているため、既存の指標よりも格段に取り組みやすくなっています。

⑦取り組みへのハードルは決して高くない
国際的な指標ではあるものの、具体項目の中には通常業務で行っている事項が多く、新たにゼロから取り組むべきものばかりではないため、取り組みへのハードルが高くないのも大きな特徴です。


3.JSTS-Dが地域にもたらす、大きな効果

「JSTS-D」は、国際指標に準じていることのアピールはもちろん、その地域がこれから目指すべき観光地像を確立していくための活動にも大きく寄与します。

そのメリットは主に以下の3つ。「JSTS-D」のもたらすこれらの効果にいち早く注目し、この指標に準じた取り組みを、R2~4年度に観光庁のモデル地域やモデル事業としてスタートさせている地域がすでに日本各地に数多く存在しています。
 
<JSTS-Dの、3つの効果>

①自己分析ツールとして:
地域に何が足りないか、何を行うべきかが明確に
・地域の強み、課題、成長機会を客観的・定量的に把握することができます。
・地域がめざす姿、取るべき施策が明確化されます。
・持続可能な観光の実現に向けた継続的なモニタリングの実践方法を学ぶ機会になります。

②コミュニケーションツールとして:
持続可能な地域・観光地づくりに向けて、地域一体で取り組む契機に
・行政・観光関係者・住民間における、持続可能な観光に関する理解の促進、合意形成の契機に。
・持続可能な観光の推進を担う人材の育成や研修の機会に。

③プロモーションツールとして:
「持続可能な観光地」としてのブランド化、国際競争力のさらなる向上
・持続可能な観光に積極的に取り組む地域であること自体が、優良な訪日客を呼び込むためのプロモーションツールに。
・国際的な認証機関による評価・報奨制度の活用によるブランド力の向上が図れます。

以前からは想像もつかないほどに、海外からの来訪客が急増している観光立国・日本。

インバウンドの隆盛は観光業界にとってもちろん喜ぶべきことではありますが、その一方で日本全国の観光地が否応なく「国際的に選ばれる観光地かどうか?」という選択肢にさらされ、世界はもとより国内他地域との競合もますます加速していくことは想像に難くありません。

こうした状況の中で、あなたの地域は、将来的に「取り残された観光地」とならないためにどんな準備を行っていますでしょうか。今回ご紹介した「JSTS-D」はいわば、50年後・100年後にも「自分たちが望む町であり続ける」ための有用な指標であり、また具体的な方法論でもあります。

この機会に「わがまちはこんなまち、こんな取り組みをしているまちだ」という地域のアイデンティティを見つめ直すとともに、改めて明文化することで、世界に向けての強いメッセージを発信してみてはいかがでしょうか。

※2022/09/08公開の記事を転載しています


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